もっと、新しい日本をつくろう

国民不在の選挙制度の末路 -選挙制度のデパート-

政治コラム

増税法案が可決され、新聞の政治欄が賑やかになってきました。

あまりにも小沢小沢の字が喧しく踊っておりますので
あたくしはそちらは華麗にスルーし、増税法案の裏番組で進んでいる
選挙制度改革を前回に引き続き取り上げてみたいと思います。

連用制 党利党略の優先に呆れる
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120620/plc12062003170000-n1.htm

さて、現在政界では一票の格差が問題になっておりまして、
衆院選挙はすでに最高裁判所によって現状が「違憲状態」とされています。

これを改善しなければならないのと、もともと民主党はマニフェストで
議員定数の削減をうたっていたこともあって、議員定数を削減しながら
選挙区や選挙制度自体の改革にも踏み込む動きがあるわけですが。

民主党はもともと、比例代表制度で選出される議員数の削減を志向していました。
野田総理は過去の著作(「民主の敵」)の中でも、いずれは比例代表制を廃止して
小選挙区一本で議員を選出するべきだ、と書いています。

前回の記事で述べた通り、選挙制度には基本的に二種類しかありません。

・多数決、多数の意見こそが民意だと考える「多数代表制」(≒小選挙区制)
・少数の民意をできるかぎり汲み取ってこその民主主義だと考える「比例代表制」

そう、明らかに民主党は前者を志向する政党だったわけです。
(もともと、二大政党を招きやすい小選挙区制で台頭した政党ですから)

ところがそれが、ここにきていきなりブレた。
しかも、半端じゃないくらいブレまくった。

降って湧いて出てきたのが、比例代表制の議員を削減する代わりに、
「比例代表連用制」を一部に導入するという案です。

もうこんな制度マニアックすぎて一般市民は理解不能だと思うのですが、
簡単にいうと小選挙区で勝てなかった弱小政党に
比例票を優先して回して席を取りやすくさせる、という制度です。

理屈としては、小選挙区(多数代表制度)選出の議員が相対的に増えると、
小選挙区で勝ちやすい大政党に有利で当選者のバランスが悪くなってしまう。
ゆえに、比例代表のパートではもっと弱小政党に有利なように制度を変えましょう、と。

…意味わかんねーよ!!

弱小政党に配慮して少数意見も汲み取れる選挙制度にしたいなら、
単に多数代表の数を削って比例代表を増やせば済むだけの話しです。

繰り返しになりますが、選挙制度には2つの制度と思想しかありません。
多数の意見を取る多数決主義か、多用な民意を汲み取る相対主義か。
前者が多数代表制(小選挙区制度)で、後者が比例代表制です。

日本はどちらの制度にも決めきれず、折衷案のような形で
小選挙区300、比例代表180という中途半端な制度を取ってきました。

-さあ、ここからはじまる民主党劇場-

マニフェストにも議員定数削減って書いちゃったし、
裁判所からも違憲状態で改善しろと言われてしまった…

でも小選挙区を減らすのはマニフェストや党の志向に反するし、
現職議員の反発も強いしムリ。かといって、比例代表を減らしたら
少数政党(ていうか公明党)の反発が強すぎてそれはそれでムリ…

じゃあ比例代表の数は減らす代わりに、
少数政党(ていうか公明党)に有利な制度を導入すればいいんじゃないか?!

そしたらその少数政党(ていうか略)がとある政党(自民党ですが)と
選挙協力する必要もなくなり、こっち側に擦り寄ってきてくれるかも?!

そうだ、これだ、連用制を導入しよう!!

-劇場終わり-

いったい、どっちを向いて制度設計をしようとしているのでしょう?

仮にこれが通って衆議院選挙の比例代表制の一部に連用制が導入されると、
ざっとみてこれだけの選挙制度が日本には併存することになります。

・小選挙区単記制(衆議院、参議院の一人区)
・大選挙区単記制(参議院の二人区以上、地方議会選挙)
・拘束名簿式比例代表制(参議院)
・非拘束名簿式比例代表制(衆議院)
・非拘束名簿式比例代表連用制(衆議院)←New!

無理。

「選挙制度のデパート」と世界から失笑を買う日本の選挙が
主義思想もなくさらに複雑化していくというわけです。

選挙制度を変えるのに、政治思想・哲学は必要不可欠です。
「民主主義」「民意」をどう捉えるか。そのためにはどれくらいの議員数が必要で、
どんな方法で選出するのがベストなのか。

そういった大切な議論を一切せず、

「違憲状態だから」
「減らすって言っちゃったし」
「とりあえずとある政党の選挙協力が欲スィ」

といった理由で選挙制度が変えられようとしていることに、
もっと我々は危機感を抱かなければいけません。

増税や社会保障制度も、わかりやすく大切な問題ですけれども、
ますます選挙制度が複雑化して若者の選挙離れが進まないよう
こうした問題にもしっかりと関心を持ち続けていきたいものです。

ではではー。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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