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「日本維新の会」を待つワースト・シナリオ -未来への投票行動を考える-

政治コラム

橋下徹氏が率いる「大阪維新の会」が正式に国政進出を宣言し、
文字通り政界には激震が走っております。

衆院定数を半減 「維新八策」最終案の全文
http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC3103B_R30C12A8000000/

報道では飛ぶ鳥を落とす勢い、イケイケ(死語)の彼らですが、
果たして死角はないのでしょうか?なんか加熱報道に食傷気味の僕は
敢えてここで冷水でもぶっかけてみたいと思います。

「この国の統治機構の在り方を変えるため、政権奪取を目指す!」

そう威勢よくうたって船出した『日本維新の会』。
政権奪取、具体的には次期衆院選での議席数過半数を目指し、
350人以上の候補者を擁立するそうな。

そんな彼らを待ち受けるワースト・シナリオとして、
それも結構な確率でありそうなのが、単なる少数野党になるケースです。
もっと言うと、自民+公明が過半数の議席を取る場合です。

順を追って説明しましょう。

まず、維新の会の最大の弱点は何か。
それは彼らの党綱領とも言える「維新八策」が
他のどの政党とも連携できないほど過激なものである点です。

「議員数を半分にすると言うと、みんな波が引くように逃げていく」

橋下代表自らがそう自嘲気味に語るように、
彼らの「統治機構を変える」という政策は既存政党の目指すものと
あまりにもかけ離れており、それだけ妥協することが難しい代物です。

戦後一貫して「大きな政府(福祉国家、中央集権)」を目指してきた
既存政党たちとは180°違う価値観を提言したわけですから、
それには相応のリスクが伴います。

民主主義における政治というものは、一つの価値観が他を
圧倒するということは滅多にありませんし、また望ましくもありません。

違う考えを持った政党同士が意見をぶつけあい、調整し、折り合っていく。
ここに政治のダイナミズムがあるとも言えます。

ところがここに、受け入れに充分な時間もなく
まったく異なる価値観とそれなりの勢力を持つ政党が誕生したらどうなるか?

他の政党はこれと歩み寄るよりも
徹底的に叩き潰す、無視することを選ぶのが定石でしょう。

以上を踏まえて、最悪のケースを見てみます。

過去最大の新党ブームと言われた「日本新党」が旋風を巻き起こした
1993年の衆議院選挙で、彼らの獲得議席は35議席。
新党のデビュー戦では、これがレコードとなっています。

今回「日本維新の会」がこの記録を上回り50議席近くを獲得したとして、
それでもまだ「自民+公明」が過半数を取る可能性はあります。

すると、「日本維新の会」はキャスティング・ボード(※)を握れず
単なる「少数野党(one of them)」として埋没。

※キャスティング・ボード
同等の勢力が拮抗している状態で、第三の少数勢力が影響を及ぼすこと。
最近では公明党がその代名詞である(?)。

自前の法案を提出してみたり、政府案に反対してみたりするも、
過半数を抑える与党の前では大きな抵抗にならず半ば無視。

そうこうするうちに人気は「賞味期限切れ」を迎え、
大阪府政の運営と引換にあらゆる局面で妥協を迫られ、
何もできないまま有権者から見放されて空中分解…。

これが、僕が考える「最もありえそう」な
日本維新の会がむかえるワースト・シナリオです。

では逆に、ベスト・シナリオはどうでしょう?

もちろん、本当に過半数の議席を得て政権奪取!
…と言いたいところですが、以前にも書いた理由から
それはほとんど不可能だと僕は睨んでいます。

次善のベター・ケースとしては、
『日本維新の会』や、唯一彼らが提携可能な『みんなの党』らの
第3勢力が大きく議席を伸ばして、単独過半数の与党出現を防ぐ場合です。

これで俄然、国政運営は熱を帯びてきます。

政権与党はそれぞれの法案提出するのに
第二極、第三極との交渉・折衷が重要になりますから、
「維新八策」の内容が少なからず政策形成に影響を与えることになるでしょう。

またこのケースでは自民・公明・民主が野合(※)して「大連立」することも
考えられますが、そうなったらそうなったで維新の会らが第二極に浮上。
次期総選挙では日本憲政史上初の

「大きな政府」VS「小さな政府」

の対立軸が争点となる選挙戦が展開され、
米国や英国のような真の二大政党制が確立されるかもしれません。
(まあ、日本が2020年くらいまで破綻しないことが前提ですけど)

※野合(やごう)
共通するものもないばらばらの集団が、まとまりなく集まること。
類義語に「民主党」、「国民の生活が第一」などがある(半分ウソ)。

…いずれにせよ、このタイミングで「国政進出」という
大博打に出た維新の会は、おそらく今回は与党になるであろう自民・公明に
イニシアチブを握られる(過半数を取られる)か否かが生命線となるように思えます。

少し話がぶっ飛んでいるので想像しにくかったでしょうか(ゴメンナサイ)。
ではこうした中で、我々有権者が取るべき行動はなんでしょう?

もしあなたが若く、今の日本の政治を憂い、

「このままじゃダメだ!」「何かを変えたい!」

と思っているとすれば、
「民主がダメだったからまた自民」という投票行動は
最悪のケースを招くと考えて良いでしょう。

昨今の長老政治の跋扈や郵政民営化の後退などを見るに、
自民党はかつての歴史を反省するどころか反動の一途を辿っており、
これまでの政治の延長、既得権益が緩やかに維持されていくことは間違いありません。

もっとも、それは悪いことばかりではないかもしれません。

いくらこのままでは日本がダメだと言っても、
仮に今回維新の会がぶちあげた「維新八策」の社会が実現して、
居心地の良い人ばかりとは限らないからです。

彼らの理念の中で多様される

「自立」
「責任」

という強い言葉たちは、
我々国民一人ひとりに大きな負担を強いることになります。

これまでのように「誰か偉い人」に任せていれば、
それなりに平等な社会で生きていけることもなくなるでしょう。

そしておそらく待っているのは、いま以上の「格差社会」です。
(もっともそれは、「努力した人と、しなかった人の差」になるはずなのだけど。)

それを、

「これぞ自由で平等な社会!」と取るか、
「そんな熾烈な競争社会…」と捉えるか。。

次の選挙の投票行動は、そんな価値観で決まってくるのかもしれませんね。

ちなみに。

「自立」「(自己)責任」というワードを聞くと
小泉純一郎氏を思い出される方もいらっしゃると思います。
そうした価値観の権化とも取られる彼ですが、彼がもともと使っていたのは

「自律(自分を律する)」

という言葉の方でした。

自立、自立と言われるよりも、
こちらの方がこれからの日本のあるべき姿として
僕にはしっくりきたりするんですけどね。

それでは、また次回!

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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