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「政教分離」の原則の中で、ムスリム観光誘致をどこまでサポートできるか問題

日々のこと,

2015.2.16東京新聞「イスラム教理解へ モスク見学ツアー」 (2)

先日のモスク見学ツアーについて、東京新聞が記事にしてくださいました!
取材に足を運んで下さったM記者、どうもありがとうございます^^

さて、今月から平成27年度の東京都予算を審議する予算特別委員会が開会されるのですが、
こうしたイスラム教徒・ムスリム観光客への対応として東京都産業労働局は

「ムスリム観光客受け入れ環境整備事業」

として平成26年度は2,000万円、
平成27年度も同額程度が計上されています。

委員会質疑で取り上げることも視野に入れながら、
本日は担当者に現状のレクチャーを受け、意見交換を行いました。

写真 1

平成26年度に独自予算がついてから東京都が主に行っているのは
主に啓発活動。こうした冊子を独自に6,000部を作成して配布、
また事業者向けのセミナー(集客300名)を1回主催したそうです。

…実績がこの2点だけで年間2,000万というのは多すぎる気もしますが、
まあ他にも細かな施策が色々とあるのでしょう(今後また確認します)。

写真 2

ムスリムか否かは正式に判別できませんが、
ムスリム国からの観光客は近年急増しています。
そして彼らの声を聞くと、

写真 4

・礼拝できる場所がない
・安心して食事ができる場所(=ハラールが食べられるレストラン)がない

という意見が挙げられますし、これは東京都も把握しています。
礼拝も大きいですが、やはり前回の記事にも取り上げた食事の問題は深刻で、

写真 3

東京都も、最後は「個々人の裁量に委ねる」と、
ハラール基準に関しては丸投げになってしまっているのが実状と言えそうです…。

礼拝所やハラールレストランがほとんどない中で、
2020年の五輪までこうした地道な普及・啓発活動だけで
充分な環境が整えることは、かなり難しいと断言できます。

極端に言えば既存のレストランで「ハラール」を提供しようとすれば、
別のキッチンを用意する必要がありますし、商業施設に礼拝所を設置してくれと言っても、
短期的には1円の利益にもならない礼拝所を進んで設置する事業者は極めて希少でしょう。

予算やら色々な制約をすべて取っ払って考えて、
理論的に行政が実施可能な政策というと、

・礼拝所を設置する事業者に助成金を出す
・ハラール提供のために飲食店に設備増強費として補助金を出す

(建設費、設置費を東京都が半額負担するなど)

が考えられます。
しかしながらこちらについては、

「政教分離の原則から、安易に宗教的な施設にお金を出すことは難しい」
「公平性の観点からも、『どうしてムスリムだけ』という理論が構築できない」

とのことでした。まあ、これは確かにそうですよね…。
いくら現状、ムスリム向けのインフラが圧倒的に整ってないとは言っても、

「日本政府・東京都は、ムスリムだけを優遇するのか!政治的配慮じゃないか!」
「モスクの建築にお金を出すなら、仏教寺院や教会にも助成金を出してくれ」

と指摘されると、クリアな反論はなかなか難しいものがあります。
同じ理由で、ハラール統一基準の設定に関しても、

「宗教的なものにどこまで政治・行政が介入できるか、慎重な議論が必要になる」

とのことで、こちらは国の対応を注視しているとのことでした。
マレーシアなどのムスリム国はもちろん、最近では韓国もハラールの基準に
国家が線引をしましたが、政教分離・政治介入の程度問題は非常にセンシティブなところです…

とはいえ、せっかく単独事業に2,000万円もの予算がついており、
昨年度発行済の冊子は新規のものは作らないとのことですから、
今年は何か東京都にも新しい施策ができるはずです。

本日の意見交換の中で私が思いついて提案したのは、

・事業者向けのより詳細なパンフレット、手引の作成
・具体的には、ハラール基準や現状あるハラール認定事業者を網羅した情報の提供

です。
いま発行されているこちらの冊子は内容的にも広く都民に読めるように平易に作られており、
本気でハラールレストランを出店したいと考えているような事業者向けではありません。

「日本や東京都にはハラール基準を出す事業者が乱立している」

とは多くの有識者が指摘しますし、東京都も理解しているところですが、
具体的にはどのような事業者が、どれくらいの数存在するのかは正確に把握されていません。
政教分離の観点から強制的な「線引」は難しいとしても、

「東京都には現在、これだけの種類のハラール基準・認定事業者がある」
「国際的なスタンダードはこのレベルで、厳格さでランク分けするならこうなる」

という情報を網羅して提供し、ガイドラインを示すことはできるはずです。
こうした情報収集や管理・提供こそ、行政の得意とする分野ではないでしょうか?

色々な政治的・宗教的な制約がある中で、
ムスリム観光客誘致や在住ムスリムの方々に、
他にどのような支援が考えられるでしょうか…。

アイディアがある方、ぜひともお聞かせ下さい。
引き続き行政に提案し、また委員会や文書質問でも取り上げてみたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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