こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
今日は昨年10月に社会的養護・児童養護の分野で欧州視察に出向いた際、お話を伺ったロジャース卿が来日されているとのことで、ヒューマン・ライツ・ウォッチさまのオフィスで勉強会に参加をさせていただくことができました。
参考:「障害児への偏見」と無関係ではない、児童養護における施設偏重主義 (2015/10/15)
http://otokitashun.com/blog/daily/9119/
欧州視察記事はこちら↓
http://otokitashun.com/tag/2015%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E8%A6%96%E5%AF%9F%E3%83%BB%E7%A7%8B/
社会的養護・児童養護関連の過去記事はこちらから↓
http://otokitashun.com/tag/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E9%A4%8A%E8%AD%B7/
欧州視察時は記事の通り、「障害児と施設」について紹介させていただきましたので、今回は社会的養護において脱施設を達成した英国が、その過程でどのように抵抗を乗り越えて改革を成し遂げてきたのかにフォーカスを当てたいと思います。
里親委託・特別養子縁組の促進を訴えていると、やはり多くの児童養護施設関係者から強い異論が出されます。
この業界ではすっかり私の立ち入りが知れ渡ってしまっているので、視察の際などに施設支援をしている方と会うと、強い目でジロリと睨まれることもしばしば…。
※私は施設のすべてが悪とか、今すぐに全廃できると主張しているわけではありません。念のため。
そしてこうした脱施設化への抵抗は、すでにほぼ乳児院の全廃に成功し、児童養護施設も限定的となっている英国でも変わらなかったそうです。
ロジャース卿の講義中、Twitter実況してましたので、ここからはそちらを引用していきます。
イギリスでは精神科医John Bowlbyが「母親からの愛情がないと、発育に深刻なダメージがある。特に幼いほど影響が大きい」という研究結果を発表し、大きな反響があった。やがて、子どもの発育に施設は望ましくないという考え方が広まっていった。#児童養護
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) 2016年11月28日
ところが当時、英国で児童養護を牽引していた組織「バーナードス」はこの考え方を受け入れられなかった。それまで数百の乳児院・児童養護施設をつくって児童養護を担っていたし、職員研修もそのために行い、「良い施設を運営している」と評判も良かったからだ。 #児童養護
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) 2016年11月28日
ではどうやって、廃止される乳児院や養護施設側の理解を得たか。自分たち(バーナードス)の内部にも抵抗があった。それまで集めた寄付金の多くを施設の近代化や、スタッフ育成などに使っていた。それらをすべて捨てなければいけなかった。寄付を集めた以上、対外的な説明も困難だった。 #児童養護
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) 2016年11月28日
勤務年数が多いベテランのスタッフ(独身女性が多かった)ほど、脱施設を心配する声が大きかった。彼女たちの多くは施設に住み、そこが居場所になっていた。雇用を心配する声もあった。若いスタッフにはそれほど抵抗はなかったが…。 #児童養護
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) 2016年11月28日
やはり、素晴らしい施設を運営しているという自負があればあるほど、それを転換することには抵抗が強くなります。
そしてベテランスタッフほど、これまでの自分のやり方や生き方に誇りを持っているでしょうし、彼らに納得してもらうことは容易ではありません。
ロジャース卿はだからこそ、彼らの説得が一つの鍵だと言います。
だからこそきめ細かなケアと計画が必要だった。施設は住み込みの施設から、子どもたちがいつでも来れる「センター」へと切り替えていった。センターでは実親や里親への研修なども行った。 #児童養護
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) 2016年11月28日
まとめると、脱施設には綿密な計画が必要。本当に子どもが実家族・里親の元に行った時に、いま現在施設にあるこれらの3つの資源(資金・専門人材・物的資源)を振り分けていかなければならない。これらの施設の資源は目的を限定して振り分けることが重要になる。 #児童養護
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) 2016年11月28日
「脱施設」というのは決して、悪しき施設を撲滅していくということではありません。
児童養護施設には、「資金・専門人材・物的資源」という3つの素晴らしいリソースがあります。
これから施設は子どもを恒常的に預かる場所ではなく、これらのリソースを活用して実家庭統合・里親支援のためのセンター化するなど、いわゆる「発展的解消」をしていくのだというビジョンを示すことが重要になります。
キャリアチェンジのための綿密な計画も必要になる。スタッフの中には経験を活かして、別のケアセンターに勤める人もいた。まったく別の職種に就く人には、個別のキャリア相談も行った。ただ少なからず、怒りを抱えたまま組織を去った人もいた… #児童養護
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) 2016年11月28日
そして矛盾するようですが最後に、ロジャース卿が
「それでも最終的には、すべての人を納得させることは難しい」
「最後は『これが子どもの最善になるのだ!』という強い信念のもと、決断するしかない」
という旨をおっしゃっていたこともまた、非常に印象的でした。
「脱施設=発展的解消」というビジョンでできるだけ多くの専門人材の納得を得ながら、最後はタイミングを見て一気に政治的な決断を行う。
こうしたイギリスでの前例は、これからの日本の社会的養護システムの転換に向けて、大いに参考となるものだと改めて痛感しました。
今回も貴重な機会をいただいたルーモスのロジャース卿と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの皆さま、本当にありがとうございました!
Twitter中継の内容はこれだけではありませんので、詳細はぜひTwitterアカウントでもご確認くださいませ。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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