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平成27年9月30日 平成27年第3回定例会一般質問内容

本会議, 議会活動

〇十一番(おときた駿君) 
 初めに、二〇二〇年東京五輪に関連して、知事にお伺いいたします。
 パラリンピック・オリンピックは本来、都市の祭典です。しかしながら、さまざまな問題が噴出する中、国や五輪組織委員会が中心となった意思決定が行われ、東京都が完全に蚊帳の外に置かれているかのように見える現状に、多くの都民が不安を感じています。
 新国立競技場を取り巻く問題については、舌鋒鋭くその不手際を糾弾し、情報公開の重要性を指摘した知事の姿勢は、広く都民の支持を集めるものでありましたし、SNS等を通じた知事の素早い情報発信には、今後も強く期待をするところです。
 しかし、国立施設と異なり、続くエンブレムにかかわる諸問題については、東京都も無関係ではいられません。
 知事は、現代ビジネスにおける連載の中で、ロゴの決定権は東京都ではなく、IOCと組織委員会にあると明言されましたが、組織委員会の理事には、東京都副知事もしっかりと名を連ねています。東京都が全く意思決定の外にいるかのような発言に、都民が疑問を持つのは当然です。
 くしくも知事自身が新国立競技場問題で情報公開の不備をご指摘されたように、エンブレムは、その選考過程、使用中止に至るプロセス、意思決定について、その不透明さに激しい批判の声が続出しています。
 また、さきの問題で知事が文科省の責任に言及したとおり、問題が起きれば、しかるべき立場の者が責任をとり組織体制を刷新することは、民間の常識からすれば当然であります。
 組織委員会は、当初、エンブレム使用中止の記者会見の中で、この責任の所在を不明確にしたため、これに対して多くの都民が不満と不信を抱えています。
 そこで、組織委員会にも理事を出す東京都の知事として、今回のエンブレム問題の責任の所在がどこにあると考えるかをお聞かせください。
 そして、機能不全をあらわにし、不十分な情報公開体制をしく組織委員会に対して、東京都が、今こそ都市の祭典のホストとして主導権を取り戻すべきではないでしょうか。
 先立つ新国立競技場問題の解決に当たっては、一義的には国主導となる事案の中で、知事の強い貢献により、国と都による具体的な財源検討ワーキングチームが発足されました。
 一連のエンブレム問題に鑑み、今後に組織委員会との間で発生し得る諸問題についても、東京都主導により同様の組織体制をしく努力をすべきと考えますが、東京都の今後の対応をお聞かせください。
 次に、東京都社会的養護施策推進計画についてお伺いいたします。
 家庭で適切な養育を受けられない子供を公的責任において養育する社会的養護において、我が国並びに東京都の施策は施設偏重の傾向が顕著であり、里親委託や特別養子縁組への取り組みが極めて鈍いことは、これまでも多くの有識者、議員によって指摘をされてきました。
 さらに、我が国では、その里親委託や養子縁組の不足等により、子供の家庭を得る権利が十分に担保されていないことについて、国際連合の子どもの権利委員会から強く勧告を受けていることは見逃せない重大な事実です。
 こうした流れの中、厚労省は、脱施設化を目指し、平成四十一年までに家庭養護、すなわち里親委託率をおおむね三分の一とする政策目標を掲げております。
 にもかかわらず、東京都は、ことし四月に発表された東京都社会的養護施策推進計画において、里親委託等の家庭養護と、小規模施設を含む家庭的養護の区別を設けず、合算でおおむね六割を目指すとの方針を発表しました。これは明確に、家庭養護の促進を目指す国の方針からは逸脱します。
 そもそも、家庭養護と家庭的養護は大きく異なる概念で、施設養護の延長線にあり、グループホームを指す家庭的養護では、主たる養育者がかわるために、児童たちは十分な人間関係を育むことができず、愛着障害を引き起こすリスクがあります。
 この重大な示唆を踏まえた国の方針を、技術的助言とのけて設定した目標には大きな疑問があり、これでは、東京都は、家庭養護、すなわち里親委託に消極的ともとられかねません。
 まず、このような方針を採用した理由を伺います。
 そして、厚労省の数値はあくまで参考にとどめるとしても、家庭養護、すなわち里親委託単独での目標設定をすることは極めて重要です。民間企業でも、またあらゆる組織でも、目標を立てる際に数値を設定することは当然といえます。
 この問題に関しては、舛添知事自身から、さきの予算特別委員会で私の質問に対して、里親委託を優先して検討するとの答弁をいただいております。その意思をしっかりと示す意味でも、家庭養護単独の目標設定を定めるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 関連して、里親委託促進と要保護児童の一時保護所について簡潔にお伺いいたします。
 里親委託の進まぬ現状において、里親と要保護児童のマッチングにうまくいかなかったケース、いわゆる里親不調の原因調査は必要不可欠です。
 現在、児童相談所も東京都も、里親不調の原因や理由、背景について統計をとっておりませんが、改善につなげるためにも、早急にこのデータ収集を開始するべきと考えますが、見解を伺います。
 また、児童虐待などのケースの急増に伴い、児童を一時的に保護する一時保護所は定員を上回る過密状態が続いており、一時保護所の飽和状態とスタッフの不足は、子供たちに悪影響を及ぼすおそれも指摘されています。
 一時保護所の現状について、第三者機関による評価が実施される見込みであることは高く評価できますが、児童虐待などの急増件数に十分対応するために、一時保護所にはさらなる財源、人的資源を充てるべきと考えますが、今後の対応をお伺いいたします。
 最後に、都の障害者政策についてお伺いいたします。
 知事は初日の所信表明にて、パラリンピック開催都市として、心のバリアフリーを推進し、情報面でも、点字や音声、多言語での対応など、環境整備を進めていくと述べておられました。
 まさにその、障害者とのコミュニケーションについて、今、注目をされているのが、手話言語条例の制定です。
 手話は言語であるということを、まだまだ多くの人は知りませんが、手話は日本語と異なる文法、体系を持つ無声言語であることは、さまざまな学術的研究によって証明されつつあります。
 権利意識の高まりとも相まって二〇一一年に制定された改正障害者基本法の中では、ついに、我が国の歴史上初めて、手話を言語として位置づける文言も記載されました。
 こうした流れの中、地方自治体でも手話言語条例を制定し、手話に関する普及啓発、権利擁護を進める動きが見られ、都道府県では鳥取県と神奈川県、群馬県が既に手話言語条例を制定し、二桁を数える基礎自治体でも同様の動きが見られます。
 特に注目すべきは兵庫県明石市の取り組みで、通称手話言語・障害者コミュニケーション条例と呼ばれる条例の中では、手話だけにとどまらず、要約筆記、点字、音訳などの普及促進も明記された上、知的、発達障害者とのコミュニケーションについても言及した内容は、非常に先進的なものと高く評価をされています。
 かつての東京都は、教育特区申請により、都内に日本で初めて日本語と手話のバイリンガル教育を行うろう教育学校を設立した、障害者コミュニケーション、特に手話言語の認知において最も先進的な自治体でした。
 パラリンピックを五年後に控えた今、国の動きを注視するだけでなく、東京都もみずから条例制定に動き、手話などの障害者コミュニケーション手段の普及啓発、促進に努めるべきです。
 条例化の検討に先立ち、東京都内にいる聴覚障害者の方々は、それぞれどの方法を主たるコミュニケーション手段としているか、特に手話を言語として使用されている方がどれだけいるかを把握することが欠かせません。
 他の自治体の条例とその取り組み内容の調査研究並びに手話等のコミュニケーション手段の現状について、数値に基づく実態調査を速やかに行うべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、来年四月には障害者差別解消法が施行され、障害者の方々へ行う合理的配慮についての適切な対応が懸念されているところです。
 法律の施行まで半年を切った今、東京都の対応準備の進捗がどのような状態になっているかをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
〔知事舛添要一君登壇〕

〇知事(舛添要一君) おときた駿議員の一般質問にお答えいたします。
 エンブレム問題の責任の所在についてでございますが、一昨日、組織委員会は、旧エンブレム策定にかかわる反省点につきまして詳細に報告をいたしました。
 その中で、エンブレムの基本的コンセプトについて議論不足のまま閉鎖的な選定に入ったことや、組織内において十分なチェック機能が働かなかったことなどを挙げてございます。
 こうした反省点を踏まえ、業務運営上の責任を明らかにしており、組織委員会として適切に判断し、対応したものと理解をしております。
 そのほかの質問につきましては、関係局長がお答えをいたします。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長中嶋正宏君登壇〕

〇オリンピック・パラリンピック準備局長(中嶋正宏君) 組織委員会に対する都の主体性についてでありますが、都と組織委員会は、それぞれの役割のもとに協力しながら、大会の成功を目指すパートナーでございます。
 都は、組織委員会の行う大会準備及び運営を開催都市として支援するとともに、大会後にレガシーを残す役割を担っており、そうした視点から、会場計画の見直し等を主導してまいりました。
 また、アクセシビリティ協議会や輸送連絡調整会議、東京都ボランティア活動推進協議会などの各種会議体におきまして、都民生活への影響や大会後の東京を見据え、主体的かつ精力的に検討、調整を行っております。
 今後とも、組織委員会と緊密に連携を図りつつ、開催都市として、さまざまな場面において大会準備を牽引してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

〇福祉保健局長(梶原洋君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、家庭的養護の目標設定の考え方についてでありますが、都はこれまで、社会的養護のもとにある子供が、できる限り家庭的な環境で養育されるよう、養育家庭、ファミリーホーム、グループホームなどの家庭的養護を推進してまいりました。
 国は、平成二十四年の通知において、家庭養護と家庭的養護を区分して目標を示しましたが、どのような子供がそれぞれの対象となるかは明らかにしておりません。
 都の社会的養護施策推進計画では、子供の状況に合わせた養育の場という観点から目標を定めており、情緒的問題や健康上の問題など課題を複数抱える約四割の子供には、施設における専門的ケアが必要と判断をいたしました。
 それ以外の子供につきましては、一人一人の状況に合わせて適切な措置委託先を判断することとし、家庭的養護全体で六割とする目標を設定したものでございます。
 次に、家庭養護の目標設定についてでありますが、要保護児童の措置については、児童の福祉を第一に考え、児童の心身の発達状況や保護者の家庭引き取りの可能性など、児童一人一人の状況を総合的に勘案し、決定しております。
 措置委託先の決定に当たっては、まず養育家庭への委託を検討しておりますが、子供の成長には、先ほど申し上げたように、一人一人の子供の状況に合わせ、より適切な養育環境を提供することが重要でございます。
 現在、学識経験者や事業者等から成る児童福祉審議会の専門部会で、今後のあり方も含め、家庭的養護を進める具体的方策をご議論いただいており、今後、その議論も踏まえながら支援策を検討し、養育家庭を初めとした家庭的養護を推進してまいります。
 次に、養育家庭における不調原因等の統計についてでありますが、養育家庭からの措置解除の理由は、生活環境の変化や養育負担感の増加、里親の健康問題など、さまざまな要因が複合的に重なり合っております。
 全国児童相談所長会が平成二十三年に取りまとめた里親委託等に関する調査では、措置解除理由についても調査しておりますが、その解釈について里親から疑問の声が上がるなど、一律に不調理由の統計をとることは困難だと考えております。
 都は、児童の福祉を第一に考えて、ケースごとに個別の状況を総合的に判断していくことが、養育家庭委託の推進においては重要であるというふうに考えてございます。
 次に、一時保護所についてでありますが、都はこれまで、一時保護需要の増加に対応するため、一時保護所の定員を平成十七年度の百二十八名から現在の百九十八名にまで拡大するほか、児童養護施設等への一時保護委託などを実施してまいりました。
 さらに、急増する一時保護需要に対応するため、今年度は新たに一時保護所を増設し、定員を二百十三名とする予定であり、一時保護委託を行う児童養護施設への支援も充実しております。
 また、一時保護所の人員配置については、国の基準よりも職員を手厚く配置しております。
 今後とも、児童相談所の対応力を強化し、子供たちの安全確保に努めてまいります。
 次に、聴覚障害者に関する調査についてでありますが、都では、聴覚障害者のコミュニケーション手段を含め、障害者の生活実態に関する調査を五年ごとに行うほか、障害者団体等と定期的に意見交換を行いながら障害者のニーズを把握しており、そうしたニーズや、国や他の自治体の取り組みなどを踏まえ、三年ごとに障害者計画及び障害福祉計画を策定し、さまざまな施策を展開しております。
 聴覚障害者のコミュニケーション支援についても、専門性の高い手話通訳者等の養成や広域的な派遣に係る連絡調整などを行うほか、手話に関するリーフレットの配布やイベントなど、普及啓発に努めております。
 今後とも、国や他の自治体等の動向や手話等のコミュニケーション手段の状況などを把握しながら、聴覚障害者の支援に取り組んでまいります。
 最後に、障害者差別解消法の施行への対応についてでありますが、この法では、行政機関と民間事業者に対して、障害者への不当な差別的取り扱いの禁止と合理的配慮の提供を求めており、都はこれまで国に対し、普及啓発や相談など、統一的な対応ができるよう、早期に職員対応要領や民間事業者向けの対応指針を示すよう求めてまいりました。
 しかし、民間事業者に対する助言指導等に関する政令も含め、その多くはいまだ示されておりません。
 都は、現在、庁内の体制整備について検討しており、今後、国の動向を踏まえながら、民間事業者や都民に対し、法の施行や障害への理解を促進するための普及啓発を実施するなど、来年四月の法の施行に向け、障害者の方の意見も聞きながら必要な準備を着実に進めてまいります。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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