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6月に経営破綻した病院に、東京都が7月から3000万円の高性能医療カーを配備している件

都議会の話

昨日・今日で厚生委員会の質問マラソンも終わりました。
普通の委員会質問は、会派の代表者が1名ないし2名だけ発言するのですが、

写真 1

さすがに議会の花形、厚生委員会。
委員長を除く委員全員が質問に立つという…。(委員長は職責上質問ができません)

写真 2

質問時間、トータル8時間!
議員や答弁者も大変ですが、発言の出番もないのに部屋中に待機している
課長クラスの職員さんたち(40人くらい)が一番かわいそうだと思う…。

これ、もうちょっと出席義務を緩和できないものかなあ。
波乱は都議会ではほとんどないし、あれば暫時休憩にして、担当者を呼びに行けばいいのにね。。

さて、私からも二日間で色々と質問をしましたが、
本日ご紹介するのは「DMATカー」について。

災害派遣医療チーム、通称「DMAT」はドラマや漫画などで一躍有名になりました。
東京都では国に先駆けて、平成16年にこのチームが創設されています。

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そしてこの部隊に肝いりで平成23年から配備されたのが、「DMATカー」です。

tokyo201205
画像引用元

隊員4名が5日間連続活動可能な野営機材や、自動追尾型の衛星電話なども完備し、
災害地で長時間の活動にも耐えられるスーパーレスキュー医療車両です。

そのお値段、なんと一台3,000万円!さすが東京都、財力がありますね…
これを平成23年~24年にかけて、25台のDMAT指定病院に配置しました。

まあこういうものは、災害時の緊急用ですから、
出番がないというのはある意味、喜ばしいことです。
ですが本業で出番がないからと言って、眠らせておいていいものでもありません。

では平時はこの高性能なDMATカーが何をしているのかというと…
ほとんど「何もしてない」状態なんですね。困ったことに。

訓練や地域イベントを合わせても、配備から1年8か月で出動回数は100回弱(25台合計で!)。
そして最もその稼働率の低さを物語るのが、DMATカーの平均走行距離です。
なんと年間で、たったの680km!

スクリーンショット 2015-03-19 20.45.31

平成16年度のものと少し古いですが、
参考までに年間平均走行距離は自家用乗用車なら10575km、事業用乗用車なら63133kmです。
ある程度走っておかないと、車のメンテナンス上も大変よろしくありません。

その一方で…救急医療の場では「病院間転送(転院転送)」が問題になっています。
救急車で、病院から病院へと患者さんを運ぶことですね。

救急車の出動回数は平成21年から増え続けており、
平成21年には出動から到着までの平均時間が6分18秒から、
平成24年には平均7分35秒へと1分17秒も伸びてしまっています

1分到着が遅れれば命に関わることも多々ありますから、
救急現場のリソース不足(救急車不足)はまさに深刻な状態です。
そこに加えて、病院から病院への転送にまで救急車が使われるわけです。

重篤な患者などでやむえないケースもありますが、
「どうしてもという場合以外は、病院は救急車を使わないで下さい!」
という内容の通達が、東京消防庁から都内の各病院には出されています。

そこで注目されているのが、このDMATカーです。
これだけの医療器材を積み、出番がない状態で病院に待機している。
そうなれば当然、医療関係者や有識者から

「DMATカーを転院転送に使って、救急隊の負担を減らすべし!」

という意見が挙がってくるわけです。
ところが配備されている病院側は、

「いつでも出動できるようにしておくために、救急車両としての利用は困難」
「防振寝台が付いていないなど、患者の輸送には不向き」
「東京都の担当局がガイドラインを出してくれないと…」

といった具合で非常に後ろ向き。
じゃあ東京都の担当局はどうかというと

「業務に支障のない範囲で、各病院が柔軟に運用することは認めている」
「適正な範囲内で、各病院が有効に使ってほしい」

といった見解で、まさに典型的な責任の押し付けあいとなり、
配備から3年たった今もルーズボール化しているのが、このDMATカーなんですね。

しかしながら。

この指摘は以前にも我が会派の両角幹事長が一般質問で取り上げていますし、
正面から再び指摘してものらりくらりとかわされるのがオチです。

そこで今回わたくしは、一つの突破口を準備しました。
それが、とある病院に配備されているDMATカーです。

「DMAT指定病院」25か所に配備されているDAMTカーですが、
このDMAT指定病院になる条件は

1.救命救急センターを有する病院(つまり大病院)
2.または、上記に準じた機能を有する病院
3.その他知事が必要と認める病院

となっており、25中23病院までが救命救急センターを有する大病院です。
残り2つだけが例外なのですが、

「どうしてここが指定されているの…?」

とやや不思議に思われる病院がありました。
病床数は200床程度で、他のDMAT指定病院に比べると規模的にも小さいように思えます。
※利用されている方々を不安にさせることが目的ではないので、ここでは名前は伏せておきます

で、この病院にDMATカーが配備されたのが平成24年なのですが、
この病院の運営母体は実は、平成24年6月に破産しています。
ところがDMAT指定病院は解除されず、高価なDMATカーもそのまま配備されている。

理由を質問したところ、「新しい運営主体が問題なく引き継いだことを確認した」との答弁でした。
じゃあいつそれを確認したのかを続けて問いまして、時系列にまとめるとこうなります。

平成24年6月6日 運営母体が経営破たん
平成24年7月1日 新しい運営者が引き継ぐ
平成24年7月1日 東京都、継続性を確認してDMATカー配備へGo!サイン

…え?

民間の事業であったら、事業内容がそのままでも運営主体が変わったとしたら、
きちんと継続がされるか1年くらい様子を見るのが普通ではないでしょうか?
にもかかわらず、書類上の引き継ぎだけで、DMATカーをそのまま配備したわけです。

そしてこの病院に配備されたDMATカーの運用実績は、
平均値をさらに下回る走行距離約450km、出動回数7回。

経営破たん前から本当にDMATカーの配備にふさわしい病院だったのか、
その後も高価なDMATカーの運用ができる能力を持っているのか。
この結果からは少々、いやかなり疑問と言わざるを得ません。

この一事からも東京都が、DMATカーに対する管理・運営に対して、
あまり積極的ではないことがわかるのではないでしょうか。

こうした具体例を突き付けながら、
DMATカーの運用見直しを提言したのが私の質問の一つです。

「DMAT運営協議会など、有識者の意見を参考にしながら検討していく」

との答弁までしかもらえませんでしたが、
まあ普通に聞くだけよりはインパクトがあったことでしょう…おそらく。。

長くなりましたが、こうした細かい調査をしてファクトを集めて、
なんとか現場を動かしていく緻密な作業が議会質問だったりするわけですね。
そんな議会活動の一端を知っていただけますと幸いです。

休む間もなく、明日の委員会でも発言があるので準備準備!
他の質問についても、折に触れてご紹介していきます。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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