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「小さな子どもは、自分で意思決定できない」→だから無視、が許される国で。

政策, , ,

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員です。

私どもの主催する児童養護イベントが今週末と迫りまして(後述)、
本日はまた児童福祉に関わる話題をば。

社会的養護・児童養護に関する過去記事はコチラ。
http://otokitashun.com/tag/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E9%A4%8A%E8%AD%B7/

我が国の児童福祉が「声なき子ども」たちを無視し、いわゆる
「大人の都合」であらゆる意思決定を行いその人権を侵害していることは
過去記事で再三に渡り指摘をしている通りです。

最近も色々な行政部門と折衝をしていると、

「先生、当事者の声を聞くと言っても、小さな子どもは意思決定できませんから…

と諭されることがあります。
別に彼らは嫌がらせではなく、本気でそう思って言ってますし、
これは一般的な日本人の通念ともおそらく合致します。

小さな子ども(12歳くらいまで?)は、最適な判断をすることができない。
だから親や保護者、社会的養護においては児童福祉司が代わりに意思決定を行い、
子どもたちに最善の生活環境を提供する…。

この一見すると何気ない考え方が、「子どもは親(大人)の従属物」という価値観を醸成させ、
大半の子どもたちが親や行政側の都合によって家庭を得る権利を奪われ、
施設での生活を余儀なくされてきました。

加えて、

「虐待などを受けてきた子どもたちは、嘘をつく傾向にある(から信用できない)

というのも、児童福祉関係者の中でまことしやかに語られてきたところです。
心に傷を追ってしまった子どもたちの闇は深く、「親だめし」と言われる問題行動を始め、
多くの施設関係者や里親当事者がその行動に手を焼くことは事実かもしれません。

しかしこれらの理由をもって、
「当事者=子どもたちの声」を聞く努力を放棄してしまうことは
果たして正しいのでしょうか。何か、改善策はないのでしょうか。

もちろん、あります。

日本と同じく施設中心であった児童養護から近年、里親委託へと舵を切り、
児童養護全般の待遇の改善が進むイギリスの事例を見てみましょう。
イギリスでは1976年、世界で初めて

「社会的養護における当事者関与(Who cares?)会議」

というものが開催されました。

これは社会的養護の当事者(=要保護児童)の中で意見表明ができる年齢になった人間、
あるいは「元要保護児童」である施設・里親卒業生などが参加者となり、受けている、
もしくは受けていた社会的養護について自ら意見表明を行うという画期的なもの
でした。

「子どもたちの意見は、大人たちが代弁できる」

という思い込みを取り払って行われたこの会議では、
当事者ならでは視点から様々な意見が飛び交い、その後の社会的養護の
政策決定と改善に大きな影響を及ぼしたとされています。

現在、イギリスでは民間団体が組織する当事者団体・会議体の他にも、
各自治体に要保護児童をメンバーとする公式機構である「養護児童議会」が設置され、
当事者による政策決定への直接関与がシステム化されています。

そう、小さすぎる子どもたちの声が聞けないというのであれば、
かつてその立場であった本人たちから意見を聴取すれば良いのです。

確かにリアルタイムでの問題解決には結びつかないかもしれませんが、
その意見は現場の待遇改善に大きく役立つことは間違いありません。
我が国ではイギリスから遅れること1988年に、

「全国児童養護施設高校生交流会」

という、施設に暮らす高校生たちの意見交換会が開催され、
施設や自治体毎の待遇の違いや問題点・課題などが浮き彫りになり、
要保護児童たちの権利意識向上にも寄与したと言われています。

ところがこの高校生交流会は第9回を最後に、
全国児童養護施設長会議の決定によって中止されてしまいます。

これは施設運営者たちが当事者の意見を恐れたゆえの反動とも言われており、
要保護児童たち当事者による改善提言は尻すぼみになってしまいました。

参考文献:この国の子どもたち―要保護児童社会的養護の日本的構築

余談ですが、かつて児童養護施設を舞台としたテレビドラマ

スクリーンショット 2015-08-17 15.50.16 (2)
「明日、ママがいない」
http://www.ntv.co.jp/ashitamama/

は児童福祉関係者、特に児童養護施設関係者からの強いクレームで有名になりました。
ドラマの中では児童養護施設は暗く高圧的なところとして描かれ、主人公たちは
「家族を得て」そこから脱出することをゴールとして描かれたからです。

しかしこのドラマの評価に関しては、
施設関係者の大人側と施設出身者の子ども側で賛否が全く異なる点が指摘されています。

「明日、ママがいない」騒動で耳を傾けるべきは施設出身者の声
http://blogos.com/outline/78173/

児童福祉に関わる大人たちが「差別や偏見を助長する」として恐れたシーンも、
当事者≒元子どもたちの多くが

「その通りではないか!」
「現実から目をそむけるな、それでは何も改善しない!」

と声を上げた事実に、我々は注目しなければならないでしょう。

参考:「明日、ママ」全国児童養護施設協議会の会見について
http://ameblo.jp/ganbare-sisetu/entry-11762527096.html

最初に一言。 怒ってます。

第一話と記者会見とを見ましたが、正直この会見って子どもをダシに使ってない?
という感じを受けてしまったのは気のせいでしょうか。

まず全養協。
あなた方は、私が施設に居た当時の酷い施設の実態も知っていたはずです。
暴力が横行して、恩寵園のような事件をおこしたような施設が、大半を占めていた時代。
子どもたちの為と言って、何かをしてくれましたか?
都合のいい時だけ、子どもたちの為などと言った言葉を使わないでください。
実際、酷い施設長がいなかったわけではないでしょう。
「お前たちは税金で食べさせて貰っているんだ!」
こういった言葉を職員に言われた子どもは、私以外にも沢山いるはず。

(後略)

票もお金も力もない子どもたちは、政治的に無視されて当たり前…
そんな横暴がまかり通ってきた我が国ですが、

「小さな子どもは、自分たちで意思決定できない(から、話を聞く必要はない)」

という考え方は、明確に間違ったものと言えます。
他国はもちろん我が国でもかつては当事者が政策に声を届ける場が存在したのです。

当事者・元当事者による会議体を公的機関に位置づけたイギリスの例を参考に、
「声なき子どもたち」の声を吸い上げるシステムが我が国でも検討されるよう、
国政・都政の両面を通じて政策提言してきたいと思います。

そんな社会的養護全般を取り上げる今週末のイベントですが、
座席を拡張して定員を少し増やしました!あと20名ほどご参加いただけますので、
下記から詳細を確認のうえ、ふるってご参加くださいませ。

8/22(土)「すべての子どもたちに、温かい家庭を!」発足記念特別イベントを行います
http://kidshome.jp/201507218/

また、イベント主催団体の「こども@ホーム推進委員会」は
皆様方の寄付で運営されています。当日足をお運びいただけない方は、
ぜひ温かな寄付によるご支援も検討いただけますと幸いです。

寄付のお願い
http://kidshome.jp/contribution/

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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