こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
15時からの石原慎太郎元知事の記者会見、同僚都議たちとともにかたずを飲んで見守っておりました。終わった直後の率直な感想は、
「むしろ事態はさらに混迷を極めた」
というものです。
なぜなら石原氏が自らの責任について全面的には認めない一方、小池氏の「責任」に繰り返し言及し、さらにこのタイミングで
「豊洲市場は科学的に安全なのだから、今すぐにでも移転するべきだ」
と主張してしまったからです。
現在、環境基準(飲料水)の79倍超のベンゼンなどが検出されたことを受けて、専門家会議が再調査をしている段階であり、移転の可否については論じるタイミングではありません。
とはいえ、私自身はこれまでブログやテレビなどで繰り返し述べてきた通り、豊洲新市場は科学的には極めて安全な可能性が高いと思っていますし、できるかぎり完成している豊洲市場を活用する方向性を見出すべきだと考えています。
「安全と安心を混同させているのは、決断をしない小池知事では?」
という批判があることも承知しています。その上で、そうした意見や石原氏の発言を完全に首肯できないのは、できると言ったことができなかった、約束したことが守られていない(可能性がある)からです。
私は百条委員会の委員に選定されるにあたって、改めて7年前に都議会に設置された市場移転・再整備に関する特別委員会の議事録をすべて(文字通り一言一句、すべて!)読み返しましたが、例えばこのような答弁が出てきます。
○臼田中央卸売市場新市場建設調整担当部長
お尋ねの件でございますが、都の土壌汚染対策は、調査結果をもとに環境基準を超える操業に由来する土壌の汚染物質をすべて除去し、地下水についても環境基準以下に浄化していくものでございます。
こうした土壌汚染対策後、地下水のモニタリングを二年間行っていくということでございます。この二年間の地下水モニタリングは、土壌汚染対策法に基づきまして、当該土地において地下水汚染が生じていない状況が二年間連続していることを確認するために行うものでございます。
都といたしましては、モニタリングにおいて地下水から汚染物質が検出されることがないように、技術会議で提言された技術、工法を確実に実施いたしまして、万全の対策を講じたいと考えてございます。
これに対して民主党(当時)議員が、「汚染がすべて除去できるとは限らない。モニタリング期間中に汚染が確認されたらどうするんだ!」と重ねた質問に対する答弁は以下の通りです。
○臼田中央卸売市場新市場建設調整担当部長
専門家会議、あるいは技術会議の提言に基づきまして都が行う土壌汚染対策は、法の定め以上に綿密に行った調査結果に基づきまして、環境基準値を超える操業に由来する土壌の汚染物質をすべて除去するとともに、地下水についても環境基準以下に浄化していくものでございます。
こうした土壌汚染対策を確実に実行することで、人が生涯この地に住み続けても健康への影響はなく、生鮮食料品を取り扱う市場用地としての安全性を確保していくことで理解を得られるものと考えてございます。
(同上)
同じ答弁内容が大半ですが、要は「そういう(汚染が出てくる)ことはないように処理するから大丈夫」と、重ねて明言しているわけです。
念のためここでも申し上げますが、地下水は飲料水に使うわけでも何でもありませんし、地下に封じ込めさえしておけば安全だと私も思います。
ですが、ここまで大言壮語したことができてないとすれば、その一点で少なからず「安心できない」「今後もどうなるかわからない」と感じる方が出るのは仕方ないことだと思いますし、それを無視して突き進むこともなかなか難しいのではないでしょうか。
加えてその時に安全対策として約束した「盛土」まで結果としてなかったのですから、不安を感じる人が増えたのも当然です。
だからこそ小池知事はいま、豊洲新市場を使用するためには
・追加の対策工事を行うか
・「安全」の基準を思い切って見直し、新たな政治判断を行うか
などの対応を迫られており、これらは前知事までの「積み残しの荷」です。
そして繰り返しになりますが、こうした積み残し(答弁・約束)を都がしているときの責任者=都知事は石原氏です。
今の状態の豊洲市場を「安全・安心だ」と断言できるなら、なぜ土壌汚染対策が本格化する前の当時に
「飲料水ではないのだから、環境基準値以下にする必要はない」
「コンクリートで地下に封じ込めておけば大丈夫だ」
と断じてくださらなかったのでしょうか?
石原氏やその支持者の方々は、小池知事のスタンスを世論迎合・政局利用だと批判しますが、結局当時の政局や世論に押されて、その場しのぎで非科学的な決定をした点において、少なくともその批判を石原氏がする資格はないと思います。
そして何より、こうして決定された科学的には過剰とも言える土壌汚染対策が費用の著しい増加を招き、「瑕疵担保責任」など今まさに議論になっている問題が発生したわけです。
当時の自分自身の決断が土壌汚染対策費の高騰と、それに伴う瑕疵担保責任の問題を引き起こしているにもかかわらず、
「知らなかった」「都に聞かれて(つい先日)知った」
というのは、あまりにも無責任な態度ではないでしょうか。
■
会見中には
「科学が風評に負けるわけにはいかない」
など、うなずける発言もいくつかありましたが、その「風評」を作り出す原因となっている基準を石原都政で設定している以上、やはり「あなたが言うな」という印象を払拭することはできません。
以上のような理由から、ここで石原氏が強引に豊洲市場の安全性を主張することはむしろ逆効果であり、世論の反発を招き、小池知事の決断に負の影響を与えるばかりではないでしょうか。
問題解決は遠のく一方で、本当に頭が痛いところです…。
その他にも石原氏の発言には首をかしげる点が複数あり、一つ一つの事実確認が必要になります。
それらの点は今後も整理しながら、百条委員会での証人喚問に向けて準備を進め、折に触れて皆さまにも情報公開をしていきたいと思います。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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