こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
週明けの今日はベンゼン等が高い数値を示した豊洲市場問題を多くのメディアが取り上げまして、私もフジテレビ「グッディ」に急きょ出演してコメントをさせていただきました。
各種報道を見ていて感じるのは、豊洲市場の「安全基準」に対する2つの考え方の混在です。
1.「安全と安心は異なる」という考え
14日に開かれた専門家会議でも繰り返し述べられている通り、土壌汚染対策法上の安全対策は適切になされており、市場が実際に運営される地上部分の「安全」はほぼ確実に確保されています。
しかしながら、地上がどれだけ安全とはいえ、地下に環境基準値を上回る汚染物質があるのでは「安心」することはできないという考え方があります。
(豊洲問題)今回の結果を受けても専門家会議の平田座長は「地下水は飲むわけではなく、土壌が飛散することもないので安全に問題はない」と説明。それって安全基準を満たしてるやんか!その通り、豊洲は現状でも土壌汚染対策法の安全基準は満たしている。じゃあ、今、何を騒いでいるの?
— 橋下徹 (@t_ishin) 2017年1月15日
これに対しては橋下徹氏などを中心とした論客が、
「そもそも騒いでいる『環境基準』とは飲料水に適用される基準」
「利用用途のない地下水は、排水基準にして流せば問題ない」
という主張を展開しています。これは全くその通りなのですが、以下の2点目の問題が解消されません。
2.環境基準値以下に土壌汚染対策を行うという「約束」に対する懸念
もう一つはシンプルに、「約束と違うじゃないか!」というものです。
当初の専門家会議では、土壌汚染に対しては主に「封じ込め」を行う方針でした(実際にそれで十分だった)。
しかしながら紆余曲折を経て、敷地全体の地下水を環境基準値以下に浄化する方針が技術者会議で打ち出され、その方針に沿って市場関係者や議会への説明・説得が行われてきました。
飲料水でない地下水に対してそこまでの対策を行う必要がないというのであれば、なぜそんな無責任な約束をしたのか。論理的な整合性が取れないではないか!という声が上がるのは当然で、こう感じている人たちに
「そもそも飲料水の基準だから…」
という説得は残念ながら刺さらないどころか、むしろマイナスに響く可能性すらあるように感じます。
■
ではこのようにこんがらがってしまった状態を解きほぐし、解決に向かうアプローチはどのようなことが考えられるでしょうか。
A. 環境基準値以下の状態を目指し、「安心」を徹底確保
これができればベストです。地下水管理システムが正常に作動すれば、いま検出されている数値の地下水を浄化することが可能ですし、地下ピットにコンクリートを敷くなどの追加工事で「安心感」を高めることもできるでしょう。
このアプローチを取った場合の問題は、それでも一定の結果が得られなかった場合、市場移転問題は完全にスタック(停滞)するということです。
ここまで「安心」を追求する前例をつくってしまったら、築地市場やその他の市場にも一定の安心基準が求められることは避けられません。
そして今の築地市場は、安心どころか現行法上の安全基準すら満たしていないことはほとんど明らかです(築地市場の存在が許されているのは、「昔からあって今も営業しているから」という理由のみに他なりません)。
余談ですがこのように整理すると、豊洲新市場は「安全なのに安心ではない」、築地市場は「安全ではないのに安心である」という極めて矛盾した状態になっていることが理解できます。
B. これまで求めてきた基準を見直して、「安心」の敷居を下げる
もう一つのアプローチはこちら。そもそも、これまで求めてきた基準が過剰であったことを認めて、方針転換を図るというものです。
(豊洲問題)豊洲問題を解決するには、豊洲の安全基準を現在の過剰基準から原点に立ち返り、土壌汚染対策法上の安全基準に戻すこと。これは専門家や官僚組織ではできない。できるのは小池さんによる政治主導しかない。これこそがまさに政治の役割だ。メディアもその視点から報道せよ。
— 橋下徹 (@t_ishin) 2017年1月15日
まさに橋下さんらが主張していることですが、こちらは政治決断でできることですから、決して不可能なことではありません。
しかしこの場合、当然に「じゃあこれまでの対策はなんだったのだ?」という声が噴出することにになり、これで人々の「安心」を買えるかというと、なかなかにそのハードルは高いものはあります。
■
現実的な解決策としては、A案のできる限りの環境基準適合を目指し追加対策などを検討しつつ、一定のところで線引をして安全宣言という折衷案が見えてきますが、いずれにせよ前回のブログで取り上げた通り、現在の79倍ベンゼン等という数値は暫定値であり、まずは再調査の結果を待つ必要があります。
また、そもそもこうした地下水が基準値以上になった時のためにあるのが地下水管理システムであって、その動向を確認する必要があるのですが、こちらについてもまた改めて取り上げたいと思っています。
いずれにしても、今回の「79倍」という数字だけがひとり歩きし、現時点で豊洲移転の是非を論じるのは早計です。にわかに高まる築地再整備案についても、現実的に可能かどうかを冷静に判断する必要があります(私は限りなく不可能だと思っています)。
築地市場の課題についてはコチラの記事などを↓
参考:豊洲市場に「ゼロリスク」を求め続けるとどうなるか?冷静に検証してみた結果…【築地移転問題】
http://otokitashun.com/blog/togikai/13308/
引き続き、新たな情報が入り次第、適切な形で共有していく所存です。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
twitter @otokita
Facebook おときた駿
Instagram @otokitashun
買って応援!
下記リンクから飛んで、Amazonにてお買い物をしてみてください。
発生した収入は、政治活動の充実のために使用させていただきます。
Amazonでお買い物