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「負の連鎖」を断ち切るための福祉なら、倍額でも出すべき。児童養護施設で感じたコト

去る火曜日、地元北区は赤羽にあります
児童養護施設「星美ホーム」の視察に伺いました。
http://www.seibi-home.jp/

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星美学園は幼稚園~短期大学まで擁する大学校法人で、
実は私の姉もこちらの中学・高校にお世話になっていたものの、
私自身が敷地内に足を踏み入れるのは初めてでした。

「児童養護施設」

こちらもあまり聞きなれない単語かと思われますが、
最近ですと「明日、ママがいない」というドラマの舞台にもなり、
良くも悪くもその存在が注目を集めました。

その歴史的起源は聖徳太子の時代までさかのぼると言われる
所謂かつての「孤児院」で、社会的擁護が必要な
18歳までの児童たちが集団で暮らす施設です。

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星美ホームにはマイケルジャクソンや小錦など、
様々な有名人がチャリティーとして慰労に訪れ、

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ジャイアンツの内海投手は、いまでも毎年、
自分の勝利数に比例したランドセルを寄付して下さっているそうです。

写真 5

集団生活を象徴するような、厨房付近の献立表。

写真 1 (1)

昔懐かしいアイスの冷凍庫に、ほほえましい注意書きが^^

私が訪れた16時過ぎは、未就学児たちがお風呂に入る時間だったらしく、
施設内は髪の毛の濡れた小さな子どもたちが元気に走り回っていました。

さて、戦後はまさに孤児のためであった児童養護施設も、
今では大きく役割を変えています。両親との死別で施設に入る子どもは少なく、
入所する理由で最多を占めるのは「親からの虐待」です。

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認定NPO法人ブリッジフォースマイルHPより転載)

「親の虐待・酷使」
「親の放任・怠惰」

で、その理由のおよそ三分の一を占めます。
施設で暮らす子どもたちの多くは、心に大きな傷を追っています。

そのため児童養護施設では、子どもたちの暴力や非行、リストカットなど
ありとあらゆる問題行動が毎日のように発生します。スタッフの方の

「社会問題の縮図が、ここ(児童養護施設)にある」

という言葉は、深く胸に突き刺さりました。

こうした子どもたちの親代わりともなる児童指導員の配置については、
平成24年に改善が見られたものの、国の基準では小学生の子ども5.5人に対して1人
独自加算を行っている東京都ですら、その割合は5:1です。

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補助金はこの設定に基づいて支給されるので、
これ以上の配置をする場合は施設側の自己負担となります。

「子ども5人に対して大人1人なら、いけそうじゃん」

と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
職員は24時間365日働けるわけではなく、1日8時間勤務3交代とすれば、
常駐が必要な児童養護施設では単純計算で大人1人で15人の子どもを見る場面が発生します。

本来は子どもたちの衣食住だけではなく、生活相談や学習指導、心のケアまで
しなければならない児童指導員も、これでは日々のトラブルに対応することで精いっぱい。
ストレスや無力感から、職員の離職率も非常に高いそうです。

こうして、元より難しい問題を持っているのに加え、
充分な生活環境と学習指導を受けられなかった子どもたちの将来の見通しは暗く、
高校の進学率こそ上がってきたものの、大学進学率は全国平均の4分の1以下

大学も1年生で退学してしまう例が非常に多く、
施設を出所後は、知識や技能を活かした定職につけず
不安定な生活を続け、やがて連絡が取れなくなってしまう…

そんな例が非常に多いのだと、
大きなため息とともにお話しして下さいました。

児童養護施設だけではなく、あらゆる福祉分野で
「人が足りない(≒財源がない)」というのは問題になりますが、
児童養護施設は特に深刻で、また非常に勿体ない状態にあります。

現状では、子どもたちを社会に出すところまでが精いっぱい。
出所後に起こすトラブル報告は後を絶えず、正確な統計はないようですが、
彼らが家庭を持ったときに自ら虐待を起こす可能性も決して少なくないと思われます。

これはまさしく「負の連鎖」です。

しかし、これを断ち切ることができれば、それは瞬く間に「チャンス」になります。
無限の可能性を持つ子どもたちを、十分な環境の元で育てることができれば、
彼らはやがて社会の担い手になって、自ら社会に貢献できるからです。

こういう言い方は不適切かもしれませんが、
「投資」としても非常に費用対効果の高い分野と言えます。

現在、東京都は様々な独自加算を行っておりますが、それでもここに支出される財源は年160億円程度。
奇しくも、たびたび取り上げているシルバーパスとほぼ同額の予算規模です。
(もちろん受益者数がケタ違いなので、単純な比較はできません。念のため)

こうした「負の連鎖」を断ち切るための福祉であれば、
今の倍額くらい費やしても決しておかしくないのではないかと思います。

私としてはまずさしあたって、東京都が独自に平成24年度より始めた
自立支援強化事業(出所後の子どもたちをケアする事業」について、
今後も拡張する余地があると思いますので、政策提言をしていきたいと考えているところです。

写真 2 (2)

ご案内をいただいた星美ホームスタッフの工藤さま、
本当にありがとうございました!

私は普段の発言や所属政党のイメージから、
バリバリの新自由主義者で社会保障縮小の弱肉強食思想だと思われがちですが、前述の通り
必要なところには現状の2倍でも3倍でも出すべきだと思っています。不要なものが多すぎるだけ。

未来を担う子どもたちのため、
必要とする人に十分な福祉が行きわたるように、
全体最適の観点から政策提言を続けていきたいと思います。

三連休、良い週末をお過ごしください。
それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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