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厚労省の大失態!「家庭養護」と「家庭的養護」をごっちゃにしたツケが爆発中

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日、無事に一般質問が終わりまして、大きく3テーマ取り上げました。
その中の一つが、毎度お馴染みの「社会的養護・児童養護」

社会的養護関連の過去記事はコチラ↓
http://otokitashun.com/tag/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E9%A4%8A%E8%AD%B7/

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(今日の写真がまだなので、去年のものをイメージで。笑)

今回は「家庭養護」「家庭的養護」の違いについて突っ込みました。
日本の要保護児童は実にその9割近くが施設で集団生活を送っており、
これは子どもたちの

「家庭を得る権利」

の侵害であり、国連からも勧告を受けている点などは
過去の記事で度々取り上げて参りました。

こうした状況を受けて厚労省は、
社会的養護の「脱施設化」を明確に目指し、
以下の様な対応目標を指針として自治体に通知しています。

「施設養護・家庭的養護・家庭養護で、概ね三分の一ずつ(30%強)を目指す」
「家庭的養護と家庭養護を合わせた総称は、『家庭的養護』と称する」

…後者が特に大問題なのですが、順を追って説明しますね。

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(10/1追加掲載:厚労省の資料より)

「施設養護」とは文字通り、旧来通りの施設での集団生活です。
「家庭養護」は里親委託(東京都で言うところの『養育家庭』)を指します。

ここまではわかりやすいのですが、
「家庭『的』養護」って一体なんじゃらほい?

「家庭的養護」とは、住宅を利用して6名を上限とし
子どもを養育する、つまるところ『施設の小規模化』を意味します。

寮のような施設ではなく少人数のユニットで、
しかも一般家庭と同じ作りの「住宅」を利用して生活するのだから、
これは「施設より家庭的な環境」だろうということで、この名称がついたわけですね。

しかしここには、大きな落とし穴があります。
皆さんにとって「家庭」とはなんでしょうか?帰る家のことでしょうか?

多くの場合、それは自分を受け入れてくれる
「家族・親」のことを指すのでないでしょうか。

そうです、このグループホームはいくら住宅を利用して、
少人数で生活するとはいえ、スタッフは常勤ではなくシフト制です。
さらに異動もあれば、退職するスタッフもいるでしょう。

どれだけインフラを「家庭」に近づけたとしても、
家に帰ればいつも親や同じ保護者が迎え入れてくれるという、
あの環境を作り出すことは決してできない
わけです。

特定の養育者との人間関係・愛着関係を形成できなかった児童は、
「愛着障害」という症状を発生させるリスクがあり、これが昨今
世界各国で「施設から里親家庭へ」を促す最大の理由の一つとなっています。

グループホームではこの問題を解決することは決してできず、
どれだけ見かけを家庭に近づけても、それは家庭の代わりにはなりえません。

このような形態にミスリード的に
「家庭的養護」という名前をつけたのが、まず問題の一点目。

そしてそれ以上の問題は、

「家庭的養護と家庭養護を合わせた総称は、『家庭的養護』と称する」

わけのわからない用語の定義をしたことです。
ここに当時の厚労省役人の意識の低さが見て取れるのですが、
(もしくは確信犯でやったのかもしれません)

「ここにピーマンとトマトがある。2つは別物だが、合わせてピーマンとする

って言われたら、明らかにおかしいですよね?
これじゃあ「トマトを食べたい!」という子どもに対して、
ピーマンをあげても間違ってないことになってしまうわけです。

普通は異なる概念が複数あってそれをまとめるとすれば、
別の呼称を用いるわけです(この場合なら「野菜」とか)。

しかし、厚労省はそれをしなかった。
厚労省の担当者に直接聞きましたが、

「当時にどんな議論があったのか、詳細はわからない」
「法律ではなくあくまで『指針』なので、言葉の定義が曖昧になったのでは」
「確かに通常の法律・行政用語であれば、こうしたあやふやな定義は行わない」

とのことでした。。

その結果、どういったことが生じているか。
「家庭『的』養護を促進します」という謳い文句の元、
グループホームを中心とした施設養護が維持・促進されてしまうわけです。

東京都は4月に新たな社会的養護の推進計画を発表しましたが、

「厚労省の数値目標は、あくまで技術的助言」
「都では、家庭養護と家庭的養護の区別を設けず、合わせて6割を目指す

と堂々と宣言しています。
これでは子どもに家庭を与える、里親委託が進むとは限りません。
しかしながら、事情を知らない世間一般から見れば、

「おお、家庭的養護が進むのか。それは良いことだ!」

と思われることになり、外部からの圧力が働きません。
社会問題を提起するのに大事なのは世論なのですが、

「家庭『的』養護」

という単語の響きに政治家すらも騙されるケースは少なくなく、
ただでさえ世界各国から遅れている社会的養護の分野において、
施設の温存が許される事態を作り出してしまっています。

今回の一般質問ではこの点を詳細に追求し、
東京都の指針は国の方針から逸脱していること、
家庭養護に消極的に見えることを指摘しました。

そして、家庭養護単独での目標設定を行うように求めましたが、

「そもそも厚労省も、どのような子どもが
 家庭養護・家庭的養護にふさわしいか定義していない」
「それぞれの子どもたちにふさわしい選択をするのが大切」

ということで、前向きな答弁を得ることはできませんでした…。
厚労省の定義や課題設定が甘いことはその通りであり、
里親委託促進の法規制が必要との想いを強くするばかりです。

その中でも里親委託の委託を優先する旨はしっかりと答弁をもらいましたし、
この問題については引き続き政策提言を続け、また重要な世論の喚起も行っていきます。

また改めて告知しますが、10月17日(土)に
勉強会を行いますので、ぜひ下記からお申し込みください!

【定員30名】10/17(土)16時~「東京都児童養護政策の変遷と課題」勉強会のお知らせ
http://kidshome.jp/20150928387/

家庭養護と家庭的養護は、明確に異なります。
子どもたちのために重要なのは、「家庭養護」の促進です。

もちろん、施設養護やグループホームに適した児童がいることも確かであり、
その存在や出身者の存在をすべて否定するものではないことは、
最後に念のため付け加えておきます。

本会議も終わり、残りは委員会審査です。
一段落する間もなく、引き続き頑張ります!

それでは、また明日。

■以下オマケ、本日の質問全文■

初めに、2020年東京五輪に関連して、知事にお伺い致します。パラリンピック・オリンピックは本来、「都市の祭典」です。しかしながら、様々な問題が噴出する中、国や五輪組織委員会が中心となった意思決定が行われ、東京都が完全に蚊帳の外に置かれているかのように見える現状に、多くの都民が不安を感じています。

 新国立競技場を取り巻く問題については、舌鋒鋭くその不手際を糾弾し、情報公開の重要性を指摘した知事の姿勢は、広く都民の支持を集めるものでありましたし、SNS等を通じた知事の素早い情報発信については、今後も強く期待するものです。しかし、国立施設と異なり、続くエンブレムに関わる諸問題については、東京都も無関係ではいられません。

 知事は現代ビジネスにおける連載の中で、「ロゴの決定権は東京都ではなく、IOCと組織委員会にある」と明言されましたが、組織委員会の理事には、東京都副知事もしっかりと名をつらねています。東京都がまったく意思決定の外にいるかのような発言に都民が疑問を持つのは当然ですし、実態がその通りなのだとしたら、それは由々しき問題です。

 奇しくも知事自身が新国立競技場問題で情報公開の不備をご指摘されたように、エンブレムはその選考過程、また使用中止に至るプロセス・意思決定について、その不透明さに激しい批判の声が噴出しています。また、先の問題で知事が文科省の責任に言及した通り、問題が起きればしかるべき立場のものが責任を取り、組織体制を刷新することは、民間の常識からすれば当然であります。

 組織委員会は、当初エンブレム使用中止の記者会見の中で、この責任の所在を不明確にしたため、これに対して多くの都民が不満と不信を抱えています。そこで、組織委員会にも理事を出す東京都の知事として、今回のエンブレム問題の責任の所在が、どこにあると考えるかをお聞かせ下さい。

 そして、機能不全を露わにし、不十分な情報公開体制を敷く組織委員会に対して、東京都が今こそ都市の祭典のホストとして、主導権を取り戻すべきではないでしょうか。先立つ新国立競技場問題の解決に当っては、一義的には国主導となる事案の中で、知事の強い貢献により、国と都による具体的な財源検討ワーキングチームが発足されました。一連のエンブレム問題に鑑み、今後に組織委員会との間で発生しうる諸問題についても、東京都主導により同様の組織体制を敷く努力をすべきと考えますが、東京都の今後の対応をお聞かせ下さい。

 次に、東京都社会的養護施策推進計画についてお伺い致します。家庭で適切な養育を受けられない子供を公的責任において養育する社会的養護において、我が国ならびに東京都の施策は施設偏重の傾向が顕著であり、里親委託や特別養子縁組への取り組みが極めて鈍いことは、これまでも多くの有識者・議員によって指摘をされてきました。さらに我が国は、その里親委託や養子縁組の不足等により、子どもの「家庭を得る権利」が充分に担保されていないことについて、国際連合の子どもの権利委員会から、強く勧告を受けていることは、見逃せない重大な事実です。

 こうした流れの中、厚労省は脱施設化を目指し、平成41年までに家庭養護、すなわち里親委託率を概ね3分の1とする政策目標を掲げております。にも関わらず、東京都は今年4月に発表された東京都社会的養護施策推進計画において、里親委託等の家庭養護と、小規模施設を含む家庭的養護の区別を設けず、合算で概ね6割を目指すとの方針を発表しました。これは明確に、家庭養護の促進を目指す国の方針から逸脱します。

 そもそも家庭養護と家庭的養護は大きく異なる概念で、施設養護の延長線にあり、グループホームを指す家庭的養護では、主たる養育者が変わるために、児童たちは十分な人間関係を育むことができず、愛着障害を引き起こすリスクがあります。この重大な示唆を踏まえた国の方針を、技術的助言と退けて設定した目標には大きな疑問があり、これでは東京都は家庭養護、すなわち里親委託に消極的とも取られかねません。まず、このような方針を採用した理由を伺います。

 そして、厚労省の数値はあくまで参考に留めるとしても、家庭養護、すなわち里親委託単独での目標設定をすることは極めて重要です。民間企業でも、またあらゆる組織でも、目標を立てる際に数値を設定することは当然といえます。この問題に関しては、舛添知事自身から、先の予算特別委員会で私の質問に対して、里親委託を優先して検討するとの答弁をいただいております。その意志をしっかりと示す意味でも、家庭養護単独の目標設定を定めるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

 関連して、里親委託促進と要保護児童の一時保護所について簡潔にお伺いいたします。里親委託の進まぬ現状において、里親と要保護児童のマッチングに上手く行かなかったケース、いわゆる里親不調の原因調査は必要不可欠です。現在、児童相談所も東京都も、里親不調の原因や理由・背景について統計を取っておりませんが、改善につなげるためにも早急にこのデータ収拾を開始するべきと考えますが、見解を伺います。

 また、児童虐待などのケース急増に伴い、児童を一時的に保護する一時保護所は定員を上回る過密状態が続いており、一時保護所の飽和状態とスタッフの不足は、子どもたちに悪影響を及ぼす恐れも指摘されています。一時保護所の現状について第三者機関による評価が実施される見込みであることは高く評価できますが、児童虐待などの急増件数に充分対応するために、一時保護所にはさらなる財源・人的資源を充てるべきと考えますが、今後の対応をお伺い致します。

 最後に、都の障害者政策についてお伺いいたします。知事は初日の所信表明にて、「パラリンピック開催都市として、心のバリアフリーを推進し、情報面でも、点字や音声、多言語での対応など、環境整備を進めていく」と述べておられました。まさにその、障害者とのコミュニケーションについていま注目をされているのが、手話言語条例の制定です。

 「手話は言語である」ということを、まだまだ多くの人は知りませんが、手話は日本語と異なる文法・体系を持つ無声言語であることは、様々な学術的研究によって証明されつつあります。権利意識の高まりとも相まって、2011年に制定された改正障害者基本法の中ではついに、我が国の歴史上初めて、手話を言語として位置づけられる文言も、記載されました。

 こうした流れの中、地方自治体でも「手話言語条例」を制定し、手話に関する普及啓発・権利擁護を進める動きが見られ、都道府県では鳥取県と神奈川県、群馬県がすでに手話言語条例を制定し、二桁を数える基礎自治体でも同様の動きが見られます。特に注目すべきは兵庫県明石市の取り組みで、通称「手話言語・障害者コミュニケーション条例」と呼ばれる条例の中では、手話だけに留まらず要約筆記・点字・音訳などの普及促進も明記された上、知的・発達障害者とのコミュニケーションについても言及した内容は、非常に先進的なものと高く評価されています。

 かつて東京都は、教育特区申請により都内に日本で初めて、日本語と手話のバイリンガル教育を行うろう教育学校を設立した、障害者コミュニケーション、特に手話言語の認知において最も先進的な自治体でした。パラリンピックを5年後に控えた今、国の動きを注視するだけでなく、東京都も自ら条例制定に動き、手話などの障害者コミュニケーション手段の普及啓発・促進に務めるべきです。

 条例化の検討に先立ち、東京都内にいる聴覚障害者の方々は、それぞれどの方法を主たるコミュニケーション手段としているか、特に手話を言語として使用されている方がどれだけいるかを把握することが欠かせません。他の自治体の条例とその取り組み内容の調査研究ならびに、手話等のコミュニケーション手段の現状について数値に基づく実態調査を速やかに行うべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

 また、来年4月には障害者差別解消法が施行され、障害者の方々へ行う「合理的配慮」についての適切な対応が懸念されているところです。法律の施行まで半年を切ったいま、東京都の対応準備の進捗がどのような状態になっているかお伺いいたしまして、私の質問を終わります。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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