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なぜ政治・政策はゆっくり・少しずつしか変わることができないのか? -官僚の無謬性神話-

日々のこと,

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日は「こども@ホーム推進委員会」秋の勉強会が開催されました。

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土曜日の夕方にお集まりいただいた多くの方々、ありがとうございました!
毎日社会的養護・児童養護のことばかり書いているのもアレなので(苦笑)、
本日のブログはちょっと違った角度から。

「データや海外の事例から、間違っている・直した方が良いと
 明白に思われることが多いのに、どうして変えることができないんですか?」

という質問が参加者の方々から飛び出ました。
どこの組織にも少なからずあることですが、行政には特に多い事象です。
この根底に横たわる重要な概念が

官僚(行政)の無謬性

と呼ばれる、我が国に根強く存在するものです。
謬とは「誤り」という意味なので、無謬とは「誤りがない」ということ。
我が国では、官僚・公務員・行政は間違いを起こさないということになっているんですね。

なんのこっちゃと感じると思いますので、解説します。

官僚が行う政策はこれまで何十年にも渡って行われ、
また将来的にも長期スパンで行われるものが多く存在します。
よってその影響も、何百万・何千万人にも及ぶことが予想されます(年金など)。

これだけ影響力が大きい政策を実行する官僚部隊には、
万が一にでも間違いを犯してはいけないという強烈な圧力がかかるわけです。

そうした「健全な圧力」があるだけなら、
緊張感を保つ意味で望ましいものだったかもしれません。
しかし我が国では、この強迫観念やプレッシャーが高じて

「官僚は間違えてはいけない=官僚は間違えない

という恐ろしい発想に飛躍していくことになります。

ひとたび間違いを認めてしまえば、自分たちのみならず、
それを実行してきたすべての官僚たちが間違っていたことになり、
歴史上何千万人もの人に間違った政策を実行してきたことになる…。

そんなことは絶対に認められないので、
官僚たち自身(ひいてはそれを指示した政治家自身)が

「制度設計を間違えたので、年金は崩壊しました

とか絶対に言えないわけです(苦笑)。
嘘のような本当の話ですが、間違いを認めなければ間違いにならないじゃないか、と。
彼らは数字をつぎはぎ、なんとか当初の政策を延命させようとします。

世論の力によって変わっていく場合でも、
少しずつ、ほとぼりが冷めたころに、せめてその制度設計をした
歴代の政治家・局長・官僚たちが引退した頃に…という力学が働くため、

よっぽど強力なリーダーシップが働かない限り、
行政政策というのは少しずつの改善しか行われないということになります。
民間企業で当然行われる「PDCAサイクル」は、無謬性によって機能しないのですね。

余談ですが、橋下維新による大阪都構想はまさに、
こうした「官僚の無謬性神話」を根底からぶち壊しにかかるものでした。

そのために公務員を中心とする勢力に大きな抵抗にあり、
その改革は志半ばで足踏みしていることはご案内の通りです。

児童養護の例に引き付けて考えますと、

「乳児院は廃止した方がいいんじゃないか」

と思っていても、そのやり方で日本・東京都は戦後70年間、
ずっと要保護児童たちを養育してきてしまったわけです。
その何万人もの児童たちに、「間違った」ことをしてきたことになる。

これは行政サイドとしてはなかなか認めづらいことです。
また、あまりに「乳児院はダメだった」というイメージが先行すれば、
世間一般の人から

「乳児院出身者は間違った養育を受けてきたから、みんなダメなんだ」

というあらぬ偏見を持たれてしまう可能性があり、行政はそれを過敏に恐れます。
(勿論、間違っていたのは政策であって、対象の個人はまったく関係ないことです。)

一筋縄ではいかない部分もありますけど、先進諸国はこうした葛藤を乗り越えて、
ドラスティックな改革・改善を実現してきました。足踏みをしている間に、
子どもたちはあっという間に大人になってしまいます

児童養護の分野だけでなく、年金制度を始めとする世代間格差諸問題についても、
政治や行政は率直にその過ちを認め、方向性を正していかなければなりません。
先送りを続ける余裕は、もはや我が国はまったくないのです。

「間違いを犯したくない」

という気持ちは、誰の心の中にもあります。
それが過剰に膨らみ、組織の中に浸透したとき、
それは「無謬性神話」という形で具現化してしまうのです。

物事や組織がなかなか変わらない…と感じるとき、
時にこの「無謬性神話」に毒されていないか、
自分自身や組織を振り返ってみると良いかもしれませんね。

これを乗り越えた改革を実現できるよう、
私どもは引き続き政策提言・世論喚起を粘り強く続けていきます。
それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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