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「投票に行かない若者が悪いだけ」という言説の恐ろしさ

日々のこと

ネット上で話題になっている大阪都構想の「シルバー・デモクラシー」への
様々な反響に対して、私が感じた大事なことを書き留めておきます。

大阪都構想関連の過去記事:
http://otokitashun.com/tag/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E9%83%BD%E6%A7%8B%E6%83%B3/

私の記事に対する「高齢者を排斥するつもりか!」という
的外れな批判は置いといて(そんなことは一言も言ってません)、
代表的な反対意見の記事をまずご紹介いたします。

橋下市長の敗因が「シルバーデモクラシー」ではない件について。
http://blogos.com/outline/112327/

端的にまとめると、大阪市の人口比率を見れば若年層の人口が少ないわけではない。
同じ比率の人数が投票に行っていたなら賛成多数になったかもしれないし、
単に投票に行かなかった若者が多かっただけでは、という主張になります。

もちろん橋下市長の敗因は「シルバーデモクラシーだけ」ではありませんし、
これをどう定義するかによって捉え方は変わってきます。

しかし私は、他のすべての世代の投票結果で過半数を得た意見が
70代以上の投票で覆された事実は「シルバーデモクラシー」と言うべきものであり、
まずはこの現実を受け止めて危機感を強めるべきだと考えます(※最後に追記あり)。

以下、その理由を述べていきます。

まず冒頭述べておきますと、私は今回の投票で高齢者層が
反対に回ったことは「ある意味で必然」だと思っていますし、
世間一般で言われている所謂「老害」といった感情は持っておりません。

前回言及したように、歳を重ねるほど保守化するのは仕方のないことです。
(人間以外の動物だって概ねそうなります)

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(明るい選挙管理委員会HPより)

しかしそれと同じくらい、若者の投票率が他の世代と比べて低くなるのは必然と言えます。
データが残っている限りで20代の投票率が平均を上回ったことは一度たりともありませんし、
それどころとか世代別投票率ではほとんど常に最下位です。

若い時は、「政治」が身近にあることに気づかない。
恋に遊びに仕事に夢中で、何が変わるかもわからない投票なんかに行くヒマはない。

それが家族ができて、体力が落ちてきて、社会で様々な困難に直面して、
少しずつ政治意識を持ち始めて投票に行く傾向が強まってくるわけです。
これは経年変化で見ると、いつの時代にも変わらない傾向になります。

「最近の若いものは…」

ではなく、これはもはや『前提』とするべき普遍的傾向であり、
政治教育の改革などを行っても、劇的に変化する可能性は低いのではないか
と思います。

それでもこれまでの社会は、若い世代の数の方が多くて、
また健康寿命もそれほど長くなかったことで、なんとかバランスを保ててきました。

以前から書いている通り、
民主主義社会はこれほどの長寿社会・少子化社会を想定されておらず、
健全な「人口ピラミッド」が維持されていることが前提とされています。

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画像引用元

端的にまとめれば、「人口」というハンデがあって初めて、
なんとか若者は投票率の高い高齢者層と同等の発言力を持つことができる
のです。

「若者の投票率は、高齢者に比べて有意に低い」

これを前提とするか否かで、今回の結果への見方は変わります。
大阪の人口比率を見れば数は同じなんだから、選挙に行かなかった若い世代が悪い!
という冒頭に紹介した筆者の主張も「アリ」だとは思います。

しかしその立場に組しない私は、その言説に恐ろしさを覚えます。
人口比率はしばらく逆転しない。そして、若者の投票率はベースとして低い。
その状況は当面の間、覆りません。

例えが適切かどうかはわかりませんが、

「子どもだって筋トレすれば大人に勝てる、その努力をしない子どもが悪い!」

と言われているような、そんな感じを覚えるわけです。
力の強いものが、もはや弱者・少数者になってしまった若者に寄り添わなかったら、
この国は一体どうなってしまうんでしょうか。

今回の結果は、それくらいの危機感を持って受け止めて、
議論のきっかけにしていくべきだと思います。

「一人一票は憲法で規定された人権だ」
「高齢者の参政権を制限することはできない」

まったくその通りですけど、そこで思考停止をしていていいんでしょうか。
国がなくなるその日まで、「選挙に行かなかった若者が悪い」と言い続けるんでしょうか。

私は高齢者の参政権を制限することには現時点で反対ですが、
世代別投票制度や、子育て世代に倍の票数を与える調整システムは
真剣に導入を検討しても良い時期にきた
と思っています。

もちろんそれ以外にも、高齢者世代も若い世代も納得するような決めごとが
できる仕組みや解決策があれば、それが望ましいことは言うまでもないことです。

「若者よ、もっと投票に行こう!」

という当たり前のスローガンから踏み込んで、
私たち若い世代は更なる主張・活動をしなければならないのかもしれません。

世界史上類を見ない少子高齢化が進み、このままでは高齢者福祉で押しつぶされることが
確実なこの国で、今回の大阪都構想の結果はそれほどのインパクトがあった。

私は、そのように感じています。もちろん、どんな意見にも正解はありません。
皆さまはどのように感じ、そして考えますか?

それでは、また明日。

※5/18 23:00追記:
以上はNHK及び報道各局の出口調査の数値に基づき書いたものです。
この数字がおかしいのではないか、との指摘が一部にあります。
http://life-hacking.net/tokoso-touhyou-nazo/

正式な世代別の投票率が出るのはまだ当分先のことになりますので、
上記のような指摘もあることを併記させていただいた上で、
いま感じていることを記録として残しておく次第です。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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