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次長課長の河本問題から考える、社会保障の行方

政治コラム

週刊誌のネタから自民党のニ議員(片山さつき、世耕弘成)が
突っ込んだことにより、吉本高収入芸人が大変なことになってます。

次長課長河本さん「甘かった」と謝罪 受給分は全額返還意向
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120525/trd12052511330015-n1.htm

賛否両論あるようですが、

「あんなに金もらってるタレントの家族が生活保護を受けてるだと!
不正受給だ、ケシカラン!」

という意見が比較的マジョリティのようです。

実はこれ、社会保障の深遠な問題の一面ですので、
今日はココらへんについてなんか書きたいと思います。

様々な切り口はあるのですが、
ここでは大きく2つの問題を取り上げます。

1.あらゆる「基準」が曖昧

確かに民法で三親等以内の親族には扶養義務があるのですが、
この「扶養義務」というのがはっきりしておりません。

なんか年収がいかにも高そうな人気芸人だから
「悪」みたいなレッテル貼られて大炎上したわけですが、
義務がある人とない人の境目って一体どこじゃらほい?

具体的に年収がどれくらいで、どんな生活水準の持ち主なら
困窮している家族を養う「義務」があるのか。
法律で明確な定めはないのが現状なのです。

さらに突っ込めば、そもそも国はいま国民の所得を正確に捕捉できません
だから生活保護を受ける人も、それを扶養する人の生活水準も精査できず、
曖昧なままのグレー受給が横行しているのが問題であると言えます。

これを解決するには、

1.国民IDの導入
2.「歳入庁」のような組織を作り、国民IDを用いて所得を極力正確に捕捉する
3.生活保護と扶養能力の基準を作り、それに基づき受給を決定する

というステップが必要になります。
しかしながら、

国民IDの導入では「国民総背番号制だ!国家統制だ!」という批判が巻き起こり、

歳入庁の創設には、税収管理という権限を手放したくない財務省が猛烈に反発し、

生活保護の基準を作れば、水準以下の人々が一斉に生保に走りパンクする恐れが出てくる

など、ざっと考えただけで
政治的なハードルは極めて高いと言わざるを得ません。

しかしながら、今後の日本の社会保障において
この問題はいずれにせよ避けて通れないのです。

インタビューを読むと、片山さつき先生は不正受給にいたく心を痛めており、
特に永住外国人の受給(法律では永住外国人に生活保護を支給する決まりはない)を
解決したいと思っているようなのですが、国民IDの導入実現で一発解決だよね。

叩き上げの民間人をいじめるのはこのあたりにして、
法的な問題解決に邁進していただくことを強く望みます。

2.倫理観と、それに基づく制度設計が時代遅れ

もう1つは、そもそも
「家族なら面倒を見るのが当たり前」
という考え方を是とするのか、という倫理的な側面です。

片山さんと世耕さんの主張は単純明快で、

「まず余裕がある家族が扶養するのが『常識』」

と、はっきりと述べておられます。

彼らは自民党であり、自民党は「保守政党」です。
保守とは平たく言えば古き良き価値観を守っていく考えで、
家族制度の維持が党是ですから、自民党は夫婦別姓などにも強く反対しています。

家族がセーフティーネットとして機能していた
経済成長期であれば、間違った考えではなかったのかもしれません。

しかし、これからの時代はどうでしょう?

僕個人は、家族というコミュニティによる扶助は
少子高齢化や晩婚化、独身化が進み続けるこれからの時代で
ますます脆弱で厳しいものになってくると予測しています。

そもそも以前に年金問題でも少し触れましたが、
家族という単位から個人を切り離して社会全体(国)で
苦しい人の面倒を見ましょう、というのが社会保障制度の根幹です。

「家族が面倒をみるのが当然」

という理屈がまかり通るなら、じゃあ所得が高い人が親族にいるなら
老後の年金だってもらわなくていいじゃないか、という話しになります。


年金は自分で払っているものだから別、と感じる人もいると思いますが、
賦課方式で運営されている今の年金は制度的にも思想的にも
国による社会保障であり、生活保護と根っこのところは変わりません。

確かに今後、国の財政は苦しくなる一方で
社会保障に関わる費用を切り詰めざる得なくなるかもしれません。

では、それに変わるセーフティーネットを古き良き「家族の復活」に求めるのであれば、
少子高齢化に爆進する我が国では支える側の負担が激増して破綻することは
もはや自明と言えるのではないでしょうか。

奇しくも「生活保護」という社会保障の柱に対する
世間の関心の高さを示したとも言える本件ですが、
これから果たしてどこまで政治的な解決がはかられるでしょうか。

事の発端ともなった両議員は、

「一人の芸能人を叩くことが目的ではなく、
これをきっかけに議論を喚起していくことが大切云々」

と述べておられますが、どうもお二方のご意思に反して進む

「高収入なのに親を扶養もしない不届きもの」を袋叩きにし
涙の記者会見をやらせるという、なんともワイドショー的な展開

に僕は激しく心を痛めているわけです。
少しばかり成功した人間を袋叩きにして、社会って良くなるんですかね…?

「議論を喚起した」お二方は世間の関心を
政治や制度の話しに持っていくことに最大限注力し、
またマスコミ報道も一個人の問題に矮小化されないことを願うばかりです。はい。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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