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新たなる希望!要保護児童たちに対する自立支援貸付事業、ついにスタートへ

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
児童福祉に関わる民法改正が予定されているなど、

「今年は社会的養護・児童養護にとって大きな年になる」

年初に記事を書きましたが、
早速国会の補正予算で一つの政策が実現しました!

20160209児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業

その名も「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業」。

…お国の事業なのでまったくキャッチーさのない難しいネーミングですが、
主に18歳(あるいは20歳)になり児童養護施設や里親などの元から
自立する要保護児童たちを対象として、

●就職した場合は、家賃相当額
●進学した場合は、家賃相当額プラス生活貸付費として5万円
●資格取得希望者には、上限25万円の実費(こちらは自立前の要保護児童も利用可)

を都道府県が主体となって貸付を行い、
一般家庭に比べて経済的な困難が予想される要保護児童たちの
自立支援をサポートしていこうとする試みです。

貸付ではありますが、一定の条件(就労継続や大学・専門学校の卒業)を満たせば
返還が免除になるという仕組みになっており、この制度が上手く活用されれば
自らの可能性を切り開ける要保護児童たちが大勢存在するでしょう。

国の補正予算として可決された金額は、67.4億円。
このうち東京都へは7.5億円が配分され、

「福祉サポート事業」

という名称で事業化されるべく、
今回の定例会で審議・可決される見通しとなっています。。
都側もこれに10%の負担額を上乗せし、まずは3年間運用される見込みだそうです。

※社会的養護・児童養護に関する過去記事はコチラから↓
http://otokitashun.com/tag/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E9%A4%8A%E8%AD%B7/

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とはいえ、この制度自体にもまだ課題・論点が残ります。
もっとも大きいのはやはり、「給付」ではなく「貸付」である点でしょう。

一定の条件を満たせば返還免除になるとはいえ、
勤務先がブラック企業だったり、どうしても進学先に馴染めないなど、
なんらかの事情でドロップアウトした場合、多額の負債を抱えることになりかねません。

この自立支援事業の目的は、卒業してしまうとしばしば連絡が取れなくなる
元要保護児童たちとの「つながり」を保つというのが一つの目的でもありますが、
借金を抱えれば身を隠してしまう元要保護児童が現れることも予想されます。

この点は補正予算の審議時に国会質問でも取り上げられており、
例えば5年の就労継続を条件とする貸付金については、転職などの事情も考慮しながら
「柔軟な運用を行っていく」としています。

また今年度から独自に給付型の奨学金を設立した(素晴らしい試み!)
世田谷区長の保坂氏などは、貸付型そのものに対して疑問を示しています。

児童養護施設からの進学時に「基金で給付型奨学金」を創設へ
http://www.huffingtonpost.jp/nobuto-hosaka/asylum_b_9136890.html

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一方で給付ではなく貸付にする大きな理由には限られた財政面や、
「もらえるならとりあえずもらっておく」という利用者の
モラルハザードへの懸念などが挙げられるでしょう。

このあたりは専門家でも意見がわかれている点であり、
貧困対策で有名なグラミン銀行創設者・経済学者のムハマド・ユヌスは

「あくまで対象を『客体』にする給付では、貧困を断ち切ることはできない。
 対象を『主体』として尊重する貸付こそが、真の問題解決につながる」

と主張しています。

「給付は人を堕落させる」というと言葉は強くなりますが、
そのお金は施しではなく、あくまで自分がコントロールするものだという
意識をもたせるべきという主張には一理あります。

一定条件で返還を免除する本事業は、
貸付と給付の特性を併せ持つ「折衷案」とも言えるでしょう。

貸付金で過度な負担が生じ、社会福祉の網からこぼれ落ちる
元要保護児童たちを生み出さないよう、今後の対応や実績に注視していく必要があります。

また私が個人的にもっとも懸念しているのは、

「はたしてこの制度が、希望する児童たち全員が利用できるかどうか

という点です。まず各施設・里親の元にいる要保護児童たち全員が
この制度自体を認知・理解できるように周知徹底しなければなりません

現在でも、要保護児童たちに不適切な進路指導
行われていたケース報告は皆無ではなく、

「進学を希望していたのに、就労を進められて仕方なく従った」
「奨学金を利用する方法など、教えてくれなかったので知らなかった」

と主張する卒業生たちが散見されます。
もちろん指導員たちも様々な事情があって適正を見極めたのかもしれませんが、
新たに制度ができたことは伝え、子どもたちの自主的な選択を尊重しなければなりません。

また、親・保護者の介入も心配されます。
ろくに面会交流に来なかったにも関わらず親権だけを主張し、

「働ける年齢になったら戻ってこい」
「そして早く、家にお金を入れろ!」

などと言う親も現実に存在するのです。
こうしたところにお金が流れることになったり、
彼らの意向により進学の希望が絶たれることは厳に慎まなければなりません。

東京都は実際の運用を社会福祉協議会に委託するつもりのようですが、
以上の点に細心の注意を払われる仕組みづくりの構築が求められます。

…と、この話題になると熱が入って、
またも長くなってしまいました(苦笑)。

社会的養護「後」の自立支援は、2年前にこの問題に取り組み始めた
当初から私が主張してきた政策の一つであり、まだまだ問題が山積みとはいえ、
大きな一歩が踏み出せたことは本当に嬉しい限りです。

今回は補正予算で成立した時限的な事業でありますが、
しっかりと運用され、様々な課題を発見・解決しながら
要保護児童たちのために継続されていくよう、政策提言を続けていきたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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