もっと、新しい日本をつくろう

官僚と天下りの甘くない関係

政治コラム

桜が本当に美しい季節ですね!

新社会人や新入生の皆さま、ご就職&ご進学、おめでとうございます。
とにかく若手に元気がないとこの国はもうどうにもならないので、
ぜひギラギラしたまま健やかに成長していただきたいと思います。

そんな希望が溢れる季節に、我々若者世代にとって
またも衝撃的なバッドニュースが駆け巡っているわけです。

<公務員新規採用>「56%」削減を閣議決定
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120403-00000030-mai-pol

官僚の天下りや高給公務員の人件費削減にはほとんど手をつけず、
若者の雇用をダイレクトに奪う、新卒採用を抑制する蛮行。

これが

「増税の前に、まずは自分たちが身を切る覚悟」

の中身だと言うのですから、言葉もありません。弱いところ、取れるところから取るだけ。
そしてその搾取される弱者とは、われわれ若者世代だと言うわけですね(怒)。

この愚策と密接に関わるので、今日は上に出てきたワード、
天下り」についてのお話をしたいと思います。

中央省庁のキャリア官僚が、主に税金で作られた特殊法人等に再就職し
ほとんど実務もせずに高給や多額の退職金をせしめると言われる「天下り」。
(キャリア官僚以外にも、色々なケースがあります)

世間からの批判も強く、数多の政権が「天下り根絶」を掲げ、
民主党政権もそれが公約の一丁目一番地となるはずでした。

これほどまでに自明な「悪」と目されている天下りが、
なぜなくならないのでしょう?なぜ、なくすことができないのでしょう?
それは天下りが官僚・公務員の単なるモラルハザードなどではなく、

彼らのキャリアパスを支える、言わば「必要悪」とも言えるシステム

だからです。順を追って説明しましょう。
まず、官僚組織の人事には特徴が3つあります。

・完全なる年功序列

中央省庁の官僚は、ガチガチの年功序列です。
どんなに優秀な人材でも、上の年次を飛び越して出世することはまずありません。

・大企業も真っ青な終身雇用

ご存知の通り、官僚(公務員)はクビになりません。
終身雇用が絶対の前提である代わりに、転職も一般的ではなく、
基本的には官僚たちは1つの組織に社会人生のすべてを費やします。

・ガチムチの縦割り組織

新卒採用は各省庁で行われ、採用された人物は原則
「その省庁の人材」となり、他の省庁にジョブローテーションする仕組みは
ほぼ皆無です。

「◯◯省はこの年次に優秀な人がたまたま少なく、逆に☓☓省に多い。
じゃあ☓☓省から何人か、◯◯省に行かせるか」

というような人事を行うことは、ほとんど不可能になっています。

さて、こうした組織では何が起こるでしょうか?

新卒として大勢の若手官僚が入ってきます。
年やキャリアを重ねていきますが、管理職などのポジションは有限です。
課長クラスくらいまでは全員がなれても、その上はもう数が足りません。

しかも数少ないポジションには、絶対的な年次ルールの元、
先輩官僚たちが居座っています。彼らがどかないことには、
いつまで立っても次の年次はポジションをgetできません。

出世レースから外れた人材たちを、そのまま残すことはできない。
かといって、クビにすることも、他の省庁に異動させることもできない。

さあ、どうしよう?
答えは見えてきましたね。

職務上、息がかかっている特殊法人や大企業にポジションを作るか、
むしろそれが目的で税金で作られる特殊法人に「天下り」させるのです。

こうすることで、年次が上の官僚をリリースし、下の年次にポジションを作る。
また、出世コースから外れてしまった先輩官僚たちの雇用や給与、名誉を守ったまま、
引退するまでの余生を保証する。

「年功序列」「終身雇用」「縦割り組織」という
官僚機構の最大の特徴を維持するために必要不可欠なシステム
それが「天下り」の正体なのです。

ですから、天下りという「出口」だけを無くすことは絶対にできません。
仮に上記の特徴を維持したまま、天下りだけを無くすとします。

若手官僚は、それはもうボロ雑巾のように薄給で働かせられます。
いつかはポジションを得て、責任と権限を持って国に貢献できる日を
夢みながら一生懸命頑張ることでしょう。

ところが、年功序列が絶対の組織では、出世は順番待ち。仕方なく待ちます。
ですが、天下りがなくなった官僚組織では、先輩たちが地位にしがみつき
ほとんどポジションが空きません。空いたとしても、そこにつけるのは本当に一握り。

50代後半まで出世ができず(=給料も上がらず)、しかもわずかな人数だけ。
そこからあぶれた人材は一生ヒラ生活が確定という組織で、
一体どこの誰が高いモチベーションを持って勤務できるでしょうか?

世界一優秀と言われた日本の官僚組織は、
10年を待たずして崩壊していくことは確実でしょう。

こうした中央省庁を支えるシステムは、
ある時代までは非常にうまく機能していたのだと思います。

年功序列を敷き、若手の間は安い給料で働かせる代わりに、
将来のポジションや天下り先の高給で報いる。
終身雇用や縦割りの仕組みで、自己組織へ異常なほど忠誠心を高める。

こうしたインセンティブで強力に経済成長してきた日本も、
しかし、限界を迎えたことは明らかです。もはやこれらのすべての仕組みは
現行の官僚たちの既得権益を守るためだけの装置に成り果てました

解決策は、本当にシンプルだし1つしかありません。
競争原理の導入と、人材の流動化です。

年次ではなく成果によって給与、ポジションを与える。
人材は採用省庁にこだわらず、能力や適性で随時異動させる。

こうした世界では当たり前のシステムを導入し、
適宜リストラもおこなっていけば、もはや天下りに頼る必要はなくなります。

そしてここまで読んで、お気づきの方もいるでしょう。

「年功序列」「終身雇用」「縦割り」
これらはすべて、日本の労働市場の特徴そのものです。
官僚(公務員)のシステムを守るために、日本の労働市場はその鏡のようになっているのです。

仮に、官僚(公務員)組織に競争原理が導入され、人材が流動化したとします。
中には官僚組織を脱藩し、企業勤めを志す優秀な人材も出てくるでしょう。

そうなれば市場もそれに対応し、転職者を受け入れるようになります。
やがて転職というものが一般的になり、年功序列や終身雇用は過去のものになる。
入社した組織にとらわれず、適性と能力で仕事を選べる雇用システムが出来上がる…。

この点が、「公務員制度改革」こそが日本再生のために最も重要だと
多くの識者や良識ある政治家が強く主張する理由です。

もはや、一部の優秀な人たちを囲い込み、彼らのモチベーションを保てば
経済や社会が成長していく幸せな時代は終わりました。これからはひとりひとりが
健全なる競争の中、組織に頼らず自分の能力でキャリアを掴みとり、社会貢献する時代なのです。

繰り返しになりますが、

「年功序列」「終身雇用」「縦割り組織」

この官僚制度の抜本的な改革を行わない限り、
天下りの根絶も公務員人件費削減もできません。

苦し紛れに人件費をカットするとなれば、
冒頭の新卒採用の抑制のような愚行しか行えない…

この一点だけでも、現行の制度維持がどれほど既得権益に与し、
将来世代に打撃を与え続けるだけの代物であることがわかるでしょう。

逆に言えば公務員制度の改革は、僕が以前から常々主張しているような
労働市場の流動化の起爆剤となり、若者や女性の雇用問題解決の
切り札となる可能性も秘めています。

そもそもこの改革をやる、天下りを根絶する、人件費を2割カットするといって
政権を取ったのが民主党でした。しかし、公務員労働組合の選挙支援を受けており
しがらみだらけだった民主党政権は、1年を待たずに官僚に懐柔されました。

それ以前にも「公務員制度改革」を訴えた政権はいくつかありましたが、
その度に既得権益者、現行の官僚組織の頑迷な抵抗にあり、
現在でもその改革は陽の目を見ることはありません。

「天下りをやめさせろ!」
「若者世代に痛みを回すな!」

と叫ぶだけでは、日本も公務員組織も変えられないのです。
大事なのは、その事象を作り出している「システム」にメスを入れること

しがらみなく、真に公務員制度改革を断行できる政治家を送り出す…
それが来たる次期衆議院選挙の際に、われわれ若者世代の有権者に
求められている責務なのではないでしょうか。

ちなみに。

「天下り」

を英訳しようとしても、ナイスな外国語はありません。
まあ元々は日本神話で使われていた単語だったとはいえ、
こんな概念が堂々と存在すること自体がなんとも日本的というか…ね。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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