ひらけ、東京!!

都内にもある学力格差!
教育水準の底上げで競争できる環境へ

突然ですが、問題です。2012年に文部科学省が行った「全国学力・学習状況調査」で、公立小学生の平均正答数が第1位だった都道府県は………秋田県ですが、それでは、東京都は第何位だったでしょうか?

正解は、第8位。「1位じゃないんだ!」と驚く人もいれば、「意外と高い」と思う人もいるかもしれません。

それでは、公立小学生の通塾率についてはどうでしょう?同じ調査によれば、東京は57.4%、秋田県は22.4%と、平均正答数の順位と逆転してしまいます。

どういうことか?「塾に通っても学力が身に付かない」と言いたいわけではありません。むしろ6割近くのお子さんが塾に頼らなければならない状況は、東京の公教育への不信・不満の現れだと、私(オトキタ)は思います。

さらに深刻な問題は、都全体では「第8位」でも、市区町村間の「学力格差」は無視できないほどに大きいということです。やや古いデータで恐縮ですが、東京都が独自で実施している「平成18年度 児童・生徒の学力向上を図るための調査」の結果を見ると、目黒区の平均正答率が76%なのに対して、江戸川区は68%と、実に10%近い差がでています(ちなみに私の地元、北区は71%です)。

また、平均正答率上位の区は、目黒区の他、世田谷区、文京区など、高所得な家庭が多い地域に集中しています。先に挙げた「通塾率57.4%」という事実と合わせて考えると、

「東京では、どれだけ多くの塾代を払えるかが、子どもの学力に大きく影響している」

と言えるのではないでしょうか。だとすれば、公教育への不満・不信が「塾頼み」の状況を生み、高い教育費負担と、家庭間・市区町村間の「学力格差」につながっていると考えられます。(実際に全国規模で見ても、平成22年に文部科学省が実施した「子どもの学習費調査」では、世帯の年収が多くなるほど「補助学習費」が増える傾向が見られました)

この「負の連鎖」を断ち切るには、公教育を再生し、都民からの信頼を取り戻す以外に道はありません。また、高校受験や大学受験、社会における「健全な競争」を促し、首都「東京」から日本の成長をリードしていくためにも、義務教育段階における教育水準の底上げは、必要不可欠だと考えます。

こういった問題意識から、私は教育支援策、とりわけ「公立小・中学校の教育再生」を重点政策のひとつに位置づけ、取り組んでいくことを決めました。以下、具体的な政策について触れていきたいと思います。

1. 「校内塾」の導入で、家計負担減と学力向上の両立を!

朝は7時前からクラブの朝練を指導。授業の合間に修学旅行の業者対応や小テストの採点をこなし、放課後はまたクラブ指導。生徒が帰ってからも、保護者からの電話対応や行政からのアンケート記入に追われ、学校を出るのは22時過ぎ…。これは、実際に都内の中学校で教員をやっている友人の「よくある1日」だそうです。

「公教育への不信・不満が問題」と書きましたが、その原因・責任のすべてを学校や教師に帰するのは酷というものです。多くの教師が、クラブ指導や事務作業、対外折衝などに追われ、肝心の授業準備や補習、個別指導に割ける時間は、それほど多くないのが実情です。加えて近年では、不登校やネットいじめ、モンスターペアレントなど、対応の難しい問題が増え、学校・教師はますます疲弊していっています。

一方、東京には多くの塾があり、機能不全を起こしている公教育を補っています。しかし、塾代が払えない家庭はその恩恵に預かれません。また、子どもを通塾させている家庭の多くも、塾代を「負担」だと感じているのは間違いないでしょう。

そこで発想を転換し、「学校に塾をいれ、安価に補習をしてもらう」という方法をとってはどうでしょうか。塾経営における経費の多くは「スタッフの人件費」と「教室の家賃」、そして「宣伝費」ですが、学校内で実施する場合には家賃と宣伝費が発生しないので、通常よりも安価にサービスを提供してもらうことができるでしょう。

このようなやり方(仮に「校内塾」と呼びます)が実現すれば、塾のサービスを受けることのできる子どもを増やし、また既に子どもを通塾させている家庭についても、その負担を減らすことが可能になります。

実際に一部の自治体では、既に校内塾が導入され始めています。例えば杉並区の和田中では、地域住民による学校支援組織「地域本部」が主体となって、民間の塾に補習の一部を委託しています。気になる受講料は、相場の2~3分の1だそうです。

こういった先進的な取り組みを研究し、広めていくことができるよう、都としても後押ししていかねばなりません。幸い「地域本部」は各自治体に徐々に設置されてきているので、これからは地域本部をよりうまく機能させ、「校内塾」を展開していくための支援が重要になるでしょう。

2. 「市民の力」で、教師を本来業務に集中させる!

さて、上述した「校内塾」の導入を進めるとしても、多くの学校教員が「専門外の業務」に時間をとられ、本来最も力を入れるべき授業や教材研究に十分に取り組めていないという、根本的な問題を放置してはおけません。

教師が本来業務に打ち込めるようにするためには、専門外業務をできるだけ「手放す」ことができるよう、外部から支えていくことが必要です。具体的には、東京の強みである「多くの大学生・院生」や、今後ますます増えていく「シニア層」の活用が重要です。後者については別ページでも触れましたので、ここでは前者について触れていきたいと思います。

平成23年度学校基本調査によれば、東京に通学する学生・院生は約71万8千人。これに対して、東京にある小学校の総学級数は約1万9千です。つまり「東京の大学生・院生のうち(たったの)37人に1人が小学校での学校サポートに携われば、1学級に1人以上の学校サポーターを確保できる」ということです。

この単純計算の結果からも容易に想像がつくとおり、大学生・院生の力をもっともっと活用していくことで、東京の小・中学校の教育水準を大きく底上げできる可能性があります。

現在でも、東京都の「教育庁人材バンク」を通じて、大学生・院生の教育ボランティアが募集されていますが、これまでの登録者数は1200人と、まだまだ限定的な取り組みに留まっています。上記のように学生活用の可能性はとても大きいわけですから、ボランティア登録者や学校の支援ニーズを「待って」いるだけでなく、より積極的にそれらを「掘り起こして」いくための手立てを講じていく必要があります。

ボランティア登録者を増やすための方策としては、「教員採用と連動させる」というやり方が考えられます。つまり、教育ボランティアを「インターンシップ」と位置づけ、そこで優秀な働きをした者には選考において何らかの優遇措置がなされる、といった仕組みです。また、中長期の教育ボランティアを教職課程に組み込み、単位認定もしてもらえるよう、個々の大学に働きかけていくことも重要です。

一方、学校の支援ニーズを掘り起こすには、いくつかの「学生活用モデル校」をつくり、そこでの実践例を他校に示していくのが効果的でしょう。個別補習やクラブ指導など、学生ボランティアの活躍の場は限定的になりがちですが、実際には授業準備の手伝いや小テストの採点など、教師の「専門外業務」を減らすために出来ることはもっと多いはずです。まずは先進校で「こんなこともできる」という実績を積み、その情報共有を通じて、他の学校にも学生活用の大きな可能性に気づいてもらう必要があります。

このような学生活用の強化策を、都がリーダシップを発揮して進めていくことにより、今よりずっと多くの教師が本来業務に打ち込めるようになり、教育水準の底上げが大きく前進すると、私は確信しています。

3. 教育委員会に「目標」を与え、機能させる!

ここまでに主張してきた「校内塾」や「学生活用」は、いずれも学校現場そのものを変える取り組みです。なぜ大きな制度や組織構造ではなく、現場の改革に目を向けるのか。それは、以前に比べ(少なくとも法律上は)校長の権限が強くなり、個々の学校による独自かつ自律的な「経営」が出来るように、また求められるようになっているからです。

そして、このような変化が公立校の変わらぬ強みである「圧倒的なスケールメリット」と結びついたときにこそ、教育水準の向上が一気に進むと、私は考えます。以下、その強みを活かすための方策を記していきます。

一般に、より多くの人材がより多様な環境の中で働けば、そうでない場合に比べイノベーションが起こる可能性は高まります。学校で言えば、それは画期的な授業法かもしれませんし、分かりやすい独自教材かもしれません。そうして生まれたイノベーションを、できるだけ早く組織全体に共有する。これが、公立校の強みを最も発揮させる基本戦略です。

逆に、大規模な組織の強みを削ぐやり方としては、「目標を与えないこと」と「上からの規制の押し付け」の2点が上げられます。目標がなければ、そもそも何をもって「成功」とみなすのか、という基準が曖昧になってしまいます。もちろん現場の手足を縛り、独自性を奪ってしまっても、成功事例は生まれません。

翻って、現状の教育委員会や教育行政は、ともすれば「公立校の強みを削ぐ」方向に流れてしまっているのではないでしょうか。その原因は大きく2点。目標設定の曖昧さと、非合理的な組織構造です。

まず目標設定ですが、まず現状を振返ってみると「互いの人格を尊重し・・・」といった文言が「教育目標」として掲げられているのに驚きます。少なくとも私が生きてきた企業の世界では、達成可否を明確に測ることのできない目標は、目標とは言いません。

政治的中立を重んじる教育委員会が、何らかの志向性・価値観を示に基づいた「目標」を掲げたがらないのも分からないではありませんが、さりとて、そのために「公立校の強み」を削ぎ、学力水準の向上を阻害してしまってはいけません。やはりここは、民意によって選ばれた首長が「教育委員会の目標」を決めるのがベストだと、私は考えます。法律を改正してでも、やり遂げる価値のある変革です。

次に組織構造上の問題としては、都道府県教委の影響力が大きすぎる点が挙げられます。都道府県教委には市区町村教委に対して指導・助言する役割があるため、市区町村が管理する小・中学校にまで口を挟み、結果として2方向からの規制で学校現場ががんじがらめになることも少なくないそうです。さらに都道府県教委は、社会教育やスポーツ教育の管理も担当しており、もはや何に専門性を持つ集団なのか怪しいと言わざるをえません。

したがって、都道府県教委の役割を縮小した上で、組織そのものも分割する必要があります。市区町村立の小・中学校の管理は全面的に市区町村教委に任せ、さらにスポーツならスポーツに特化した専門家集団となる。この「当たり前」の改革が、教育委員会システムを再構築するためには必要不可欠です。

教育委員会「外」からの適切な目標設定と、組織構造の適正化(真の専門集団へ)の2点を早急に進め、教育委員会を機能させること。これこそが、「校内塾」や「学生活用」といった学校個別での取り組みを横につなぎ、地域全体としての教育水準アップにつなげるための最善手だと、私は考えます。

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