ひらけ、東京!!

定年=リタイアはもう古い!
世代の垣根を超えて協働する街へ

50歳で家督を長男に譲った伊能忠敬は、56歳で測量の旅に出て、
歴史上はじめて正確な日本地図を完成させました。
92歳で詩をつくることをはじめた柴田トヨさんは、98歳で初の詩集を発表し、多くの読者を感動させました。
5歳から物語を書きはじめた黒田夏子さんは、75歳で最高齢の芥川賞受賞者となり、
夢が叶うことを多くの人に示しました。

「老人」、「シニア」と一言でくくってしまえば、大事なことが見えなくなります。
問題が山積みなこの社会に対して、あなたの知識や経験を役立ててみませんか?

1. すでに始まっている人口ピラミッドの崩壊

少子化は日本が抱えている中でももっとも深刻な課題のひとつです。日本の人口動態の図を見てみると、一見して30歳以下の世代が減り続けていることがわかります。一方で、東京では日本全国と比べて、25~45歳の働き盛りの世代が多いことがデータから読み取れます。しかし、東京の合計特殊出生率(※1)は平成21年で1.12と全国でも最低レベルにあるのです(全国平均は1.37)。一体、どのようなからくりがあるのでしょうか。

実は、東京都は近隣他県からの流入で若い世代の労働力を確保しているのです。もちろん、このような状況は持続的に維持できるものではありません。近い将来、人口の流入が止まり、東京都でも少子化がより深刻な問題として顕在化することが予想されています。例えば、2012年より東京都では全国に比べて2倍のスピードで高齢化が進展する見通しだという報道もあります(※2)。

ここで考えてみて欲しいのは、本来、少子化と高齢化は別の問題だということです。少子高齢化とひとくくりにされることが多いのですが、平均寿命が延び、長生きできるようになることは決して悪いことではありません。重要なのは、バランスなのです。

良く使われる指標に、「高齢者1人を現役世代何人で支えるか?」というものがありますが、1965年に約9人だったものが、2012年には2.4人となり、2050年には1人の高齢者を1人の現役世代が支える社会になります(※3)。これは裏返せば、少子化によって現役世代が減ることが、高齢化にそのままつながっているということです。つまり、問題なのは高齢化ではなく少子化であり、少子化による世代間バランスの崩壊が全年代に悪影響を与えるのです。

長期に深刻化した少子化の影響をなかったことにはできません。しかし、知恵によって少しでもバランスを保つように努力することはできます。

※1 合計特殊出生率とは、一人の女性が一生に産む子供の平均数を意味している。
※2 都政新報(2月8日付)の記事より
※3 社会・経済情勢の変化2050年には1人が1人を支える肩車型社会へ
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/201208/naze/henka.html

2. 人口ピラミッド再構築の処方箋

さて、ここで1つ質問があります。前段では当たり前のように「支える側=現役世代、支えられる側=高齢者」という図式を用いたのですが、両者を分けるものとはいったい何でしょうか。

正解は年齢です。政府統計では、15~64歳を「生産年齢人口(現役世代)」、65歳以上を「老年人口(高齢者)」として一律で区分しています。もちろん、統計上の区分なので、実感と合わないのは当たり前かもしれません。しかし、日本は高齢化が進んだ社会であるのと同時に、平均寿命が延び、多くの高齢者が元気に生活する長寿社会でもあるのです。64歳から65歳になった瞬間に一夜にして「支える側」から「支えられる側」になってしまうという現在の定義は果たして妥当なのか疑問が残るところです。

高齢化率が都内で最も高い北区の場合、15~64歳の「生産年齢人口」の比率はすでに50%を割っています。これは、0~14歳の「年少人口」及び65歳以上の「老年人口」が、「生産年齢人口」を上回っていることを意味しています。つまり、統計上のこととは言え、被扶養人口(=支えられる側)が扶養人口(=支える側)を上回る事態が現実に発生しているのです。そして、これは今後ますます拡大し、恒常化することが確実に予測されています。

つまり、私たちは、「人口」減少だけでなく、「生産年齢人口」減少の社会の在り方を今後考えていかなければならないのです。

では、こうした現状を改善するためには、何をすれば良いのでしょうか。
ここでは処方箋の一つを示したいと思います。

先ほど、「64歳から65歳になった瞬間に一夜にして『支える側』から『支えられる側』になってしまう」と書きましたが、この定義を見直すとどうなるでしょうか。

北区の場合、65~69歳の人口は全体の約6.6%に達し、10~19歳の人口を越えています。仮に、これだけの人口が被扶養人口(=支えられる側)から扶養人口(=支える側)に変われば、人口ピラミッドの歪みは大幅に改善されるのです。

もちろん、今度は69歳から70歳になった瞬間に支えられる側にならなければいけないと言っているわけではありません。大事なのは、年齢で一律的に制限してしまう考え方は、長寿社会には馴染まないということです。

「年齢に限らずに、その人の状態に合わせた社会参画の機会を保障すること」こそが、「人口」減少、かつ、「生産年齢人口」減少の社会において政治に期待されている役割ではないでしょうか。

3. 世代の垣根を超えて協働する街づくりの実践例

次に、「その人の状態に合わせた社会参画」について考えてみたいと思います。

「社会参画」と言うと少し硬いイメージを持ってしまうかもしれませんが、例えば、町内会でゴミ拾いをするといった活動も立派な「社会参画」になります。しかし、「社会参画している」と堂々と胸を張って言うことはなかなか気恥ずかしいのが現状ではないでしょうか。

私(オトキタ)が目指しているのは、課題が山積みのこの社会において、住民全員が「社会参画している」と堂々と胸を張って言うことができるようになることです。特に、知識や経験が豊富なシニア層が「社会参画」できる仕組みを構築することで、人口ピラミッド(前段参照)からだけでは見えてこない「暮らしやすさ」を向上させることができると考えています。

そこで、以下では「シニア」と「地域」といったキーワードから、まちづくりの実践例を紹介していきます。

夜スぺ(「夜のスペシャル授業」)で一躍有名になった杉並区の和田中では、「地域本部」という組織が地域と学校との橋渡し役を担っています。「地域本部」の活動には、教師志望の学生、保護者、OB・OGだけでなく、団塊世代のリタイア組も参加しています。教師や親の負担が大きい教育の現場において、仕事に長らく携わってきたシニアの視点が問題解決の一助となっていることは間違いありません。

埼玉県の団塊活動支援センターとNPO法人東上まちづくりフォーラムが協働で立ち上げた「ビジネス助っ人隊」(※4)は主にシニア世代の企業OBが中心となり、地元企業・地元自治体・地元団体などに対して仕事で培ったノウハウやネットワークを提供しています。このような活動によって、地域に貢献しながら、参加者自身も高い満足感ややりがいを得ることができています。

茨城県笠間市では、まだ実現には至っていないものの、高齢者が知識や経験を発揮するための一案として、地域専門アドバイザー制というものの導入が検討されています(※5)。笠間市において実施された、「シニア・高齢者の社会貢献に関する意識調査」では、「関心はあるがきっかけや参加の仕方がわからない」とした回答者は全体の3割弱にも達しており、地域貢献・活性化への参加の入口を用意すれば、現在は眠っている資産が活用できることが示唆されています。

このように、高齢者やシニアを一律に「支えられる側」として捉えるのではなく、その状態に合わせた社会参画の機会を準備することで、「支える側」として捉えようとする取り組みは着実に増えてきているのです。

※4 ビジネス助っ人隊
http://www.suketto.biz/
※5 21世紀における高齢者活用の新たな可能性-笠間市への地域専門アドバイザー制の提言-
http://www.city.kasama.lg.jp/index.php?code=2060

4. 北区でできる世代の垣根を超えて協働する街づくりの提案

これらはあくまで一事例であり、ただ真似をすれば良いというものではありません。しかし、こうした取り組みが一般的になればなるほど、全国各地でそれこそ「ゆるキャラ」(※6)のように工夫を凝らした多くの試みが出てきて、結果として問題解決や「暮らしやすさ」につながることが期待できます。

それでは、私の地元・北区ではどのような施策ができるのか、ここで少し考えてみたいと思います。

北区の特徴として、上でも触れたように、高齢化率が都内で最も高いことが挙げられます。そのため、「徒歩でも安全安心に暮らせるまちづくり」というコンセプトから、シニア・高齢者の協力を仰いでみてはいかがでしょうか。

例えば、自転車事故の問題を考える上では、こうしたシニア・高齢者の視点が重要になります。交通事故の件数自体はここ数年一貫して減り続けていますが、その中で自転車事故の占める割合は少しずつ高まってきています(※7)。仮に、シニア・高齢者目線から危険な場所が特定できれば、未然に事故を防ぐことができるかもしれません。また、同様の手法で、買物難民対策や防災・減災へのアプローチも考えられます。

加えて、シニア・高齢者の社会参画によって自転車事故の減少や買物難民ゼロ、災害に強いまちづくりといった成果が達成された場合には、その利益はすべての住民が享受できます。ここに従来の利益誘導型の政策との違いがあるのです。

実は、すでに北区では「シニア元気塾」という、シニア・高齢者の社会参画の取り組みがなされています。もちろん、行政に頼らずに個人で考えていたり、実践されている方々も多数いらっしゃいます。政治の役割は、こうした方々の話を聞き、必要な支援を行い、不要な規制を撤廃することに他なりません。

政治の役割により草の根の活動を定着させ、シニア・高齢者の社会参画を促し、人口ピラミッドのバランスを維持する。それによって、高齢者だけでなく、全体の利益を向上させる。
これこそが、私(オトキタ)が提案するまちづくりのモデルなのです。

※6 「ゆるいマスコットキャラクター」を略したもので、まちおこしのシンボルキャラクターとなっている例が多い
※7 平成23年度東京都北区交通安全実施計画
http://www.city.kita.tokyo.jp/docs/digital/759/atts/075937/attachment/attachment.pdf

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