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捻じ曲げられる子どもたちの意思…児童相談所には、子どもの権利を守る仕組みが必要だ

こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

先日、児童虐待や児童相談所に関する私のブログを読んだ児童養護施設出身の大学生が連絡をくださり、

「私の体験から、どうしてもお伝えしたいことがある」

とのことで、都議会議事堂までわざわざ会いに来てくれました。

行政を介さずに要保護児童・元要保護児童の方の意見を聞けるのはとても貴重な機会であり、勇気をもって見ず知らずの議員に連絡をくれたことを、本当に嬉しく思います。

実際に児童養護施設や一時保護所にいた方のお話を聞くのは初めてではありませんが、やはり今回もかなり壮絶な内容で…。

上限が2ヶ月であるはずの一時保護所の滞在期間は半年をゆうに超え、その間は学校に通えなかった。

児童養護施設は慢性的な人手不足で、15人もの子どもたちを職員1人が見ている状態。

施設職員も児童相談所のケースワーカーもしょっちゅう変わり、担当者が全員いっぺんにやめてしまったこともあった。

etc..

どれも由々しき実情で「さもありなん」というものですが、特に深刻だと感じたのは、児童相談所による子どもの意見・権利をないがしろにした対応です。

(以下はケース特定を避けるために、少しボカして書いています)

保護者と子どもの分離を行った場合、児童相談所のケースワーカーが面会交流などを進めながら双方の意思を確認し、家庭復帰や保護措置継続の是非を判断することになります。

今回のケースでは、やむを得ない事情で保護者から分離をされたものの、彼女自身は家庭復帰を強く希望していたそうです。

すでに自分の意思をはっきり伝えられる年齢になっており、そのことは児童相談所のケースワーカーにもしっかりと伝えていました。

ところが保護者と見解が対立し、保護措置を継続すべきと考えていた担当ケースワーカーは、

「彼女(子ども)自身もまだ、家庭には戻りたくないと言っている」

捻じ曲げた情報を保護者を含む関係各所に伝え、それが「子どもの意思」として扱われていたのです。

事実を知った彼女はその後、児童相談所のケースワーカーとの面会を一切拒否し、心を閉ざして施設生活を送ることを余儀なくされました。

ケースワーカーが「家庭には戻りたくないと言っている」と保護者に伝えたことで、保護者の心象も悪くなり、比較的順調に進んでいた面会交流の頻度も低くなってしまったと言います。

18歳で措置解除になった後、現在は保護者の元に戻って生活しているものの、このときの児童相談所の対応は未だに尾を引いており、ギクシャクしたものを感じるとのことでした。

保護者の元に子どもを返すにはまだ不安な状況があるなど、保護継続としたケースワーカーの判断には理由があったのだと思います。

深刻な被虐待児でも親元に帰りたがるケースは多くあり、そうした判断を行うこと事態は否定するものではありません。

しかしそれでも、子ども意思が恣意的に捻じ曲げられて伝わること・利用されることはあってはなりませんし、人権軽視との誹りは免れません

家庭復帰の「支援」から親子分離という「介入」まで、同じケースワーカーが一手に担う仕組みになっている日本の児童相談所では、このようにどうしても「どうとでもなる」「扱いやすい」子どもの権利が蔑ろにされる傾向があります。

かつてある児童養護施設では、深刻な身体的虐待・性的虐待が横行する事件が発生したことがありました(恩寵園事件)。

このときも、耐えかねた要保護児童たちが集団脱走し、自力で児童相談所までたどり着きケースワーカー・職員たちに口々に施設の窮状を訴えかけたものの、文字通り「門前払い」となり施設に送り返されてしまいました

この事件は、元児童の証言などを報道としたテレビがきっかけとなって世論の押されるまで、警察や行政が対応することはありませんでした。

さすがにこの20年前のような事態はなくなっていると信じたいものの、「大人側に比べて、子どもの意見が軽視されている」という状況はまだまだ残っているのではないでしょうか。

一方の福祉先進国では、親子分離の案件では「親側のケースワーカー」「子ども側のケースワーカー」と複数の担当者が付くケースもあり、子ども側の意見や権利を守ることが徹底されているそうです。

複数のケースワーカーが事案を担送すれば、複数のチェックの目が働くことになり、今回のように事実を歪曲する事態を避けることもできます。

我が国ではようやく近年、一時保護所の劣悪な待遇が指摘されたことから第三者機関によるチェックが入ることになりましたが、児童相談所そのもののケースを監査し、子どもの権利を守る機能は十分にありません。

先の都議会一般質問でも、斎藤れいな都議より「子どもの権利を代弁するアドボケイター制度の導入を」という提言がなされました。私もこの意見に強く賛成するものです。

これから行われる児童相談所改革においては、「子ども目線」「子どもの人権」という観点から制度変更・人員増強が行われるよう、引き続き強く働きかけを続けて参ります。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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