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「比例選出」と「国会の慣習」を考える

政治コラム

みんなの党から14名の国会議員が離党し、新党結成をするということで
こちらのコラム読者の皆さまにもお騒がせとご心配をおかけしております。
誠に申し訳ありません。

さて、様々な報道で明らかにされている通り、
離党された方々の14名中13名までが「比例選出」で当選された議員です。

みんなの党としては彼らに議席を返上(議員辞職)を求めていますが、
新党結成組がこれに応じる様子はなく、事態は緊迫化しています。

そもそもどうしてこのような問題が起こるのか、
本日はその辺りについてかいつまんで説明したいと思います。

ご案内の通り「比例」は個人名ではなく政党名で当選をした議員ですから、
当然、理論としてはその議員の籍は政党に帰すると考えられます。

このため現在の法律では、比例代表制度で当選した議員たちに対して
他党に移ることは禁止されているのですが、実は無所属になることや
新党の結成についてはとくに規定がありません

かつてもこの「抜け道」を使って舛添さんや与謝野馨さんが
自民党比例選出にも関わらず新党を立ち上げたことがあり、話題になりました。
(前者は新党改革、後者は立ち上がれ日本)

何はともあれ、こちらについては法律で禁じられていないので、
議員が「離党はしますが、議席は返しません」と突っ張られれば
そこに関しては為す術はないのが現状です。

ですがここにもう一つ、「会派」という問題が加わります。

以前、私個人のブログで解説したことがありますが、
議会内での活動は政党ではなく「会派」単位になります。

都議会のお話しVol.1 ~会派ってなに?
http://otokitashun.com/blog/togikai/1277/

国会でも質問時間や控室のスペース、さらには立法事務費の配分まで会派単位で行われます。
そして、会派を異動する場合「その会派の代表者」が異動届けを出すのが『国会の慣習』です。

つまり、「離党」は個人の意思で自由にできるけれども、
「会派離脱」は会派代表者の同意が必要になる
のですね。

みんなの党は比例選出のメンバーには「議席の返還」を求めており、
当然のことながら会派の離脱も認めておりません。

ということで、今の現状ですと会派「結いの党」のメンバーは2名。
ほとんど質問時間も控室のスペースも立法事務費も配分されず、
国会活動がまともにできず「死に体」になる可能性がある…

そんなわけで、

「会派離脱届けを代表者が出すという『慣習』がおかしい。離脱を認めろ!」
「比例代表の議席なんだから党に返すべきだ、会派離脱は認めない。
比例選出の議員は任期中、移動できないように立法措置を講じよう!」

↑イマココ!
…という議論の真っ只中にあるのですね。

前置きが長くなりましたが本件について
私見を述べますと、ポイントは

「会派の異動届けは代表者が提出する」

という『慣習』にあると思います。

以前に「委員長ポストは議員数によって割り振られ、また強引な差し替えなどは行わない」
という『慣習』があることを、こちらも自身のブログでご紹介しました。

特定秘密保護法、成立の夜に
http://otokitashun.com/blog/daily/2005/

『慣習』には古臭いだけでもはや形骸化してしまったものが多々ありますが、
少数意見を汲み取ったり、議会の暴走を防ぐための「古の知恵」が込められている場合もあります。

この会派異動についての慣習は、後者ではないかと私は思うのです。
(まあ比例代表のシステム自体、比較的最近の制度ではありますが)

たしかに法律上は、離党をして新党を作るのは自由。
でも『慣習』によって会派の離脱は認められず、国会活動は制限される…

だからこそ比例代表選出者が離党するのもさせるのも、
「ほどほどにしておきなさいね」という無言のメッセージが
この『慣習』に込められているような気がしてなりません。

もし新党メンバーの半分ほどが選挙区選出の議員であれば、
それなりの国会活動ができてプレゼンスは発揮できるでしょう。
でも比例選出の割合が8割、9割では…?

その数次第では活動が制限されることを鑑みても、離党することに大義があるのかどうか。
すべてを含めた総合的な判断は、最後は議員個人がされることであり、
その議員に対する審判は次期選挙によって有権者からなされるでしょう。

新党や無所属なら異動OKという「抜け道」は
党があまりにも変わってしまった場合などのリスクヘッジになりますが、
それが乱用されないように「慣習」がある

もしも今回の件でこの「慣習」がなくなるのであれば、
それなりの法整備が必要になってくると思いますが、なんだかそれはそれで
息苦しくなりそうな気がするなあというのが個人的な感想です。

それでは、本日はこんなところで。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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