〇おときた委員 私からは、まず初めに、平成二十七年度予算から、ムスリム観光客の受け入れ環境整備に関する予算及びそれに関連する項目について伺います。
先般、ISILによる日本人人質事件など痛ましい事件が発生しましたが、我が国におけるイスラム教への認知と理解はまだまだ十分ではなく、こうした事件を受けて、誤解や偏見は深まるばかりです。
こうした誤解や偏見は来日者だけでなく、日本で暮らすムスリムの被差別化と孤立化を招き、悲劇の連鎖を引き起こしかねません。観光客対応に限らず、今こそイスラム教、ムスリムへの理解を深め、交流することは極めて重要です。
一方で、ムスリムが中心となる諸外国からの訪日者数はふえ続けており、東京都としては、その対応に平成二十六年度から約二千万円の単独予算を計上し、今回の予算案でも二千四百万円程度が計上されています。
まず、本年度は、この予算の中でどのような取り組みが行われたのかを伺います。
〇山本産業労働局長 都は今年度、民間事業者によるムスリム旅行者の受け入れ環境の整備を促進するため、飲食店や宿泊施設等の事業者などを対象としたハンドブックの作成やセミナーの開催等を通じまして、受け入れに必要な基礎知識や取り組み事例等の普及啓発を行っているところでございます。
〇おときた委員 そうした啓蒙活動をしてくださっている一方で、ムスリム観光客や在日のムスリムに対して、礼拝所の不足やハラールと呼ばれるムスリム独特の食生活に対応できるインフラが、我が国及び東京都で非常に不足していることは再三の指摘がなされているとおりです。
このまま二〇二〇年の東京五輪を迎えるに当たっては、この貧弱なインフラで世界の人口の五分の一ともいわれるムスリムの観光客を迎え入れることは、とてもではありませんが、想像ができません。
特定の宗教に対するインフラ整備にのみ行政が対応することは、政教分離の観点から非常にセンシティブな問題であることは理解ができます。しかしながら、イスラム教は私たち日本人がイメージするいわゆる宗教という枠組みを超えて、多くの人々の生活習慣になっている存在であり、その圧倒的なムスリムの規模に対して対応できないことは、先進国の首都としては看過できない状態ではないでしょうか。
こうした観光客を受け入れる前提として、特定宗教であるイスラム教やムスリムへの対応を行うことについてどのようにお考えなのか、どの程度まで行うおつもりなのか、東京都の見解をお伺いいたします。
〇山本産業労働局長 ムスリムは、世界人口の約四分の一を占め、また、訪日ビザ発給緩和等を背景にいたしまして、マレーシアやインドネシアなど、ムスリム人口の割合が高い国から日本を訪れる旅行者が急増しておりまして、今後も増加が見込まれております。
ムスリムには、イスラム教の戒律により、豚やアルコールを口にできず、また、一日に数回の礼拝を行うなど、日本とは異なる文化や習慣がございます。こうしたムスリム旅行者が快適に東京で滞在をするためには、ムスリム特有の文化や習慣に対して一定の配慮が必要でございます。
都は、都民や飲食店などの事業者の理解を深め、具体的な取り組みにつなげていくため、受け入れに必要な基礎知識や取り組み事例等の普及啓発を民間事業者等に対して実施いたしまして、施設整備等の自発的な取り組みを促しております。
〇おときた委員 裏を返しますと、やはり大きな投資を行政が行うということは難しいということであるかとも思います。しかしながら、現時点でインフラ整備への直接的な支援などが難しいとしても、まだまだ行政サイドにできることはあるはずです。
例えば、多くのムスリムや有識者から指摘されるハラールの認定基準の曖昧さについて、現在、東京都にはどれだけのハラール認定団体が存在し、どのような差異があるのか。国際基準と比べると、それぞれがどのような位置づけなのか。こうした包括的な情報を分析して提供することはできるはずですし、これこそ行政の得意とする分野ではないでしょうか。
今年度も事業者向けのリーフレットを作成して配布しておりますが、今後は、より高度なガイドラインづくりを東京都が主導して進めるべきです。
来年度は、同予算の中でどのような取り組みを進め、また、二〇二〇年までにどのような中期計画を描いているのか、ご教示ください。
〇山本産業労働局長 ムスリムの生活は戒律で細かく定められておりますが、同じムスリムの中でも、生活する国や地域、宗派などにより、その習慣は大きく異なり、個人差がございます。
そのため、都は、ムスリム旅行者みずからが自分に合った判断を容易にできるよう、食材や調理方法等の必要な情報を提供することを民間事業者に対し働きかけてまいります。
これに加えまして、来年度からは、ムスリム旅行者の受け入れに積極的に取り組む飲食店や宿泊施設等の情報を旅行者に向けて提供してまいります。
今後とも、民間事業者等に向けた普及啓発に取り組むとともに、旅行者への情報提供を行うことで、ムスリム旅行者が安心して滞在できる環境を整備してまいります。
〇おときた委員 旅行者自身にも情報提供をするということも前向きな取り組みの一つであると思います。私どもからの提案も踏まえ、二〇二〇年までにしかるべき環境が整うことを期待いたします。
こうした行政機関による対応と同時に、冒頭述べたようなイスラム教とムスリムへの誤解を解き、孤立化と被差別化を防いで連帯することは、新たなテロの発生を防ぐ観点からも非常に重要です。
先般、日本人が犠牲となる痛ましい事件が起きましたが、欧米では、こうした事件が起こると、すぐに政治家が先方の文化施設、モスクや礼拝所などを表敬訪問し、連帯を訴えます。これは、テロ対策としても文化交流としても非常に有効かつ重要な政策的行動です。海外経験が長く、国際感覚がすぐれた舛添知事であれば、こういった点は既に肌身に感じていらっしゃるかもしれません。
しかしながら、我が国では、あれだけの事件が起きても、ほとんどの政治家、著名人が行動を起こしません。私自身は、有識者からの指摘を受け、一月末に東京にあるモスクである東京ジャーミイを訪問させていただきましたが、先方には大変な歓迎をされました。仮に知事がモスクを訪れる、あるいは、もっと踏み込んで都市間外交としてムスリム諸国を訪れれば、その効果と影響力は絶大なものではないでしょうか。
アジア諸国やパリなどの欧州諸国との都市外交ももちろん重要ですが、このような痛ましい事件が発生し、国の外交が慎重にならざるを得ない今こそ、東京都がそのフットワークを生かして、ムスリム諸国との都市間交流を始めるべきです。舛添知事の見解をお伺いいたします。
〇舛添知事 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会を成功させまして、これを契機として世界一の都市東京を実現するためには、都市外交の果たす役割が重要であります。
私は、昨年二月に就任以来、姉妹友好都市等を訪問し、さまざまな分野で相互協力の推進について合意し、また、世界の主要都市の先進的な取り組みを学ぶなどして、都市外交を積極的に推進してまいりました。
引き続き、都市外交基本戦略に基づき、既存の姉妹友好都市等に限らず、世界の諸都市との交流を深めてまいります。
ちなみに申しますと、私はヨーロッパにいた三十代のときからイスラム研究を一つの大きな柱にしておりまして、ご指摘をまつまでもなく、既に何十年にわたって諸外国のムスリムの都市、また、ムスリムの指導者と親しい関係にあります。また、あるムスリムの国からは勲章もいただいております。
〇おときた委員 そのようなムスリムに非常に理解が深く、頼もしい知事を持っていることを私も誇りに思います。ぜひ引き続き、交流関係を深めるために活躍をご期待しております。
次に、特定施設入居者生活介護、いわゆる有料老人ホームの監督体制について伺います。
高齢者が安心して暮らすためのインフラとして、さまざまな主体が運営する有料老人ホームを、東京都が基礎自治体や関係機関と連携して適切に監督しなければいけないことは論をまちません。
しかしながら、先般、江戸川区にあるとある施設では、監督体制の不備から痛ましい事件なども発生をしてしまいました。
そこで改めて、東京都の基本的な役割と基本的な対応を何点か確認させていただきます。
まず初めに、特定施設入居者生活介護の指定を受けた、いわゆる介護つき有料老人ホームの指導、管理、監督に関する東京都と区市町村のそれぞれの権限、責任及びその分掌と根拠法をお示しください。
〇梶原福祉保健局長 有料老人ホームのうち、特定施設入居者生活介護の指定を受けた、いわゆる介護つき有料老人ホームは、老人福祉法及び介護保険法が適用されます。
介護つき有料老人ホームに対する都の指導監督権限は、介護保険法第二十四条に基づく運営基準や介護報酬請求等に関する指導、重大な法令違反等の疑いがある場合に、第七十六条に基づき実施する監査、監査結果を踏まえた第七十六条の二に基づく改善勧告や改善命令、第七十七条に基づく指定の取り消し等でございます。また、都は、老人福祉法第二十九条に基づく指導及び改善命令等の権限も有しております。
区市町村の指導監督権限は、介護保険法第二十三条に基づく指導、第七十六条に基づく監査でございます。
〇おときた委員 区市町村と都の双方に指導監督権限がありますが、行政処分を行えるのは東京都だけということです。
では次に、具体的な指導、監査、立ち入り等のそれぞれの運用における役割分担を、定期と緊急時に分けてご教示ください。
〇梶原福祉保健局長 都と区市町村は、介護つき有料老人ホームの運営状況等について情報を共有しており、介護保険法に基づき、特定施設として、入居者へ適正な介護サービスが提供されているか、計画的に指導監督を行っております。
その際、都は、老人福祉法に基づいて、有料老人ホームとしての設備や職員配置の状況などの確認も行っております。
事故や苦情など不適切な施設運営等が疑われる場合には、都は区市町村と合同で、介護保険法及び老人福祉法に基づく立入検査を緊急に実施し、指導監督を行っております。
〇おときた委員 つまり東京都は、定期的には指導や検査を実施していないということかと思います。こうした状態では、緊急時には区市町村との連携が特に重要になるかと思いますので、密な連携を期待いたします。
それでは次に、東京都有料老人ホーム設置運営指導指針、こちらをどう活用しているのか、また、この指針どおりにしなかった場合には、どのように対応しているのかをお示しください。
〇梶原福祉保健局長 東京都有料老人ホーム設置運営指導指針は、介護つき有料老人ホーム等の設置や運営に当たり、事業者が遵守すべき事項について都独自に定めたものでございます。
都は、この指針に基づきまして、老人福祉法に定める設置者が施設を設置する際の届け出指導や、事業開始後の運営指導を行っており、指針に適合しない運営が行われている場合には、改善を計画的に行うよう指導しております。
〇おときた委員 こうした行政指導や現場の懸命な努力があっても、残念ながら、全ての事故を防ぐことはかないません。
それでは、万が一の事故が発生した場合、事故報告書の取り扱いの基本的なルールについて、提出されない場合の対応及びペナルティーとあわせてお示しください。
〇梶原福祉保健局長 介護つき有料老人ホームで死亡等の重大な事故が発生した場合、有料老人ホーム設置運営指導指針に基づき、都に報告するよう事業者に求めております。
また、入居者の事故が発生した場合には、事業者は、都の指定居宅サービス運営基準条例に基づき、区市町村等に報告することとされております。
報告すべき事故の範囲については、都が標準例を示し、区市町村が要領により規定しております。
事業者が事故報告を提出しない場合は、提出するよう事業者を指導いたしますが、これに従わないなど適正な事業運営が行われない場合には、都は介護保険法に基づき、勧告や命令等を行うことができます。
〇おときた委員 万が一の場合には、都の権限により勧告や命令まで可能ということがわかりました。
さて、危機や施設の実態を把握し、改善していくためには、利用者やその家族からの声は非常に貴重な情報です。利用者、家族からの相談への対応体制はどのように行われているのか伺います。
また、その相談内容において、重大事案の疑いがある場合の緊急の対応はどのようにされるのでしょうか、あわせてお示しください。
〇梶原福祉保健局長 利用者や家族からの相談については、介護保険の保険者である区市町村や、介護保険法で苦情処理機関として位置づけられている国民健康保険団体連合会が対応し、必要に応じて事業者に対する調査や指導を行っております。
都におきましても、利用者や家族からの相談があった場合は、区市町村等と連携し、調査や指導を行っております。
不適切な運営が疑われる場合には、介護保険法及び老人福祉法に基づき、区市町村と合同で緊急に立入検査を実施するなど、迅速に対応しております。
〇おときた委員 緊急時には、区市町村と合同で立入検査を実施するということがわかりました。
今回は、大枠の一般論としての都の権限、対応指針を確認させていただきました。こちらにのっとって適切な対応がなされているかどうか、引き続き注視をさせていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
それでは、最後の項目として、社会的養護についての質問に移ります。
近年、ドラマやドキュメンタリーの放送で社会的関心が高まり、徐々に改善へと向かいつつある要保護児童への社会的養護ですが、手厚い高齢者福祉などに比べれば、まだまだ不十分な状況です。
まずは、児童養護施設の人員配置、予算措置について伺います。
要保護児童を集団で保護する児童養護施設では、その職員の人員配置の規定は、国によって、子供五・五名対職員一名と定められています。そこに東京都はこれまで独自加算を行い、子供五名対職員一名までの加配を認めていました。これにより、東京都の児童養護施設における児童福祉は大いに増進されたものと高く評価をされるところです。
さて今般、国は、子ども・子育て支援新制度の中で、グループホームなどの家庭的養護の促進、施設の小規模化を進めるために、この職員配置基準の改善を目指し、まずは四対一の割合まで配置することを決定いたしました。これは大きな前進ではありますが、国が目指すグループホーム、小規模室の運営を適切に行うためには、全く不十分な数字です。
グループホームなどは二十四時間の職員の常駐が必要になる運営形態ですので、この配置で忠実に労働基準法にのっとった運営をしようとすれば、アルバイトに頼らざるを得ないという状況が多々発生してしまいます。
児童養護施設の人員不足はたびたび問題になっており、職員の早期退職なども相次ぎ、子供たちに十分な育成環境を提供できない大きな要因ともなっています。
こうした状況を踏まえ、東京都が行ってきた〇・五人分の独自加算は、四対一の配置となり、それが基準として設定した後も継続して行うことが望ましいと考えますが、東京都の見解をお伺いいたします。
〇梶原福祉保健局長 現在、都は、児童養護施設の望ましいサービス水準を確保するため、国基準を上回る職員配置などに係る経費を補助するとともに、グループホームの補助者や助言指導等を行う職員の増配置経費など、独自の支援を行っております。
国は、平成二十三年に社会的養護の課題と将来像を取りまとめ、その中で職員配置の改善等の方向性も示しております。
東京都児童福祉審議会では、こうした国の動きも織り込みながら、今後の東京の社会的養護のあり方について検討がなされ、昨年十月に、人材の資質向上に向けた支援策の強化など、都の施策の方向性についての提言をいただきました。
今後、都としては、この提言も踏まえながら、社会的養護の取り組みを進めてまいります。
〇おときた委員 ぜひとも答申等に基づきまして、子供たちへの手厚い予算配置が継続されることを望みます。
次に、里親委託並びに特別養子縁組の促進についてです。
東京都の施設偏重の傾向と里親委託、特別養子縁組への取り組みの貧弱さについては、先般の一般質問における我が会派の上田令子都議を初め、多くの議員たちが再三にわたって指摘をしている点でございます。
多くの質問に対し、そのたびに東京都は、家庭的な環境のもとで愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましい、まずは養育家庭への委託を検討するなどの答弁はされるものの、その実態は残念ながら遅々として進んでおりません。
特に、愛着関係を形成する上で、最も家庭環境が重要といわれる新生児については、平成二十三年度から二十五年度まででゼロ件、生後一カ月以上のゼロ歳児にまで幅を広げても、たったの四件にすぎないことが資料要求によって明らかになりました。
一方で、里親登録をしながら未委託となっている里親が、東京都には毎年二百件弱、数字にして四〇%も存在しています。最も保護者との結びつきが育まれる生後間もない時期に里親措置ができる可能性が大いにあるにもかかわらず、なぜ新生児の乳児院措置がこれほど多く、そして長いのでしょうか。
先般の上田都議からの同様の質問に対しては、丁寧な対応が必要であり、十分な期間を要すると認識との答弁がありました。ここについて、私が児童養護施設や現場のスタッフに実際にヒアリングを行ったところ、子供に病気や障害があるリスクが存在するという回答などが多く得られました。
場合によっては、施設措置が望ましい場合もゼロではありませんが、障害や病気の有無にかかわらず、子供たちには誰しも、一義的には家庭環境を得る権利があるはずです。
特別養子縁組を前提に慎重な委託をしていると考えるにしても、民法によって六カ月間の猶予期間があります。この検討期間は、一体誰に向けた何のためのものなのかというのを、特に前者を中心としてお聞かせください。
〇梶原福祉保健局長 里親委託の取り組みが貧弱だとは思っておりません。
要保護児童の措置委託に当たっては、児童の福祉を第一に考え、児童の年齢、生育歴、心身の発達状況、保護者の家庭引き取りの可能性など、児童一人一人の状況を総合的に勘案し決定しており、まずは養育家庭等への委託を検討しております。
新生児の場合は、保護者が今後育てる意向があるのか、育てられる状況や環境にあるのか、将来的に子供を引き取る可能性はあるのかなど十分なケースワークが必要でございます。
その上で、養育家庭へ委託する場合には、養育家庭の状況をきめ細かく把握し、委託に向けた交流を重ねるなど丁寧な対応が必要であり、十分な期間を要するものと認識しております。
〇おときた委員 児童相談所の次長まで務められた梶原局長には釈迦に説法かとは思いますが、児童のためであれば、まず何よりも生後間もない時期から愛着関係を形成することが重要であると思います。この視点が、やはりやや欠けているかのように感じます。他国や他県の先進事例をぜひ参考にしていただきたいと思います。
ここに関連して、里親委託や特別養子縁組が進まない理由に、私の調査に対して、児童相談所や現場スタッフの多くが、実親の不同意を挙げました。誰かに自分の子供をとられてしまうかもしれない、だから施設に入れておきたいという実親の感情があることは想像ができますが、事親権が移動しない里親については、これは全くの誤解です。
そもそも社会的養護は、子供のために存在する制度であり、子供が家庭環境を得ることは、我が国も批准した、通称子どもの権利条約によって保障されています。
資料要求したところ、統計的なデータは不存在でしたが、実親の不同意を理由として里親措置が行われないとすれば、それはどのような根拠法令に基づいての判断なのでしょうか、伺います。
〇梶原福祉保健局長 我が国の民法では、第八百二十条で、子に対する親権者の監護及び教育の権利、義務が規定されており、親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うこととなっております。
そのため、児童福祉法第二十七条第四項では、親権者の意に反して施設の入所措置や里親への委託等は行うことができないと規定されております。
諸外国等の制度はさまざまであります。
〇おときた委員 それでは、こちらは確認になりますが、子供のためには、施設より里親がふさわしいと考えられる場合でも、実親の不同意を理由に施設措置を選択される子供たちが一定数いるということでしょうか。
また、同二十八条には、一定の条件のもとでは、親の同意なく社会的養護を、措置方法まで含めて行えるはずですが、こちらを適用して、要保護児童を里親措置することはできないのでしょうか、伺います。
〇梶原福祉保健局長 児童福祉法第二十八条では、保護者が児童を虐待するなど著しく児童の福祉を害する場合、保護者から強制的に児童を分離するため、児童相談所は家庭裁判所に申し立てを行うことができ、家庭裁判所は、虐待等の事実、内容、児童相談所の指導や支援に応じない保護者の態度などを総合的に勘案し、親子分離の是非を判断しております。
実親が養育家庭への委託に同意しないため、施設に入所するケースはございます。こうした場合につきましても、養育家庭への委託を求めて、二十八条の申し立てを行うことは法的には可能でございますが、既に保護者が施設入所を承諾していることから、家庭裁判所はその申し立てを承認しないものと考えております。
また、児童相談所は、児童の将来を見据え、再び家庭で暮らせるよう、親子に対して指導、支援を行う役割も担っており、二十八条に基づく申し立てを行うことは、児童の家庭復帰に向けた調整も困難にすると考えております。
なお、施設入所中の児童につきましても、児童相談所は、保護者等の面会の有無や家庭への引き取りの見通しなどを総合的に判断し、養育家庭への委託を検討しております。
〇おときた委員 ご答弁の中にあったとおり、二十八条第一項の申し立てにより、里親委託は法的には可能であると。ただ、にもかかわらず、これが行使されて、里親委託とされる件数は非常に少ない。東京都は、これは難しいというふうに判断されているのだと思います。
ただ、法的には、社会的養護を選択する中で、里親か社会的養護かを実親が選ぶということのシステムにはなっていないと思いますし、手がかからなくなったら引き取りに行きたいので施設に預けておきたいとか、どう考えても、やはりちょっと、かなり引き取るのは難しいというケースでも、親権をなかなか手放さないということも実際にはあると仄聞をしております。
二十八条申し立ては、深刻な事態にのみ使える最後の手段ではなく、子供が家庭を得る権利を行使するために積極的に活用するべき選択肢はないでしょうか。この申し立てによって、一人でも多くの子供たちに家庭環境が与えられることを強く要望いたします。
さまざまな問題点を取り上げてまいりましたが、とにかく私や、この問題を取り上げてきた全ての議員たちが恐らく申し上げたいのは、里親委託や特別養子縁組、特に新生児からの里親委託、特別養子縁組を進めてほしい、子供たちに家庭を与えてほしいという点に尽きます。
グループホームなどの施設の充実は、現状よりは確かに前進です。しかしながら、これにはパーマネンシーケアなどの概念が欠如しており、ここに注力し過ぎることはボタンのかけ違いです。小規模になることだけではなく、主たる保護者、世話人が容易にかわらない環境を整えてこそ、子供たちに十分な愛着を与えられます。
これはアメリカの医学書、精神疾患の診断・統計マニュアルを初め、多くの有識者が指摘をしており、自明とされるところです。
東京都の長期ビジョンにおいても、詳細版には、里親を含む家庭的養護の割合向上と記載されているものの、そのエッセンスである概略版の内容は、全て施設の充実にかかわることになっており、相変わらずの施設志向が見てとれることを私は非常に危惧をしております。
二年かけて作成された児童福祉審議会の答申内容も、残念ながら、施設を中心としたものです。
また一方、児童虐待死の中で最も多いのは、ゼロ歳ゼロカ月ゼロ日です。生まれてすぐの新生児に対応する、予期せぬ妊娠に対して妊婦のときから対応できる、いわゆる愛知方式、赤ちゃん縁組の仕組みがあれば、こうした悲劇の一部は回避をできたかもしれません。
虐待死の防止のためにも、愛着障害を防ぐためにも、親子の結びつきを強めるためにも、新生児を病院から直接里親委託する方法は極めて有効です。
基本的に、乳児であれば六カ月以上は経過を見るという慎重な対応をしてきた東京都が最初の一歩を踏み出すことは勇気が要るのかもしれません。しかし、新生児を里親措置するこの赤ちゃん縁組の方式をスタートした矢満田氏の著作によれば、赤ちゃん縁組のケースで不調になった例はほぼ皆無であるといいます。
平成二十三年には、ついに厚労省が、この愛知方式、赤ちゃん縁組を有用であると認め、里親委託ガイドラインを定めました。
ここまでの実績があれば、あとは政治的な決断です。家庭的養護を進めていくとの姿勢は、過去の答弁から理解をしておりますし、現状に比べれば確かに前進ではありますが、グループホームや施設の小規模化を、里親等の家庭養護と同列に扱う姿勢は疑問視されますし、施設措置が約九割に及ぶ東京都の現状は、国際的に見ても大変おくれているものと評価をされてしまっています。
家族及び家族に準ずる方との愛着関係が非常に重要であることは、自身の母親の介護が政治家としての原点であるといわれる舛添知事であれば、強く感じておられることではないでしょうか。
児童福祉でも東京世界一を目指す舛添知事には、子供たちに継続的な愛着関係を与える里親委託、特にこの新生児を初めとする里親委託の推進を中心として、さらなる家庭的養護の増進に挑む決意をお示しいただきたく、最後にぜひお伺いさせてください。
〇舛添知事 社会的養護を必要とする子供であっても、家庭的な環境のもとで愛情に包まれながら健やかに養育されることが望ましいと考えております。
そのため、都はこれまで、養育家庭、ファミリーホーム、グループホームなどの家庭的養護を推進してまいりました。
都におきましては、さまざまな事情で親元で暮らせない場合にあっても、子供の福祉を第一に考え、一人一人の状況を十分勘案した上で、まずは養育家庭への委託を検討しております。
都は、平成四十一年度までに、家庭的養護の割合を六割に引き上げる方針でありまして、今後、具体的な方策について、学識経験者等、専門家の意見も聞きながら検討を続けていきたいと思っております。
〇おときた委員 舛添知事本人から、まずは、養育家庭、里親委託を優先するという心強いお言葉をいただきました。やはり、再三の繰り返しになりますが、グループホームなどの主たる世話人がかわる形態と里親委託、特別養子縁組というのは彼我の隔たりがあるというふうに感じておりますので、ぜひこちらを中心として、そして、申し上げました愛知方式、赤ちゃん縁組などにも踏み込んでいただきたいということを最後に意見として申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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