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東京都、ついに撤退!千億円の大赤字をたたき出した「新銀行東京」とは何だったのか

日々のこと

<新銀行東京>東京TYと経営統合交渉 東京都は経営撤退へ(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150526-00000125-mai-bus_all

まだ正式発表をされたわけではありませんが、
新銀行東京について確度の高そうな報道が出ております。
猪瀬知事時代に担当局に何度かレクをお願いした際には

「微額ながら黒字が続いておりますので、撤退の予定はありません!

という頑なな姿勢を示しておりましたが、
2012~2014年度の三カ年計画(中期経営計画)が終了した後、
新中期経営計画が策定されていなかったので、舛添さんは撤退を前提に考えていたのでしょう。

2014.12.19平成27年度予算要望PP02

ちなみに私はと言いますと、都議選に立候補をしたみんなの党時代以来、
一貫して新銀行東京は精算・民営化を訴えておりましたので、
今回の決断は是とするものであります(直近の政策提言にも載ってます)。

そもそもなんで、東京都が銀行なんか経営していたんでしょうか?

ご存じのない方のために根本から説明しますと、新銀行東京が誕生したのは2005年。
当時の石原都知事の肝いりで、「石原銀行」と揶揄されながらのスタートでした。

その理想は誠に高邁で、設立時の東京都はまだまだ不景気の真っただ中。
厳しい競争の中にある民間銀行は中小企業への「貸し渋り」を行っており、
融資を受けられない中小企業は資金調達に悩み、倒産の憂き目にあっておりました。

こうした「資金調達力のない中小企業を救済する」ことを目的として
スタートした新銀行東京ですが、設立わずか3年で瞬く間に1000億円もの赤字をたたき出し、
設立費用の1000億円に加えて、東京都はさらに400億円の追加資金を投入することになりました。

「東京都民に1円たりとも損をさせることはない!キリッ」
(=利益をバンバン上げてみせるぜ!)

という石原都知事の力強い宣言はあっという間に反故にされたわけですが、
どうしてこの銀行はうまくいかなかったんでしょうか?

まずもって、他の銀行が融資をしない=経営状態が危ない中小企業が融資先なので、
大量の「貸し倒れ(融資が回収不可能になること)」が次々に発生したことが挙げられます。

まあそれが目的なので「当然だよね」という流れでもあるのですが、
確信犯的に大手銀行が業績不振の企業の貸出を肩代わりさせ、
不良債権の負担を同行に押し付けていたとも言われています。

さらには黒字を出すことが至上命題の民間企業と異なり、
「赤字になっても倒産しない(税金から補てんされる)」行政マインドをもった
同行の融資基準はかなり杜撰であり、コスト意識も皆無であった点が指摘されています。

追加の400億円を入れる時に都議会や世論からの強烈な突き上げを受け、
大幅なリストラと融資基準の見直しを行った同行は現在、
年間数億~10数億円程度の微々たる収益をあげていますが、

「銀行としての存在価値はないに等しい」
(醍醐聡・東京大名誉教授)

と有識者からバッサリ切り捨てられているのが現状と言ったところです。

政策的な観点から見れば、
資金調達を援助すると言えば聞こえはいいものの、

「潰れゆく中小企業を無理やり延命させる」

ためにお金をいくらつぎ込んでも、文字通り問題の「先送り」に過ぎず、
産業も雇用も守れないことを証明した結果であるとも言えます。
守れないどころか結局のところ、それ以上のマイナスを生み出しました。

もちろん成長のための投資や、やむをえない景気変動に対応するための融資は必要ですが、
潰れてしかるべき「ゾンビ企業」を発生させても産業の新陳代謝を阻害するだけなのです。

ただ、こうした中小企業延命政策は非常に「有権者ウケ」の良い政策で、
多くの政治家は手を変え品を変え、中小企業延命のための予算を獲得しにきます。
実際に同行の設立時には、都議会でも共産党を除くすべての会派が設立に賛成していました。

短期的には「雇用を守る」ために、喜ばれる政策になるでしょう。
しかしながらそれが果たして、中長期的に全体のためになることなのかどうか…

新銀行東京を単にいち政策の失敗として捉えるだけなく、
このような視点からも今回の結末は大いに参考にするべきだと思います。

話を戻しますと。

黒字経営にまでなんとか戻し、同行を売却の話までこぎつけられたことは
素晴らしいと思いますが、冒頭の記事にあるように今後は売却金額が争点となります。

>経営危機に陥った新銀行東京に対し、当初の1000億円に加え400億円を追加出資する補正予算案について、都議会が2008年に可決した際、追加出資分を毀損(きそん)させないことを確約させる付帯決議をした経緯がある。

今回の定例会は条例案としてはそれほど重たいものがないのですが、
豊洲新市場に加えてまたこの新銀行東京の売却戦略については
代表質問・一般質問で大きな議論を呼びそうです。

…どっちも石原・猪瀬都政が積み下ろし損ねた荷なんだよなあ。。(ボソッ)

私も自分なりの調査研究を重ね、
引き続きこの問題に注視・取り組んでいきます。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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