もっと、新しい日本をつくろう

「障がい者が就職して接客するなんて、ありえない!」と思われていた時代から…

日々のこと,

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今日は一昨日に引き続き、斉藤区議とともに障がい者雇用に関する行政視察。
障がい者の就労支援をメインとする「社会福祉法人ドリームヴイ」さまと、
スワンベーカリー十条店に視察に行って参りました。

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「スワンベーカリー」
http://www.swanbakery.co.jp/swan/index.html

この名前に聞き覚えのある方はいるかもしれません。

「障がいのある人もない人も、共に働き、共に生きていく社会の実現」

このノーマライゼーションの理念を実現させるために、
故・小倉理事長と宅急便のヤマトホールディングスが立ち上げた株式会社で、
知的を中心とする様々な障がいをお持ちの人々を社員として雇用しています。

スワンが立ち上がった18年前、障がい者の多くは福祉政策として設置される
「福祉作業所」で単純作業に従事し、1ヶ月に1万円に届かない工賃を手にするのみでした。
(もちろん現在もあります。前回のブログ参照)

「これではいつまで経っても、障がい者の自立・社会参画は進まない!」

そう思った小倉氏は、障がい者でも能力を発揮し、給料が払えるビジネスを模索。
試行錯誤の末、障がい者でも安全で美味しく運営できるのは「パン屋」であることを発見し、
大手企業のヤマトの支援を受けて会社の設立まで実現しました。

そのネーミングの由来は、
「醜いアヒルだと思ったら、実は白鳥だった」
という、あの有名な童話からきているそうです。

そしてこの十条店は、スワン設立の翌年に出来たフランチャイズ一号店。
近くにあった王子養護学校(現特別支援学校)卒業生の保護者たちが、

「障がいを持っていても、福祉施設ではなく、きちんと仕事ができる子もいる」
「なんとか地域で、彼らの雇用を生み出せないか?」

と考えたメンバーで、一念発起して有限会社を設立。
スワンベーカリーの看板を獲得して、この地で運営を始めたそうです。

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ここからの歴史はやや複雑なのですが、
ほとんど利益が出ずに存続ギリギリでやっていたスワン十条店(有限会社ヴイ王子)は、
やがて労働者の支援サポートや通所授産施設(福祉作業所)を運営する社会法人へと転換。

スワンベーカリー十条店は別会社が運営する形態となって道路を挟んで隣接し、

「就職できる人は、スワンに務めて『給料』をもらう」
「それが難しい人は、作業所に通って『工賃』をもらう」

というように、産業と福祉の両面から障がい者をサポートし、
地域に密着する社会法人と株式会社の連携が実現しているのですね。

今日の視察と夜の障がい者就労の勉強会から学んだことは多岐に渡るのですが、
本日はその中から政策課題を一点だけ。

障がい者の社会参画と自立を求めて、政府や行政は積極的に就労を進めています。
東京都も現在、福祉作業所でわずかな工賃をもらうのではなく、軽度の障がい者には
「就労」を目指してもらう方針を打ち出し、4万人という勇ましい目標を掲げています。

そして障がい者の就労を促す支援を

「就労移行支援」

といいますが、このサービスには直近の法律改定で
民間の株式会社の参入もできるようになりました。

うまく企業とマッチングできた場合の補助金単価も高く、
企業側も社会的貢献として障がい者を雇う機運が高まってきたことと相まって、
この分野には様々な業態の民間会社が参入しているそうです。

これで現在、どんな問題が起きているか。
就労しても「定着」できない障がい者の大量発生と、
そのサポートに追われる就労支援センターのパンク状態
です。

行政の設計では福祉政策は厳格に分別されるのですが、
「就労移行支援」という分野は主に就職させるところまでが守備範囲です。

制度上、マッチングした会社に障がい者が半年以上在籍すれば
「就労」したとカウントされて補助金が入り、その後のサポートは義務付けられていません。

こうした制度設計をすると…特に利益を重視する民間会社などは、悪気はなくとも
「マッチングさせて、少なくとも半年在籍させる」ことがゴールになるわけです。

しかし、その後にうまく行かずドロップアウトしてしまったり、
なまじに大きなお金を手にしたばかりに生活が狂ってしまった障がい者の方々を、
就労移行支援を行っている企業・事業者は面倒を見てくれません。

彼らのような存在が現在、「就労支援センター」と呼ばれる
行政や委託されたNPO・社会福祉法人が運営する組織にヘルプを求めてくるのですが、
それに対応できるノウハウも人員もなく、非常に苦しい状態に追い込まれているそうです。

あくまで目指すべきは「障がい者の自立・社会参画」であって、
「企業にとりあえずマッチングして就職させること」ではなかったはずです。

しかし、良かれと思ってまずその「入口」部分にインセンティブをかけた結果、
その後は行政の予想を超えるいびつな展開になってしまいました。

現在、政府・行政側も就労移行支援の事業者に3年以上の定着努力を義務付ける、
そのためのインセンティブを与えるなどの改善案を検討しているようですが、
依然として明確な解決策は提示できていないとのこと。

参考:障害福祉サービス等報酬改定における就労移行支援事業の課題と対応について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/3-6.pdf

何かを解決しようとした政策が、また別の問題を引き起こしてしまう
これはそんなケースの典型例とも言えるでしょう。

本当に、政策の制度設計というのは難しいものです…

この部分に関するインセンティブ設計の是正については、
定着支援に独自の補助金を上乗せするなど、東京都単独で
アプローチできる部分もありそうです。

こうした繊細な分野の政策立案・実現は一筋縄では行きませんが、
新たな問題を生み出す可能性があるからといって、何もしないわけにはいきません。

「本当に問題ばかりだけど、17年前に比べれば格段に状況は良くなった」

スワンベーカリー十条店の創設者の方はそう言います。
今日よりも明日が少しでも良くなるよう、私も謙虚に学びを続け、
微力ながら私の立場から政策提言をしてまいりたいと思います。

夜の勉強会で学んだことは、また次の機会にまとめます。
社会福祉法人ドリームヴイさま、スワンベーカリー十条店の皆さま、
ありがとうございました!

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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