ひらけ、東京!!

日本は子育て貧困国!
子育て支援政策をフランス流へ

1. 日本は子育て貧困国!?

沢山の政治家が選挙のたびに、「待機児童問題を解決します!」「そのために、保育所を増やします!」と約束する光景が、ここ10年くらいすっかり見慣れたものになりました。しかし、果たしてそれで待機児童問題は解決したのでしょうか?

東京23区で見ると、現在も5000人近く(※1)が「待機児童」として存在します。最近では江戸川区や杉並区などの地域で、認可保育所に入れなかった母親たちが大規模な異議申し立てを行ったのも記憶に新しいところです。各自治体は保育所の拡充を急いでいるものの、急増するニーズにまったく対応できていないのが現状です。

ここ北区では、待機児童の人数が38名。これは東京都23区内で二番目に少ない優秀な数字ではありますが、保育所の整備率(※2)は45%程度で、「預けられるのなら、預けて働きたい」という潜在ニーズに応えるには不十分な状態が続いています。

もはや「保育所を増やす」という旧来の手法の延長では、この状況を抜本的に打破できないことは明らかです。では、どうすれば良いのでしょうか?「保育所に預ける」という発想を打ち破り、多様な保育サービスを充実させることに活路があります。そこで参考になる事例を見てみましょう。

※1 数字は平成23年4月1日時点のもの。「北区保育計画(平成23年度改訂版)案」より
※2 就学前児童の総数に対して、保育サービスで受け入れ可能な人数の比率。北区には12,985名の就学前児童がいるのに対して、保育サービス(認可保育所、認証保育所、家庭福祉員、保育室)で受け入れ可能なのは5426名でカバー率は44.3%。

2. 子育て先進国、フランス流とは?!

日本や東京の合計特殊出生率が低迷する中(日本は1.39、東京は1.06で日本最低)、海外には出生率が2.0まで奇跡的な回復をし、「子育て支援政策の先進国」と呼ばれる国があります。そう、それがフランスです。

フランスの子育て支援政策には沢山のポイントがありますが、とりわけ重要だと思われるのが「ベビーシッター制度」の充実です。フランスでは、日本の保育所にあたるサービスに子どもを預けるより、ベビーシッターを雇って子育てをする母親が圧倒的多数を占めています。

フランス政府の定める所定の研修を受けて認可される「アシスタント・マテルネル(ベビーシッター、保育ママ)」が25万人存在し、その利用者には3歳未満でおよそ4万8千円、3歳以上でおよそ2万4千円の国からの補助があります。このシステムであれば働く女性の都合に合わせて保育環境を整えることが可能ですし、またベビーシッターという職業・雇用の創出にもつながり、一石二鳥とも言えるものです。

3. 大事なことは「保育の多様性」、フランス流の東京への応用とは?

このようなベビーシッター制度がそのまますべて日本や東京の政策に反映できるわけではありませんが、大事なことは「保育の多様性」にあると言えるでしょう。日本では、「(大前提として)子どもは女性が家庭で育てるもの」「それがどうしてもできない家庭のみ、国(行政)が認定した保育所に子どもを預けましょう」という固定観念が今も非常に強く残っています。それゆえ、公設の「保育所」以外の保育方法が発展せず、保育所の拡充、整備のみが叫ばれてきました。

ですが生活体系が多様化し、働く時間帯も異なる人々の子どもを集団保育で一律に預かることは困難ですし、新設に対するハードルが非常に高い認可保育所の拡充では、増え続けるニーズに対応できないことはすでに明らかです。ならば、小回りの効く「小規模保育」「ベビーシッター(日本では保育ママ)」の活用にスポットを当てる必要があります。

では、どうすればそのような多様な保育形態が発展するのでしょうか。猪瀬知事が「東京スマート保育」という方針を打ち出し、小規模保育にも今年から予算が付けられたことは画期的ではありますが、それだけではまだ不十分です。ここで必要なのが、子育て支援予算の使い方の大転換、「保育バウチャー」という発想です。

4. 補助金を供給側(行政)から需要側(利用者)へ!民間の力で保育改革を

いまの子育て支援政策は要するに、公設の保育所を作ってそこに多額の補助金を投下し、利用者はそれを低価格で利用できるという仕組みです。この弊害として、民間の保育所やベビーシッターは価格競争で太刀打ちができず、価格競争によるサービス向上という市場原理がまったく働かなくなっています。

そこで、行政が認可保育所や認証保育所に出している補助金をすべて、利用者側に還元してはどうでしょうか?子ども手当のように、現金でバラまくのではありません。「保育バウチャー」という、保育機関のみで使えるクーポン券を子育て世代のいる家庭に支給していくのです。

すると、利用者側は自分の利用したい施設や保育形態を選んで子どもを預けることができます。民間の保育所にも使えるので、公立の保育所と純粋なサービスレベルで競争が可能です。先のベビーシッターで生計を立てる人も誕生するかもしれませんし、今は非常に貧弱な「一時保育」「病児保育」といった分野にも民間企業やNPOが進出していく可能性も広がります。

国や行政が機関を選んで補助金を出すのではなく、利用者が自分たちで利用したい機関を選び、バウチャーを利用する。こうした「新しい仕組み」で保育機関の多様化を図り、子育て支援政策を先進国並みに充実していくことができます。

5. すべての女性が輝ける社会へ!

私は7年間、フランスに本社を置くルイヴィトンという企業に務めていました。その中で、本国フランスの女性たちが子どもを出産した後も当然のように仕事を続け、また「母親」ではなく「女性」として人生をまっとうしている姿を数多く見てきました。一方日本では、産休を取ることすら困難を極め、キャリアや「女性であること」を諦めて家庭に入っていく人々がどれほど多いことでしょうか。

「男は仕事、女は家庭」そんな価値観はもう古いと思いきや、まだまだこの国ではそんな固定観念がまかり通り、各種の制度も旧態依然としたものになっています。旧来の発想で作られた「認可保育所」という発想から抜け出し、多種多様な保育サービスを充実させていくこと。そのために、「教育バウチャー」という新しい政策を実施していくこと。

これが、貧相な日本の子育て支援政策に劇的な変化をもたらし、日本人女性もフランス人のように子育てと仕事、プライベートのすべてが充実した人生を送れるようになる起爆剤であると、私は考えています。

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