ひらけ、東京!!

労働者にまつわる法の話しをしよう -「フレキシキュリティ」ある労働市場を目指せ-

政治コラム

改正労働契約法が可決されたとのことで、
今日のトップニュースになっていましたね。

改正労働契約法 待遇改善へ大きく前進 5年を前に解雇…“抜け道”指摘も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120803-00000112-san-bus_all

要は派遣の期間を規制して、一定以上の期間を同じ企業に勤めたら
正社員にしてあげなければダメですよ、というルールを
さらに厳格に運用させるものです。

それで思い出したんですが、
ていうか仕事に直接影響して思い知ったんですが、
10月から「労働者派遣法」の改正も実施されます。

名前が紛らわしいんですが、こっちは
「日雇い派遣(30日以内)」を原則禁止するというものです。

つまりこの「労働契約法」と「労働者派遣法」の改正で、

・長期間働いた派遣社員は正社員にしなければならなくなり、
・そもそも「短期」の派遣はその存在そのものが禁止される

ということにあいなりました。

特に後者の方が個人的に影響がありましてね…。
これによって繁忙期の2週間だけとか、イベントを行う
5日間だけの契約ということができなくなっちゃうわけです。
俺はイベント屋なんだよコンチクショウ

一見、

「おお、つまり世の中すべていずれは正社員になるってことか?!」

という超脳天気な見方が出来なくもありませんが、
普通の人がちょっと考えれば到底不可能な妄想であり、
端的に言ってとんでもない改悪法案であると思います。

当たり前ですが、企業の資源(資金)は有限です。
もっともコストが高い正社員を雇える数は限られています。

その中でこれまで派遣であった人を正社員にしたり
新たに雇おうとすれば、当然のことながら今いる正社員を減らしたり
少なくともお給料を下げるという努力が必要になります(右肩上がりの業績でない限り)。

ところが、今の日本の法体系では
この当たり前のことが極めて難しい状況にあります。

日本企業が正社員を解雇するためには
労働契約法第十六条、

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする。」

という厚い厚い壁を突破しなければなりません。

一例を上げると、正社員を解雇するためにはまず
「新卒採用の抑制」を行なって企業努力をしなければならなかったり、
とにかく今の日本では正社員の権利は強固に守られています。

(…これってすごいよな。解雇するために新卒採用を抑制したんじゃ
正社員が増えるわけもないし、しわ寄せは若者に行くに決まってんじゃん。ボソボソ)

えー、何が言いたいかと申しますと、
今回の改正は「入り口」だけの改正で「出口」にまったく手をつけておらず
こんな規制をしても正規雇用が純増したり失業率が下がるはずがないということです。

パイの大きさが同じなら、削る方法も一緒に提案しなければ
イタチごっこが繰り返されるに決まっています。

僕は常々日本に必要な処方箋の一つは
「労働市場の流動化」であると唱えてきましたが、
今回の改悪はこの本題に切り込まないまさに「小手先」のものです。

こういう改正が通ってしまうあたり、
本当に政治家たちは

「これで本当に物事が良くなると思っている」真性の◯◯なのか、
「無駄だとわかりつつ仕事をしたフリをしている」怠慢の塊なのか…

いずれにせよ、末期的な症状であるとしか申し上げられません。

なんか「大企業=悪」「企業はいくらでもカネをもっている」と
半ば本気で思っている老害リベラルが多いのも日本政界(社会?)の
大いなる欠点だと思うんですけどね、個人的には。いつまでマルクス気取りかと。。

物事が変わらないどころか、短期雇用にふさわしいスキルで収入を得ている人や
そうしたライフスタイルを選択したい人を虐げる今回の改悪。

非正規雇用で力を発揮できない人材にチャンスを与えたいなら、
やはり今の立場にふさわしくない人たちには退場してもらわなければなりません。

能力とやる気のある人がそれにふさわしいポジションを
得られる環境を整え、競争を活性化させ経済を伸張させていく。
結果、市場が広がり雇える正社員の数自体が増える

こうした「改正」を行なっていくのが本来の政治の役割のハズです。

なお、日本と同じく失業率の高さに苦しむイタリアでは
先ごろ(3月)解雇規制の緩和が閣議決定され、労働市場の流動化に向けて
失業対策に苦しむ先進国の中でいち早く走り出しています。

解雇規制の緩和案決定=労働市場改革、難航も-イタリア
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201203/2012032400087&g=int

ヘタリアとか馬鹿にしてる場合じゃないよ!
日本、後塵を拝してるよ!!

既得権益をお持ちの正社員の方々には少々刺激的かもしれませんが、
どこかに負荷がかかる改革を推し進めない限り、

「全員がハッピーになる(非正規雇用が改善されて、みんな正社員!)」

なんてことは、残念ながら起こりえないのです。

なお、労働市場改善の話題に置いては最近
フレキシキュリティ(flexicurity)という造語が注目されています。

これはフレキシビリティ(柔軟性)とセキュリティ(安全性)を
組み合わせた造語であり、労働市場の流動性とそこから漏れてしまった人への
セーフティーネットの強化が重要である、ということを示唆した単語です。

これはデンマークの成功例から着目されているのですが、
デンマークでは上記2つに加えて「積極的労働政策(職業訓練強化など)」
という要素を重視しており、この3つの仕組みを称して

「ゴールデン トライアングル」

というそうです。

解雇規制を緩和し人材の流動性を高める。
仕事がない間は、政府の支援で職業訓練が受けられ、また雇用される。
それでもダメな期間は、福祉によって救済される…。

特に失業者へ職業訓練をして再チャレンジをバックアップする施策は
安倍政権あたりで熱心に取り組んでいたのですが、いつの間にやら
少々下火になってしまったようです。

小泉政権の労働市場自由化改革

そこから漏れてしまった人に再チャレンジさせる、安倍政権の労働政策

という流れは、けっこう理想的だったんですよね。
今考えると…(遠い目)。

いずれにしても日本の今回の改悪、

「ダメなものはダメっ!」

というだけの法案は
労働市場の流動化に真っ向から逆らうものと言えますが、
こうしたことにかかる労力や資金を、職業訓練や失業対策に当てて欲しいものですね。

それではー。

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おときた駿

おときた駿 プロフィール
東京都議会議員(北区選出)/北区出身 33歳
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、日本初のブロガー議員として活動中。

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