〇おときた委員 みんなの党という立場で質問をするのは本日が最後になるかと思います。よろしくお願いします。
今後、超少子高齢化が見込まれる東京都において、社会保障制度は充実させるだけではなく、その適正化を図ることも避けては通れません。
またその際には、我が国においては金融資産の多くは高齢者層が占めており、貧しい若者から富める高齢者へという不適切な再配分が一部で行われ、世代間格差が拡大していることも必ず念頭に置かなければなりません。
そこで、私からは、まずシルバーパス事業についてお伺いをいたします。
七十歳以上の寝たきり状態を除く高齢者が一定金額で取得ができるシルバーパスですが、この事業規模は平成二十六年度予算で百六十億円超に上っており、高齢化の進展に伴い、その財政負担は毎年三億円から五億円のペースで増加をしています。
さきの第三定例会で可決された待機児童解消のための大型補正予算が約三十七億円だったことを考えると、この予算規模の大きさがよくわかります。
シルバーパスの目的には、高齢者福祉の増進に貢献するとあり、高齢者はシルバーパスがあることによって外出を促されて健康になる、あるいは地域活動への参加や買い物を行う経済効果が発生するとされています。
そういわれれば、なかなかその存在意義は否定しづらいものであり、私自身もその全てを否定するものではありませんが、限られた財政の中で百六十億円という巨額を一部の年代の方々のために投資するには合理的な根拠が不可欠であると考えます。
そこで、敬老パスとしてこの制度がスタートしてから四十年以上が経過した現時点までに、このシルバーパスの効果について定量的な計測が行われているのか、効果を証明するデータがあるのかを伺います。
〇枦山高齢社会対策部長 シルバーパスは高齢者の社会参加を助長し、もって高齢者の福祉の向上を図ることを目的としており、現在多くの高齢者がシルバーパスの発行を受け、社会参加と生きがいの活動に活用されていると認識しております。
毎年度九十万人以上の方がシルバーパスの発行を受けており、十分な支持が得られているものと考えております。
〇おときた委員 利用者数以外に、医療面や経済面では定量的なデータはないということがわかりました。
もう一つ数字について確認します。
東京都からバス協会に支払われる補助金の算出の根拠にもなっているシルバーパスの価格は、一枚当たり二万五百十円です。これは、運賃二百円掛ける月々の乗車見込み十回掛ける十二カ月掛ける共通バスカードの割引率〇・八五四七という計算式で設定されているのですが、この月々の乗車見込みである十回の設定根拠を教えてください。
〇枦山高齢社会対策部長 交通センサス調査により、高齢者がどれぐらいバスに乗るのか調査し、月十回に設定しております。
〇おときた委員 根拠とされました交通センサス調査は全量調査でなくサンプル調査で、以前のものと異なりシルバーパスの利用者についてのデータはございません。現状の月十回というのは、サンプル調査に切りかわる前の平成七年に行われた調査から算出されたもので、最新の状況を反映できていない可能性があります。
現状のシルバーパスの利用状況については独自に計測されるべきと考えますが、シルバーパスの利用実態調査などはなされているのかを伺います。
〇枦山高齢社会対策部長 毎年度九十万人以上の方がシルバーパスの発行を受けており、十分な支持が得られているものと考えているため、利用実態調査の実施は考えておりません。
〇おときた委員 発行枚数を根拠に調査が必要ないというのはなかなか理解が難しいところですが、こちらも定量的な根拠はないということがわかりました。
もう一点、シルバーパスの不正使用についてです。
磁気式が採用され提示のみで利用できるシルバーパスについては、使い回しや他人譲渡などの不正使用の存在が指摘されています。悪質なものになると、再発行を申請して複製しているケースもあるそうです。なお、大阪市などでは、不正使用対策として顔写真つきのシルバーパスへと切りかえ、改革を進めています。
こうした不正使用の検挙件数については、東京都またはバス協会は数を把握されているのでしょうか。
また、全てが複製目的とはもちろん限りませんが、シルバーパスの再発行枚数についてもあわせて教えてください。
〇枦山高齢社会対策部長 バス会社からバス協会へ報告された不正使用の件数は、平成二十六年度が十月までで三件、平成二十五年度は二件、平成二十四年度は五件であり、都においても把握しております。
再発行枚数は、平成二十五年度が一万六百九件、平成二十四年度は一万五百四十七件となっております。なお、再発行の件数は、平成二十五年度につきましては、平成二十五年九月の更新時から平成二十六年九月の更新時までのものであり、二十四年度についても同様の期間となっております。
〇おときた委員 不正使用について把握されている件数はごくわずかなようですが、本日に先立ちまして、私は都営バスの運転手の方にも実際にお話を伺ってまいりました。
難しいながらも、シルバーパスの不正発見に努力されていること、抜本的な対応策がなされていないことに対して現場は相当な苦慮をされているようです。実際の不正使用の件数に関しては、発生件数以上に存在することも推察されます。
ここまで見てきたように、シルバーパスの定量的な効果測定、利用実態の把握、不正防止のあらゆる点からも、シルバーパスには改革が必要なことは明らかであるといえます。
そして、現在の技術では既にこの多くを解決することができます。それがシルバーパスのIC化です。既に都営交通の無料乗車券にはICカードが存在しますから、技術的な課題はクリアをされています。ICカード化されたシルバーパスは、その利用実態や利用経路の把握が容易ですし、この記録と医療の記録を突き合わせれば、少なくとも福祉、健康面では定量的なデータを取得することが可能です。
ICカード化をして、その実態と効果を見きわめ、時代の要請や実情に応じて利用者負担などを含めて適正化をしていくことが望ましいと考えますが、その見解を伺います。
〇枦山高齢社会対策部長 現行のシルバーパスは磁気式で、利用交通機関により乗務員等に提示するか、自動改札機に投入して乗車する方式になっており、高齢者に広く定着しております。
ICカードで、現行のシルバーパスのように、都内全域の路線バスでフリーパスとして乗車できるようにするには、シルバーパス独自のシステム開発が必要になるほか、各バス事業者においても、システム改修や車載器の改修、交換が必要となるなど、さまざまな経費がかかります。
また、バスの更新時に、これまでのように単純にカードを交換するだけでなく、利用者個人がチャージしている金額データも含む書きかえが必要となるなど、事務手続に課題があると考えております。
〇おときた委員 利用方法に関しましては、高齢者の方がICカードを使いこなすのは難しいというニュアンスも含まれているのかと思います。いきなり全てのシルバーパスをICカードに切りかえなくても、実態調査のために試験的に一部の方々にお願いする方法も考えられます。
また、コストを含めさまざまな課題があるとのことですが、毎年百六十億円もの予算が使われる事業ですから、改善への経費や事務手続については、それぞれのコストを算出し具体的な数値をもとに導入の検討をするのが当然かと思います。
それぞれの課題について具体的な検証は行われているのでしょうか、伺います。
〇枦山高齢社会対策部長 現行のシルバーパスのICカード化に向けては、シルバーパス独自のシステムの開発に加え、新たにさまざまな経費がかかるほか、事務手続に課題があると考えております。
こうしたことから、現段階ではシルバーパスのICカード化は検討しておらず、経費の試算も行っておりません。
〇おときた委員 経費がかかる、課題があるから試算を行わない、検討は行わないという理論にはいささか理解しがたいものがございます。こちらの事業については、効果を証明する定量的データがなく実態すらわからないまま多大なる予算が執行され続けているものという理解をいたしました。
繰り返しになりますが、超少子高齢化を迎える東京都においては、社会保障費の適正化は避けて通ることは決してできません。仮にシルバーパスのIC化が実現し、医療の受診データともひもづけられるようなシステムが実現すれば、今後の医療、健康増進に大きく貢献するビッグデータを収集することができますし、必要な人に必要な分だけの社会保障が与えられる仕組みの構築にも寄与されます。
こうした時代と技術の流れは誰にもとめることはできませんし、早晩この形は必ず変わっていくはずです。実態に合わせた適切な運用、社会保障制度の適正化、世代間格差是正のあらゆる点からも、早急にこのシルバーパス制度については見直しと検討を行うことを強く要望いたしまして、次の質問に移ります。
次に、東京都の児童養護施設に係る事業についてお伺いいたします。
さまざまな理由から社会的養護が必要な児童たちが生活する児童養護施設ですが、近年の虐待の顕在化などの環境変化も受けて、現在も東京都が所管するだけで三千人以上の児童がこの施設で暮らしております。
将来を担う児童たちの健やかな成長を願うばかりでありますが、しかし、施設出身者の現状は非常に厳しいものがあります。進学率や就労後の正社員比率は低く、生活保護受給者に転落してしまうことも少なくありません。適切な生活環境と学習指導などがあれば、社会の担い手として成長する可能性のある子供たちですから、この分野への投資は惜しむべきではないと考えます。
改善できる点は多岐にわたりますが、注目されるのがその自立の支援です。東京都が平成二十二年に独自に行い、平成二十三年に公開された施設出身者へのアンケート調査は、この分野では珍しく貴重な定量的なデータですが、幾つもの項目で、自立の際に適切な相談相手がいることの重要性が示唆をされています。退所の前後に適切な指導、相談を受けられた児童たちは、その後の就労や進学にポジティブな結果を残しているのです。
まずはこの入所児童たちへの自立支援の充実に向けて、東京都が行っている取り組みについてお伺いいたします。
〇松山事業推進担当部長 児童養護施設等に入所している児童が施設を退所後、社会で自立し安定した生活を送るためには、入所中はもとより退所後においても必要な支援を継続していくことが重要でございます。
そのため、都は児童の社会的自立を支援するために、適切な就業環境の確保や、職場開拓、面接等のアドバイス、事業主からの相談等を含む就職後のフォローアップを行う就業支援事業を実施しております。
また、退所した児童に生活や就学の支援などを行う施設に対し独自の補助を行うほか、学校やハローワーク等との関係機関とも連携し、入所児童の自立支援や進学に向けた準備から退所後の相談支援を行う自立支援コーディネーターを配置するなど、自立支援に向けた取り組みを実施しております。
〇おときた委員 さまざまな取り組みの中で、特に、最後に述べられました自立支援コーディネーターの配置は、定量的データに裏づけられた適切な政策であり、全国に先駆けた先進的で画期的な取り組みです。
しかしながら、ここにはまだ改善の余地があります。現在の事業内容を見ますと、この自立支援コーディネーターの配置は一施設につき一名となっています。つまり二十名から三十名規模の施設でも、百人を超える大規模施設でも、同じく自立支援コーディネーターは一名の配置となってしまいます。
実際、私が視察に訪れた大規模施設でも、児童の自立支援やアフターケアに時間と人員を割きたいが現実的には難しいという相談が多く寄せられました。
この先駆的な事業を、施設の定員に応じて十分に配置できるよう早急に前に進めるべきと考えますが、今後のご対応についてお伺いいたします。
〇松山事業推進担当部長 自立支援コーディネーターを配置している施設は、事業開始時の平成二十四年度は三十七施設でありましたが、本年十月現在、対象施設の約九割の五十二施設に配置され拡大してきております。
児童の自立に向けた支援は自立支援コーディネーターが単独で行うものではなく、施設職員と協働し関係機関との連携を図りながら実施するものであります。
今後とも、対象となる全ての児童養護施設に自立支援コーディネーターを配置する取り組みを進め、社会的養護のもとで育つ子供たちの自立を支援してまいります。
〇おときた委員 まずは各施設に一人ずつのコーディネーターを配置完了することが先決とのご答弁であったかと思います。社会保障を適正化し、選択と集中によって必要なところに投下をしていくとすれば、真っ先に考えるべきは将来を担う子供たちです。ニーズと効果が明白なこの自立支援コーディネーター事業については、早急に定員比に応じた配置へと進めるように強く求めまして、次の質問に移ります。
次に、医療的ケアが必要な障害児に対する療育、保育の関連事業についてお伺いいたします。
重症心身障害児につきましては、ほかの先生方のご指摘と重複する部分もございますが、ご容赦ください。
医療技術の進歩によって、従来であれば幼い命を失っていた障害児たちも、その多くが人生を全うすることが可能になりました。これはまことに喜ばしいことでありますが、この変化が新たな課題もつくり出しています。
重度の障害や医療的ケアが必要な障害児を授かった家庭は、そのときから、残念ながら就労などの生活に著しい制限がかかる場合が多く存在します。
そこでまず、通常の障害者施設を利用するのが困難なほどの重い障害、いわゆる重症心身障害児及びその家庭に対しては、現状では東京都はどのような在宅支援を提供しているのかを伺います。
〇高原障害者施策推進部長 都では、重症心身障害児者が安心して在宅生活を継続できるよう、障害児者本人とその家族に対しての支援を行っております。
具体的には、施設における支援としては、重症心身障害児者の日中活動の場を確保し、必要な療育支援を行う通所事業や、保護者の事情などにより施設等に短期間入所し、入浴、排せつ、食事等の介護等を行うための病床を確保する短期入所事業を実施しております。
また、家庭における支援として、看護師を派遣し、看護技術の指導や療育相談を行う在宅療育支援事業や、訪問看護師が自宅に出向いて一定時間ケアを代替することで家族の休養を図る在宅レスパイト事業等を実施しております。
〇おときた委員 現時点で重症心身障害児が利用できる支援のメニューは、本人の医療的育成を目的とした療育であるのが前提ということかと思います。つまり、あくまで施設などを利用するのは障害児本人の療育のためであって、休養を図るレスパイトなどの一部事業はあっても、保護者の就労などを支援することではありません。もちろん障害児本人のことを考えれば、この制度思想は理解ができます。
しかしながら、現在は家族のあり方、働き方も大きく変化をしており、特にここ東京都では共働きでないと家庭を維持することがだんだんと難しくなってきています。就労などを継続できなくなった家庭は、その経済的、心理的負担から離婚、一家離散してしまうケースもあると耳にしています。
子供のためを思っての療育政策が家族への支援という考えを排除することで、結局はその子供のための家庭環境を壊してしまうことが現実に存在をしているのです。通常の保育サービスや障害者施設を利用できない障害児に対しては、その療育も、就労など家族への支援を視野に入れた形で提供するべきではないでしょうか。
例えば、児童発達支援における延長支援加算という制度がございます。これは、営業時間が八時間以上の営業所がその前後の時間において支援を行った場合、一日の延長支援に要した時間に応じて加算がされるもので、この規定は利用者個別のニーズに合わせたサービス利用時間に対応するため、通所による利用者に限り八時間を超える利用を評価すると記載があります。
ところが、この加算を具体的に東京都に届け出る際には、延長により療育を行うことが児童の発達にとって必要と認められるように、個別支援計画を添付しなければなりません。これは制度では利用者個別のニーズとしながらも、事実上は児童の療育、発達支援のみにその用途は限られてしまい、就労や家庭の事情で営業時間の前後に子供を預けたいという保護者へのニーズには応えることができません。
こうした点を柔軟に運用し、障害児の家庭環境を守ることも広義の療育とした行政支援へと時代や環境に合わせて対応を変えていくのが望ましいと考えますが、東京都の見解をお伺いいたします。
〇高原障害者施策推進部長 児童発達支援は、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業として、障害のある児童に対し日常生活における基本的な動作の指導、知識、技能の付与、集団生活への適応訓練等の療育を行うことを目的としております。
また、当該事業においては、児童の発達を支援するため、お母さんなどその家族に対しても、その相談に応じ必要な助言を行うとともに、親子での通所等を通じて児童の障害の受容や、その状況の理解の促進、日ごろの育児に関する指導など、さまざまな支援を行っております。
児童発達支援等の障害児支援の事業においては、当然に利用者とは親ではなくあくまで児童本人であり、家族への支援も児童本人の成長発達の観点から、例えば利用時間なども、その障害特性や病状管理等に非常に慎重な対応を要するといった心身の状況等を踏まえて行われるのは当然であります。
そのため、延長支援加算についても、国の基準において個別支援計画に基づくこととされており、その算定に当たっては、当該計画の内容から児童本人のニーズについて個別に判断を行っていくべきものというふうに考えております。
〇おときた委員 障害児の支援の事業においては、利用者とは当然のことながら児童本人のため、家族への支援は一部対象外になり、そして個別のニーズに応じてその支援を行っていくとのご答弁でした。
しかしながら、厚生労働省が設置した審議会、障害児支援の在り方に関する検討会においても、本年七月に提出された報告書、今後の障害児支援の在り方についての中で、保護者の就労のための支援の重要性も指摘しています。共働き世帯が多い東京都こそこうした流れにいち早く対応し、また国の制度の転換も率先して働きかけるべきではないでしょうか。この点を強く要望しておきます。
療育に関連しては、もう一点、重症心身障害児の枠組みに入る障害児に関しては、これまでのやりとりで出てきたような支援事業が受けられるわけですが、現在は医療の発達により、医療的ケアが必要で通常の障害児施設を利用することは難しいながらも、重症心身障害児というカテゴリーには入らない子供が存在します。
東京都では、重症心身障害児を大島基準に基づいて判別しており、立ち上がって動くことのできる障害児は、医療的ケアが必要なほど重度な障害を持っていても重症心身障害児には入りません。すると、重症心身障害施設で対応してもらうことができず、知的障害児や肢体不自由児の施設では医療的ケアがあるから入れないといわれ、行き場を失うケースがあることを多く耳にします。このような制度のはざまに落ちてしまう医療的ケア必要障害児に対して、東京都はどのように考え対応しているのでしょうか、伺います。
〇高原障害者施策推進部長 医療的ケアが必要な障害児について、入所による支援を要する場合には、福祉サービスにあわせて治療を行う医療型障害児入所施設において支援を実施しております。
また、通所による支援を要する場合には、障害児通所施設または事業所において支援を実施しており、そのうち就学前の乳幼児については、医療型児童発達支援センター、福祉型児童発達支援センター、児童発達支援事業所において対応しているところでございます。
〇おときた委員 医療型の対応事業者や施設によって対応しているということかと思いますが、やはり重症心身障害児が利用できる施設に比べて、それらの施設はキャパシティーに明白な限界がございます。
医療的ケアが必要な児童は、症状によって必要な対応が異なり、重症心身障害児用の施設では対応できても、地域の施設では対応できないケースが発生されることも想像されます。こうした実態把握に努め、医療的ケアが必要な児童全てが支援を受けられるように制度の見直しについては強く求めます。
以上は療育施策の観点からいろいろと申し上げましたが、とにかく現実に発生しているのは医療的ケアを必要としている障害児とその家庭が、保育というサービスから事実上排除されているという問題です。行政や事業者側がどれだけ療育だと考えてサービスを提供していても、それを事実上の保育として利用して、就労しなければならない保護者たちが現実に存在しています。
これは制度と現実が乖離をしている極めていびつな状態ではないでしょうか。このような状態を解消し、どんな障害を持っていても、持っていなくても、ひとしく保育サービスが受けられるよう東京都はあらゆる手だてを尽くすべきです。
この課題に対して、東京都はどのように対応していかれるのかを伺います。
〇手島少子社会対策部長 医療的ケアを必要とする障害児が保育サービスを利用するに当たりましては、障害の程度やケアの内容、施設側の受け入れ体制、対応能力等に鑑み、保育の実施主体である区市町村がそれぞれ個別の実態に応じて慎重に判断をしております。
都におきましては、障害児に対する保育サービスが適切に提供されるよう、区市町村が行う職員研修への補助や、都独自の子育て推進交付金、保育所における障害児の受け入れに必要な施設改修経費補助などにより、区市町村を支援しております。
また、障害児に対する指導経験がある指導員等が保育所を訪問し、専門的な支援を行う保育所等訪問支援が平成二十四年度から児童福祉法に位置づけられ、現在、十区市の十一事業者によって実施をされております。
都といたしましては、こうした取り組みにより、今後とも区市町村を支援してまいります。
〇おときた委員 東京都が区市町村のさまざまな取り組みをバックアップされていることがわかりました。
しかし、実施主体である区市町村が判断、そこに対する支援を東京都は行っているということですが、医療的ケアが必要な障害児の受け入れに対しては極めて消極的なのが実情といえます。重度の障害児の受け入れに関しては、明白な加算など東京都独自の施策を検討し、事業者側の受け入れ促進を図ることを強く望むものです。
繰り返しにはなりますが、医療的ケアが必要な障害児をお持ちの保護者が困窮しているという事実が問題解決への立脚点になるべきです。ここにおいては、療育、保育という区分を超えて、問題の事象そのものに対して本質的な解決策が検討されることを要望いたしまして、次の質問に移ります。
次に、子育てに関してもう一点、東京都子供・子育て会議について伺います。
子供・子育て会議は、来年四月の子ども・子育て支援新制度への本格施行に向けて、東京都子供・子育て支援事業支援計画、仮称でございますが、この策定のため、さまざまな分野の有識者等で構成する委員から意見を聴取している会議体です。
この会議には毎回、複数の委員から意見書がペーパーで提出をされています。私も何度か会議を傍聴しておりますが、限られた時間の中で、会議の場で取り上げられた意見については東京都の見解がその場で示されるものの、残念ながら言及されなかった意見も多く存在します。委員はそれぞれ第一線で活躍されている方々であるので、傾聴に値する意見も多いと思います。
そこでまず、子供・子育て会議の中で委員から提出される意見書については、東京都の中でどのような扱いになっているのかを伺います。
〇手島少子社会対策部長 現在、東京都子供・子育て会議は、子ども・子育て支援新制度の着実な施行に向けて、実施主体である区市町村の取り組みを支援する計画を策定することを目的に、委員の皆様から幅広くご意見を頂戴しております。計画策定に当たり、必要な委員の意見につきましては、十分に尊重すべきものと受けとめております。
また、委員から、会議に欠席する場合や、口頭での説明だけでは趣旨が十分に伝わりにくい場合などに意見書が提出された際には、会議資料として配布をし、都のホームページにおいても公開をしております。
〇おときた委員 委員の意見は公開されるとともに十分に尊重しているとのことでした。
それでは、意見書に対する東京都の見解や回答は、提案した委員には個別にしっかり伝わっているのかを伺います。
〇手島少子社会対策部長 意見書の内容が東京都の事業に関する質問である場合など、委員から回答を求められた場合には、会議の内外を問わずできる限りの対応をしております。
〇おときた委員 都としてはできる限りの対応をしているとのご答弁でした。
しかしながら、提案した委員の中には、せっかく毎回提案書をつくって提出しているのに、会議で言及されたこと以外には何らリアクションがないという意見もあり、都側との意識に温度差があるように感じられます。
実際、その意見の中には単純な認識のすれ違いだったケースもあり、それがそのままにされて日程が進行している状態も見受けられました。
貴重な知見をお持ちの委員の方との信頼関係をしっかりと築くためにも、円滑な計画策定のためにも、今後はより一層丁寧なコミュニケーションを行うべきと考えますが、これからの対応をお聞かせください。
〇手島少子社会対策部長 子ども・子育て支援新制度の着実な施行に向けて、これまで会議の委員から頂戴いたしましたご意見につきましてはしっかりと受けとめ、都の計画策定を進めてまいります。
今後とも、委員の意見書につきましては、その趣旨を確認し適切に対応するなど、委員の皆様とのより一層丁寧なコミュニケーションを図ることにより、会議の円滑な運営に努めてまいります。
〇おときた委員 今後はより一層丁寧なコミュニケーションに向けて努力されるとのご答弁をいただきました。
今後もこの会議は長く続いてまいります。テーマは多岐にわたると思います。例えば、二十四時間保育が子供のためになるのかどうか、そういった複雑なテーマに関しても専門委員の方々と意見を交わさなければならないです。
今後は、東京都子供・子育て会議の委員の方々との信頼関係をいま一度しっかりと築き、子ども・子育て支援新制度の円滑な施行に向けて、実施主体である区市町村の取り組みをしっかりとバックアップできるよう、都の計画策定を着実に進めていただきますことを求めまして、次の質問に移ります。
最後のテーマになります。
次に、東京都における受動喫煙対策事業について伺います。
二〇二〇年にパラリンピック・オリンピックを控える東京都においては、これまで以上に受動喫煙防止が重要になることは論をまちません。
一九八八年カルガリー冬季オリンピックから、たばこのないオリンピック、たばこフリーオリンピックがスタートし、二〇〇〇年代には五輪開催都市は受動喫煙防止法あるいは条例のある国、都市で開催することが慣例となっています。
世界各国の潮流を見ると、G8で屋内施設が禁煙でないのは日本だけであり、いわゆる先進国、G20の大半を含む全世界四十四カ国が既に屋内禁煙を実現しており、我が国の受動喫煙に対する意識の低さと対応のおくれは明らかです。
しかしながら、ここ東京都では、いまだに屋内禁煙はおろか分煙すらも徹底されておりません。これは一例ですが、東京都を象徴するここ都庁においても、建物内に多くの喫煙所が存在します。第一庁舎二十五階の喫茶店や、三十二階の職員食堂、そして三階の渡り廊下など、多くの来庁者が受動喫煙のリスクにさらされています。
つけ加えれば、ここ都議会議事堂には建物内にたばこの自動販売機まで設置されており、時代錯誤も甚だしいといわざるを得ません。
吸う側にももちろん自由や権利があるというのは確かでございますが、分煙では完全に健康被害を防ぐことはできません。飲食店などの利用者同士はもちろんのこと、もっと深刻なのは従業員です。座席や居場所を選べる利用者と異なり、従業員は勤務場所を選ぶことができません。
日本禁煙学会が行った調査によりますと、喫煙室を設けている飲食店勤務の従業員や建物内に喫煙所を設けている施設の清掃員たちに対しては、深刻な受動喫煙の影響が検出されています。
このような実情の中、去る八月に舛添都知事が禁煙条例にも言及し、受動喫煙対策に強く意欲を示したことは高く評価されるものであり、我が会派としてもその意見を全面的にバックアップしていく所存でございますが、受動喫煙防止対策を進めている福祉保健局として、東京都の受動喫煙防止策への現状の見解と今後の対応についてをお伺いいたします。
〇笹井保健政策部長 都はこれまで、受動喫煙防止ガイドラインも策定し、都民の理解促進はもとより、区市町村や企業に対する研修会の開催や、職場向けハンドブックの配布など、受動喫煙の健康影響や職場の環境整備に関する普及啓発を行ってまいりました。
また、飲食店等に対して分煙方法を紹介するリーフレットや、店内の禁煙あるいは分煙の取り組み状況を店頭に表示するステッカーを配布し、事業者の取り組みを促しております。
都はこうした取り組みをさらに進めるため受動喫煙防止対策検討会を設置し、禁煙や分煙等についてのさまざまなご意見をお持ちの有識者や、飲食、宿泊、たばこ関連の事業者や消費者団体などから幅広くご意見を伺うこととしており、先月二十九日、第一回会議を開催いたしました。
今後、検討会での議論も踏まえ、受動喫煙防止対策に取り組んでまいります。
〇おときた委員 従来の対応に加えて、十月末からは受動喫煙防止対策検討会が設置されて、それが重要な意味を持つことがわかりました。
では、次に、その受動喫煙検討会の委員選定についてお伺いをいたします。
委員の中には、医学的な知見から医師の方も委員となっておりますが、うち一名の方の所属は日本医師会となっています。東京都が行う検討会において医師の意見を伺うのであれば、東京都医師会に委員をお願いする方が自然かとも思えるのですが、この委員選定の基準についてご説明ください。
〇笹井保健政策部長 検討会の委員については、禁煙や分煙など、さまざまな意見、お立場の有識者の方々から幅広くご意見をいただくことができるよう委嘱しております。
なお、検討会の中では、都内のさまざまな関係団体からもご意見を伺うことを予定しております。
〇おときた委員 地域にはこだわらず、さまざまな立場の有識者を選んでいるということかと思います。しかしながら、地域団体の声も検討会の中でしっかりと取り入れていく旨を答弁していただけました。
東京都医師会は、医学的見地から禁煙宣言をはっきりと掲げ、内部にタバコ対策委員会を持つなど積極的に受動喫煙防止対策を牽引してきた存在です。東京都が行う検討会ですから、検討会の内外でも、ぜひともこうした意見も取り入れていただきたいと思います。
繰り返しになりますが、東京都の受動喫煙の防止対策は、科学的見地からも国際的な比較からも非常に後塵を拝しているといわざるを得ない状況です。二〇二〇年東京五輪というこの上ないきっかけを生かし、屋内完全禁煙の条例制定も視野に入れた、可及的速やかな対策を検討していただくことを強く要望いたしまして、私からの質問を終わります。ありがとうございました。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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